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釣り、ペット、短編小説、雑記、紙誌掲載原稿
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 海は人の心に開放感をもたらし、世代や性別を超えて交流を促してくれる。なぜか? 海辺では波の音、潮風でボソボソと話していたのでは会話が成立しづらい。いつもよりも大きな声で、ハッキリと話をしなければならない。いきおい、表情も豊かになり、相手の感情や想いが読み取りやすくなるからだろう。これは都会の騒音のように、不快な音の中での大声と違って、潮騒や潮風は爽快感を伴っているからこそ。しかし、心開いただけではシャイな現代人には足りない。会話のきっかけとなるツールが必要なのだ。そのツールとして、年齢、性別、体力の有無を問わず、多額の初期投資の必要もなく、誰もが楽しめる水辺のレジャーとして、釣りは最適なのだ。

 大型駐車場やトイレを設置し、安全設備や救難設備を整え、飲食店やコンビニエンスショップなどの商業施設を誘致し、各種のイベントを開催して人を集めても、そこに人々の交流がなければ、真の里浜とは言えないだろう。喜びや楽しさを共有し、笑顔で人との出会いを楽しむ場の創造を推進して欲しい。そして「海辺のマナー」を広く教え伝えていくべきだろう。

 海辺のマナーを教えるにしても、「アレはいけない、コレはこうせよ」と強制しても効果はない。これは現状を見てみればわかるだろう。マスコミや広報や学校教育を通じて、自然保護や環境美化を声高に叫んできても、このありさまなのだ。しかし、法律やルールで規制されなくても、学校で教育しなくても、人々が粛々とマナーを守っている場所がある。神社・仏閣・教会・墓地の敷地内だ。たとえ酒に酔っていたとしても、神社で立小便をする人はいない。くわえ煙草で仏殿やお墓参りをする人もいないし、教会の庭にゴミをポイ捨てする人もいない。聖域だから神罰仏罰が下るなどと、本気で信じている人はいないだろう。では、なぜ? 人として恥ずべき行為であると、誰もが認識しているからに他ならない。

 法や条例による規制や指導も必要だが、罰則を設けて従わせるのではなく、自らの行為に責任を負う心(公徳心・自律の精神)を育成する必要があるだろう。「釣り場清掃にご協力くださ~い!」と呼び掛けても反応は薄く、時には反発さえ招きかねないが、ゴミ袋を手渡しながら「帰り際に身の回りのゴミだけ拾ってってね」と一人一人に話し掛けると、ほとんどの人が釣り場清掃に協力してくれる。協力を要請されると負担に感じるが、自分の分だけ片付けて欲しいと頼まれるのならば負担には感じない。個別に語りかけられたという心理的な効果も大きい。これとは逆に、千葉県浦安市のある岸壁では、有志の釣り人たちが、一般の釣り人に協力を求める事もなく、ゴミを放置する人を見かけても咎めることなく、黙々と無言でゴミ拾いを続けた。数ヶ月後、その釣り場にゴミを放置する人はいなくなり、海辺はきれいに片付いたという事例もある。手法は正反対であるが、どちらの試みも人々の公徳心に直接訴え掛けている。一時的に人手と手間は掛かるが、数十年を掛けても成果の上がらない呼び掛けや看板設置よりも、はるかに効果的で即効性がある事を実証していると言えよう。

 釣り、海水浴、潮干狩り、各種のマリンスポーツを楽しむ人々が集い、憩い、笑顔で語らう海辺。そこに集う人々が自らの手で、自らの判断で、安全を心掛け、互いに心地よく過ごせる雰囲気を醸成できるようにしたいものだ。行政や管理者による規制、自然保護や環境美化に関する呼び掛けを必要としない日が必ず来ると私は信じている。

-「波となぎさ」'05年8月31日発刊 164号 掲載稿より抜粋・加筆-

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YASU ・居眠釣四郎・眠釣
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釣りと動物と時代劇、時代小説をこよなく愛する、腰は低いが頭が高い、現代版「無頼浪人」にて候。
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