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釣り、ペット、短編小説、雑記、紙誌掲載原稿
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 "ねこぼんのう"な皆様から、シャーの旅立ちを惜しむ多数のメールをいただき、感謝の念に耐えません。しかし、このブログのアクセス数から考えると、どうしてこんなにたくさんのメール(この1週間でお見舞いや励ましメールを含めると50通以上)が届くのか不思議……? ともあれ、シャーとの出会いや、名前の由来、エピソードについて、多数のご質問をいただきましたので紹介いたします。

 我が家には東京に住んでいた頃からの愛猫アビ(アメショ・♀・18歳)がいます。'01年に名古屋に引っ越してきましたが、江戸っ子のアビには慣れない土地であり、老齢という事もあって、自由外出はさせていません。リードを付けて、ベランダや裏庭で日向ぼっこをさせる程度なのですが、'04年の9月にキジトラ白の野良猫がやって来ました。アビは癇の強い猫で、自分のエリアに他の猫が近づくと、物凄い勢いで怒ります。しかし、このキジトラ白には「クルルッ、ウルッ」と親愛の情を示す声を出して接近を許しました。珍しい事もあるものだと、キジトラ白に「おまえはどこの子だい?」と近づいて声を掛けると、「シャーッ! 人間は嫌いでェ。俺はアビ姐さんに会いに来ただけだ!」と威嚇されてしまいました。自分や家内が、アビのおやつのカニカマなどを分けてやったり、餌をあげても、半月ほどの間は「シャーッ!」と接近を拒んでいました。その威嚇する鳴き声から『シャー』と命名しました。人気アニメの"赤い彗星"の異名を持つキャラクターとは関係ありません。だから「シャー」と長音で表記します。
shar
 シャーは毎日、アビに会いに来るようになりました。こうなるとご近所には、シャーは我が家の猫だと思われてしまいます。シャーが悪さをすれば我が家の責任。ご近所で悪さを働かないようにするには、餌を与えてお腹一杯にしておいてやるしかありません。ところがシャーは物凄く筋肉質なオス猫で、アビの食べ残しだけでは到底足りません。毎食Lサイズの猫缶を1缶、さらにキャットフードのドライチップを50gほど食べます。猫はチョビチョビと何回にも分けて餌を食べる「猫残し」をするものだと思っていましたが、野良猫の習性なのか、シャーは食べられる時に食べられるだけ食べる、想像以上の大食漢でした。朝・昼・晩と遊びに来ては、裏庭の窓に立ち上がって家の中を覗き込みながら「ヴニャー、ウギャー!」と餌をおねだります。シャー用にLサイズの猫缶と、3kg入りのキャットフードを買っておかねばならなくなりました。

 そんなこんなで、1ヶ月ほど経った頃でしょうか。近所のスーパーの駐車場でシャーを見かけました。「おーい、シャー!」と呼び掛けると、「ヴニャ?」と返事をして、警戒しながらも近づいてくるようになりました。しかし、撫でてやろうと手を出すと、やはり「シャーッ!」。シャーがナデナデしても怒らなくなるまで、2ヶ月ほど掛かりました。そして、すっかりなついたシャーは家の中に上がり込もうとするようになりました。しかし、我が家には老猫のアビがいます。野良猫のシャーはどんな病気を持っているかもわかりませんから、屋内に入れてやるわけにはいきません。それに、アビも自分のねぐらである屋内に入る事までは許しませんでした。ある日、家の中に上がり込んで来たシャーに「フゥーッ、ヴシャーッ!」とアビが一喝。ケンカになればアビがシャーに勝てるはずもありませんが、シャーは大人しく耳を伏せ、家の外に自ら退散していきました。裏庭の軒先で、アビを見上げながら「アビ姐さん、分をわきまえねぇ、過ぎたマネをしでかし申し訳ありやせん」と詫びているような姿に、家内と二人で大笑いしたものです。

