朔日

　もう八月になってしまい、夏休み進行でお仕事がシッチャカメッチャカ状態で、スケジュール管理の甘さを痛感しているんだが、毎年の事なのでなんとかなるだろう、などと、たかを括っている自分は、学習能力が全くないろくでなしです。ともあれ、お仕事をくださっているクライアント様のご迷惑にならないように、たとえ湯の中、布団の中でも構想は練っているわけで、エンジンさえ掛かれば、徹夜してでも一気に仕上げる馬力は備えているから、よけいにスケジュール管理が甘くなっちゃう悪循環（笑）。

　それにしても年々厳しくなる猛暑なんだが、自分は就寝時にエアコンを付けておくのが苦手で、網戸にして窓を開け放ち、扇風機を明後日の方向に向けて首振りさせて寝てます。エアコン入れっぱなしだと、起床時にダルくて仕方ないんでね。それに毎朝七時前には暑くて目が覚めるから、実に都合がよいです。寝坊の心配が少ないからね（笑）。

　ところが、今朝は少し様子が違った。肌にジットリと汗が滲み、「むぅ～、暑い……」 と床から起き上がろうとしたら、なんだか様子がおかしい。天井が揺れているような感じがして、首を起こすのが精一杯。目を閉じてみるとやはりクラクラとしている。これは睡眠時熱中症の症状。枕元の目覚まし時計に付いている温度計を覗き込むと、室温は３４度！　これはヤバイ。這うようにしてして床を離れ、手すりに縋り付くようにして一階のキッチンへ。とりあえず台所で口をすすぎ、冷たいアクエリアスを……、ってないじゃん！　あぁ、昨日全部飲んじゃったんだ。どうすべぇか……、と野菜室を覗くとスイカがゴロリ。おおお、神は我を見捨てず！　スイカには水分はもちろん、糖分も各種ビタミンもカリウムもカルシウムも含まれているし、チョイと塩を振れば必要な塩分も補給できる。

　クラクラする頭で包丁を手に、スイカを切ってかぶりついた。うまい。冷たく甘い果汁が喉を通り、頭がはっきりとしてくる。自分はスイカの種もガリガリブチブチと噛んで食べてしまうので、アゴの筋肉を動かすから、さらに目が覚めてくる。頭ははっきりとしてきたが、身体が重い。浴室で冷たいシャワーを……って、シャワーがぬるいッ！　まぁ、いきなり冷水を浴びて心臓がビックラこいて止まってしまうのも困るので、頭っからシャワーを浴びながら、浴室でしばし休息。起きたばかりで休息ってのも変な話だが、少し動いただけでもダルかったんです。

　シャワーを浴びる事１０分。身体の火照りが取れてきたのか、ダルさが和らいできた。浴室から出て、腰にタオルを巻いただけの姿で、もう一度スイカにかぶりついていると、家内が起きてきた。

　「朝っぱらから、裸でなぁ～に食べてンのォ？」

　「スイカ」

　「スイカぁ？　朝ゴハンは？」

　「まだ」

　「朝ゴハン前にスイカなんか食べたらダメじゃん」

　「いや、実は……」（睡眠時熱中症らしき症状を説明）

　「だ～か～ら、エアコンの効いた部屋で寝なさい、って言ったのに」

　まったく、小学生がつまみ食いを見つかった時みたいに、家内に言い訳をしてる自分が情けない（笑）。それも月の初めの朔日に、体調はおかしくなるわ、家内に叱られるわで、とんでもない八月スタートになってしまいましたよ、って愚にも付かないお話でした。

　今夜はスイカを食べて、枕元にアクエリアスを入れたクーラーボックスを置いて寝よう。エアコン？　やっぱりエアコン付けっぱなしで寝るのはイヤです……。