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釣り、ペット、短編小説、雑記、紙誌掲載原稿
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作業3日目。顔なじみの常連が軽トラックでやってきた。
回収量が増えた。
資源ゴミは直接リサイクルセンターへ運んでくれた。
作業5日目に「俺達もやろうかね」と二人の常連が加わった。
これで五人。
なんとか防波堤東半分の作業にめどが付きそうだった。
週末。
秋のにぎわいほどではなかったが、多くの釣り人がやってきた。
 「おじさん、今日は釣りをしてないの?」
週末になると自転車でやってくる中学生だった。
 「冬はあまり釣れんからな。おい、ゴミを捨てるなよ」
 「へへ、目の前で掃除されたんじゃ捨てらんねーよ」
 「掃除してなかったら捨てるのか?」
 「……かもね」
バツが悪そうに言うと、西端に逃げるように去っていった。
週末常連の中にも、投げ釣りのアタリを待つかたわらで手伝ってくれる
釣り人がいた。作業効率が上がった。
この日の午前中の作業で、ついに防波堤上東半分のゴミは片付いた。

月曜、五人は奇妙なことに気付いた。
ゴミを片付け終えていた東半分には新たなゴミがあまり放置されていない。
未作業の西半分には新たなゴミが増えていた。
 「ゴミがゴミを呼ぶ、か……」
再放置された東半分のゴミを拾いながらの、行きつ戻りつの作業になった。

翌週の週末。手つかずの防波堤西端に若者が集まっていた。
10人近い人数でゴミを拾い集めていた。
ヒョイと手を挙げて労うと、彼らも手を挙げ、帽子を振って応えた。
いつも夕暮れ時から、五人とは入れ違いに来るルアーマンの若者たちだった。
五人は再放置されたゴミを拾いながら東側から、若者たちは手つかずの西側。
言葉は交わさずとも、不思議な連帯感が感じられた。
この日、新たなゴミの放置はなかった。釣り人は全員、ゴミを持ち帰った。

半年後。防波堤に放置されるゴミはほとんどなくなった。
この釣り場ではゴミを残してはいけないという雰囲気が出来上がっていた。
話を聞きつけた新聞社が取材にやってきた。
彼らは取材を断った。
釣り人が自分たちの遊び場である防波堤を汚し、それを片付けた。
そんなことを報道されるのは恥だと思った。
全国に自然保護、環境保全を語りかけるチャンスだと記者は食い下がった。
常連の一人が言った。

 「掃除をしたり、渚を再生するのが自然保護、環境保全だと思っているのかね?
  わしらはゴミ拾いを続けてきてわかったんだよ。
  最初から捨てない、汚さない、壊さない。
  これが自然保護、環境保全ってもんだっちゅうことがね。」

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プロフィール
HN:
YASU ・居眠釣四郎・眠釣
性別:
男性
自己紹介:
釣りと動物と時代劇、時代小説をこよなく愛する、腰は低いが頭が高い、現代版「無頼浪人」にて候。
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