 日向ぼっこの時も、アビが一段高い場所に寝そべり、シャーはその傍らの一段低い場所と、序列はハッキリとしていました。日向ぼっこ中に他の猫が裏庭やベランダ近づくと、シャーがスッ飛んでいって威嚇し、時には取っ組み合いの格闘をして追い払います。アビは寝そべったまま、横目でシャーの用心棒ぶりを眺めているだけ。まるで吉原の太夫と、警護の首代の様でした(笑)。そんなシャーの頼もしい護衛ぶりに、裏庭の窓際なら家の中に入って餌を食べる事をアビは許してやるようになりました。

 立場の序列に厳しいアビも、病に倒れて家の中に運び込まれたシャーに怒る事はありませんでした。横たわるシャーの顔を覗き込み、心配そうに鼻を寄せようとしました。ウィルス感染症の疑いのあるシャーに接触させるわけにはいきません。シャーは私の仕事部屋に完全隔離。アビとシャーの接触はおろか、姿を見る事も避けさせていました。次にアビがシャーを見たのは、エンジェルケアを終え、長い長い旅の支度を調えた姿でした。

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 家内と名古屋市立八事霊園斎場でシャーの壮行会をしてきた。シャーと一緒に行く動物達がたくさんいて、シャーは独り旅ではなく、大人数の団体旅行に加わる事になった。シャーの身体は今夜一晩、一緒に行く仲間達と保冷庫で壮行の宴を張った後、荼毘に付される。寂しいどころか、ニャンニャン、ワンワン、キーキー、ギャーギャーと大騒動の珍道中になりそうだ(笑)。良かったな、シャー。独りで寂しい旅路を歩むのでは、と心配していたが、その心配は無用だった。保冷庫にシャーの棺を納めると、安堵の気持ちでまたしても涙がこぼれてしまった。どうも昨日から涙腺が緩んだままのようだ。

 八事霊園斎場は公営なので猫は1100円で送ってもらえる。見送りや拾骨はできないが、大きな慰霊碑(畜魂碑)が霊園の陽当たり良好な一等地にあり、向こうにいる動物達に語りかける事ができる。多くの人が花を手向け、水やお供物を供えて旅立っていったペット達に語りかけていた。名古屋は犬や猫といったペットを飼っている人が多い。帰りの道すがら、家内が「さすがペット大国の名古屋だね」と感心していた。そうだよなぁ。東京に比べたら半額にして、さらに一桁違うもんなぁ。いつでも語りかけに行く事ができる立派な慰霊碑まであるんだもの。

 帰宅してシャーの祭壇を片付けていると、昨日までと何かが違う。「?」と腰に手をやって考えていると、この数日来、ずっと悩まされていた腰痛が消えている! バカな話だが、シャーが自分の腰痛も持って行ってくれたような気がした。シャーよ、猫は三年の恩を三日で忘れると言われているけど、おまえは義理堅い奴だなぁ。ありがとう、助かったよ。ベランダに目をやると、シャーが日向ぼっこの時にいつも眺めていたビオラの花が、まだ浅い春の薄日の中で揺れていた……。

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 シャーの介護10日目。昨夜未明から呼吸音にゼェゼェと雑音が混じり、口を開いて息をし始めた。部屋を暗くして一晩中付き添っていたが、シャーは苦しい息を続けながらも、懸命に生きている。朝9時、動物病院に運び込み診察を受けると、「肺に水が溜まっている。これを抜く治療が必要だけど、その治療薬に耐える力があるかどうか……」と言われてしまった。放っておいても呼吸不全に陥るだろうし、どちらにせよこの呼吸では心臓への負担も大きい。ならばもう一度博打を打つしかない。「この治療に(シャーの)心臓が持ってくれるかどうか、非常に厳しいよ。いいね」と念を押された。ほんのわずかでも可能性があるなら賭けてみよう。「シャーの生命力次第ですよね。お願いします」。治療薬2本、栄養剤1本の合計3本を注射。「これで肺の水が抜け、夕方までに呼吸が戻るれば持ち直す見込みはある。夕方にもう一度連れてらっしゃい。だけど、キツイ治療なので夕方まで持つかどうか……。この子(シャー)次第だね。しかも、野良猫で7〜8歳はかなりの高齢だし」。シャーが7〜8歳? 5歳位だと思っていた。先生に確認すると「歯のすり減り具合や、歯茎の後退具合でおおよその年齢はわかるよ。この子は7歳か8歳。5年生きれば御の字の野良にしては長命だ」。

