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釣り、ペット、短編小説、雑記、紙誌掲載原稿
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 愛猫アビが東京・葛飾に暮らしていた我が家にやってきたのは'87年9月。生後4ヶ月のアビは、それはもう愛らしく、可愛らしかった。鳴き声も「ニャンニャーン」ではなく、「ウルル、ウルァ~ン」。ニャーニャーと鳴くようになったのは1歳の夏。旅行に出掛けるため家内の実家に預けた際に、家内の実家で飼われていたチャミの鳴き声を真似るようになってからだ。アビは環境適応力に優れていたのか、家内の実家にもすぐに馴染んだ。先輩猫のチャミは迷惑そうな顔をしながらも、アビを家族の一員として認めてくれたようだった。こうして、アビは自分たち夫婦が旅行に出掛ける時は、家内の実家に預けられるようになった。



 ただ、家内の親類の家に預けた時だけはダメだった。おとなしくしているものの、エサを食べなくなってしまった。2日間のハンガーストライキに叔母が音を上げた。「アビちゃん、エサを食べないよ」との連絡を受け、家内が「じゃぁ、私の実家に連れて行ってみて」と伝え、家内の実家に連れて行かせると、いきなり食欲全開。鶏の胸肉ひとかたまりを一気に食べてしまったとか。その時の叔母の凹み様は尋常ではなく、「なんでウチだとご飯食べないのよ……」と悔しがったらしい。そう言えば'90年頃、旅行に連れて行った時にアビが嫌がって大声で鳴くわ、叫ぶわで旅行を中止して引き返した事がある。アビにはアビなりの適応条件があったのかもしれない。

 アビは丈夫な猫で若い頃は病気やケガもせず、あまり手の掛からない猫だった。たまに寄生虫がお腹に湧いて虫下しを飲ませたくらい。高齢期を迎えた10歳の頃、ひどい風邪を引いたが3日ほどでケロリと回復。12歳の時にも風邪でかなり心配な状態になり、家内と共に別れを覚悟したほどだったが、アビはピンチを乗り越えてくれた。病気やケガではないが、本当に心配だったのが'01年の名古屋への引っ越し。アビは14歳。猫の生涯で言えば老齢期で、大きな環境の変化は好ましくない。そんな飼い主の不安もよそに、アビはすんなりと新居に慣れてくれた。やはり環境適応力に優れていたのだろう。

 '02年秋、アビの食欲がガクンと落ちた。上のキバが高齢でグラグラになっていた。その痛みでエサが食べられなくなっていたのだ。近所の動物病院に連れて行くと、「10歳を超えた猫に麻酔は難しい。でも、抜歯しないとエサが食べられないね。やるだけやってみる?」と言われた。なんとも無責任な獣医の言葉だったが頼るほかはない。危険を承知でお願いしたが、すぐに処置室に呼ばれた。麻酔を掛けたらアビの呼吸が止まってしまったと。抜歯は急遽中止。緊急蘇生で何とか一命をとりとめた。アビ15歳、生涯最大のピンチだった。半ベソ状態で家に連れ帰り、「アビ、ごめんよ。オマエのために良かれと思ったんだけど、ツライ思いをさせたね……」と泣きながら詫びていると、なんだかアビの表情が違う。妙に口元が優しい感じ。あれれ? キバが……無くなってるじゃん! ペットキャリーの中を覗いてみると、保定用の洗濯ネットの中にキバが2本。帰りの車中でゴソゴソ動いていたが、その際にネットにキバが引っ掛かって抜け落ちたらしい。処置料2万円は無駄にならなかった……のか? 動物病院に電話を入れると、歯の抜けた上あごの穴が埋まるまで、固形物のエサは食べさせないようにと指示された。上あごの穴は鼻腔に通じており、穴から鼻腔内に食物が入り込むと窒息してしまうからだ。大急ぎで猫用流動食(デビフ社カロリーエース)を買いにペットショップへと車を走らせた。カロリーエースだけではアビが飽きてしまうので、レバーペーストをスープ状にのばしたモノを与えたりしながら、歯の抜けた穴が埋まるまで2週間。ちょっとおデブ体型だったアビが、スレンダー美熟猫になった。ともあれ、痛みの元となっていた歯が抜けた事で、アビはエサを食べられるようになり、1ヶ月後には再びぽっちゃり熟猫に戻った。

 '05年10月、ひどい耳だれが出た。今まで連れて行っていた動物病院は今ひとつ信頼できないので、ネットで腕の良い動物病院を探した。最新の設備を備え、医療スタッフの充実した病院が見つかった。早速、アビを連れて行き、耳の検査。耳ダニが付いているわけでもなく、外耳炎でも中耳炎でもない。何が原因なのか不明だが、中耳からリンパ液が滲み出ている状態だった。点耳薬を出して貰い、2週間ほどで完治。ネットに寄せられていた評判通り、とても良い動物病院だった。我が家のペット達はこの動物病院で診ていただく事に決めた。12月、健康診断でとんでもない病気が見つかった。「腹部にかなり大きな腫瘍があります。エコー(超音波)で検査してみましょう」。なんと、アビの右腎臓が鶏卵ほどに肥大していた。そして慢性腎不全であることも判明。健康診断を受けさせて良かった。まさに間一髪だった。 http://craze.blog.shinobi.jp/Entry/174/

 18歳7ヶ月という高齢ながら、アビの腎臓摘出手術は無事成功。毎日の点滴(乳酸リンゲル液ソルラクトの皮下輸液)は欠かせないが、それ以外の日常生活にはさしたる差し障りもなく、1ヶ月ほどで元気なアビに戻った。ただ、大好物だったマグロや牛肉などは食べさせてやれなくなった。腎不全の療養食しか与える事ができない。チキン風味の療養食が気に入らないらしく、空腹に耐えかねて仕方なくモソモソと食べている様子を見ると胸が痛む。寝て、食って、遊ぶのが飼い猫の喜びなのだから、少しでも美味しいモノを食わせてやりたい。アビが喜んで食べてくれる療養食はないかとネットで調べた。日本の猫は魚風味のフードで育っているから、魚風味の療養食があれば……、あった! 三共ライフテック社から出ている「ドクターズケア・キドニーケア」だ。療養食は動物病院経由でないと購入できない。すぐに動物病院に取り寄せを依頼。翌日に届いたサンプルのキドニーケアを与えてみると、「ハグハグ、カリカリ、ウルニャーン!」と大喜び。よかった、よかった。こうしてアビは一病息災の穏やかな日々を過ごしていく。


 '08年4月28日、アビとの別れは唐突にやってきた。http://craze.blog.shinobi.jp/Entry/215/
切なさ、淋しさ、悲しみに胸が張りそうだ。'05年3月のシャー、'07年6月のロンとの別れ、そしてロンとの別れから1年と経たぬアビとの別れ。白布に包み、棺代わりの段ボール箱に納めたアビの姿。ただ眠っているだけのようにしか見えない。翌4月29日、八事霊園でアビを送る。21年分という、膨大な量の想い出を残してくれたアビ。霊安保冷庫にアビの亡骸を収めるのは本当につらかった。涙、嗚咽。家内と一緒に、誰憚る事なく泣いてしまった。
 
 アビは初夏の光と共に生まれ、初秋の涼風と共に我が家にやってきて、21年後の初夏の薫風と共に天に帰って行った。

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YASU ・居眠釣四郎・眠釣
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釣りと動物と時代劇、時代小説をこよなく愛する、腰は低いが頭が高い、現代版「無頼浪人」にて候。
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