 10時に帰宅。時折、シャーの全身にビクッと痙攣が走る。心臓が負担に耐えかねているようだ。水を与えてやる。一口だけ飲み込んだ。10時30分、シャーが起き上がった。ベッドから抜け出し、部屋の中をヨロヨロと歩き回る。振り下ろされてくる鎌から身を避けているようだ。へたり込んでオシッコを漏らしてしまった。シャーをベッドに戻し床掃除。部屋全体にペットシートを敷き詰める。11時30分、またベッドから抜け出し、ヨロヨロと水入れに向かい、自力で一口飲んだ。そのまま床に力無く横たわり、肩で息をしながら苦しげに喘いでいる。スポーツ用の携帯酸素を吸わせ、「シャー、頑張れ!」と呼び掛けると、苦しい息の下で「ゥァ……」と応えてくれた。そっと抱き上げてベッドに戻す。

 11時40分頃、自分がトイレから戻ると、シャーがベッドを抜け出して床に倒れていた。心肺停止、瞳孔拡大。急いで人工呼吸。猫は雑菌だらけと言うが、かまってなどいられない。仰向けに抱きかかえて気道を確保、鼻と口を自分の口で覆って、2回息を吹き込んでやる。続いて1分間に60回のペースで心臓マッサージ。人工呼吸、心臓マッサージと猫用の心肺蘇生を5セット繰り返したが、午前11時45分、シャーは旅立った。自力で歩いて飲みに行った一口の水。あれは末期の水を飲みに行ったのか。弛緩したシャーの身体を抱き上げ、「よく頑張った。立派な最期だったよ、シャー」と呼び掛けると、「旦那さん。水臭ぇ真似をしちまいやしたが、あっしは元々、天涯孤独の野良猫でござんす。逝く時も独りで逝くと決めてたんでさぁ。ずいぶんとお世話ンなりやした。礼を言わしてもらいやす。ありがとうござんした」と、シャーが大きく開いた瞳で自分を見つめ返していた。苦悶の表情はない。瞬膜も出ていない。しっかりと目を見開き、現世の様を瞳の奥に焼き付けているようだ。まさにこれから勇躍と旅立っていく者の顔だ。涙が止まらない。シャーが旅立った悲しみだけではない。シャーのあまりに見事な病との闘いっぷりと、立派な最期に感動して、身体の震えと嗚咽が止められない。嗚咽はやがて慟哭に変わった。

 13時30分、シャーの旅立ちを惜しんで家内と一緒にひとしきり泣きじゃくり、気持ちが少し落ち着いた。エンジェルケアをしてやろう。野良猫のシャーはおそらく、生涯一度もお風呂に入った事が無いはず。旅の道中や、向こうへ行ってから「おまえさん、臭いよ」なんて仲間はずれにされたのでは可哀想だ。バスルームに運び、シャンプーで念入りに洗ってやる。おや? シャーよ、おまえはずいぶんと綺麗なキジトラ白だったんだね。ありゃ、こんな所にもケンカ傷のハゲがある。おいおい、ずいぶんとヤンチャしてたんだな。なぁ、シャー。向こうでペル、ライダー、チー、チャミ達(我が家で飼っていた猫達)に会ったら、俺と家内は元気でやってるって伝えてくれよ。よし、全身キレイになった。どうだ、サッパリしただろう。今、乾かしてやるからな。バスタオルで丁寧に水気を拭き取り、ブラシを掛けながらドライヤーで念入りに乾かしてやる。病み疲れしていたシャーの毛並みが、元気な頃のようにフワフワになっていく。うんうん、おまえ、グッと男前が上がったぞ。ふと気付くとシャーが目を閉じている。そっか、気持ち良かったか。シャーのエンジェルケアが終わると、トコトコとアビがやってきた。シャーの顔をのぞき込んでいる。あぁ、アビ、おまえもシャーを見送ってやるのか。シャーよ、我が家の太夫猫もお見送りに来たぞ。なんとも粋な旅立ちじゃないか。

 ダンボールで作った棺に厚手の白いバスタオルで包んだシャーを納め、マタタビを抱かせ、日向ぼっこの時にシャーが眺めていたビオラの花を入れてやった。ダンボールで作った祭壇に安置してやる。まるで眠っているようなシャーの安らかな顔。もう、苦しげな息はしていない。安らかなシャーの永遠の寝顔に涙がこぼれた。シャーの好きだった猫缶、水を祭壇に供え、お香を焚いてやる。いってらっしゃい、シャー。またどこかで会ったら、また友達になろう。半年間、楽しかったよ。ありがとう、シャー。

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シャーの介護9日目。
【朝】
 昨夜未明、シャーの容態が急変した。頭を持ち上げる事が出来ず、呼吸も浅く荒い。体温も下がっている。朝になるのを待って、動物病院に運び込んだ。体重は3.7kgにまで落ちていた。ここ数日間の闘病で、ついに最後の体力まで尽き果ててしまったらしい。わずかに残っていた抵抗力も尽きて、肺炎を起こしていると先生が告げた。体温が下がったのは、発熱してウィルスや病原菌と闘う抵抗力が落ちてしまったからだ。極めて厳しい局面。それでも最善を尽くしたいと申し出ると、「(シャーの)命の保証は出来ないけどいいか?」と言われた。元々、野良猫のシャーだ。自分が発見していなければ、すでに無かったはずの命。ここで肺炎治療のための博打を打って、シャーに恨まれるなら恨まれてもいい。抗生剤などの治療薬2本、栄養剤1本の合計3本の注射。注射の針を刺されても、「ヴギャ……」と声を上げるだけ。暴れる体力も無い。連れ帰ったら乾燥した暖かい部屋に置く事と、水分をまめに補給してやる事を指示された。敢えて "乾燥した部屋" に置くのは、猫が喉の渇きを感じて水分を摂るようにするためだそうだ。しまった、わざわざ加湿器で乾燥を防いでいたよ……。

【昼】
 動物病院から戻り、午後になってもシャーはぐったりしたまま。完全に寝たきり状態に戻ってしまった。流動食も受け付けない。薄い砂糖水、猫用ミルクを注射器のポンプで1〜2時間おきに与える。口の中に流し込んでも、半分はタラタラとこぼしてしまう。飲み込むのも辛そうだ。根気よく、ひたすらシャーの快復を祈りながら介護を続けるしかない。
 猫は野生の本能で、具合が悪くても本当の限界が来るまで動き回ったり、無理をしてでも餌を口する。弱っている姿を外敵に見られたら、獲物にされてしまうからだ。一見、元気そうに見えても、実は青息吐息の状態と言う事もよくあるらしい。そのため、異常に気付いた時には既に手遅れという例がとても多いそうだ。この2〜3日、回復傾向にあると思っていたが、実際は攻め寄る病に対し、シャーは総力を結集して突撃を敢行していたのか……。そこへ『肺炎』という新手の敵が現れ、シャーは深手を負ってしまった。頑張れ、シャー。大丈夫、俺が助勢してやる。すでに2回も重篤状態の介護は経験している。今度もちゃんと面倒見てやるから。それに獣医さんも加勢してくれる。陣は整ったぞ。もう一合戦ブチかましたろうぜ、シャー。

【夜】
 頭を持ち上げるようになった。ペーストは無理だが、流動食を15ccほど口にした。水も10ccほど飲んだ。ゴソゴソと動くので座らせてやったらオシッコをした。やっぱり寝たままでするのはイヤなんだな。そういえば今日は便が出ていない。食べていないんだから、出るはずもないか……。あるいは排便する力が出ないのかもしれない。
 依然として呼吸は荒く、息をしているだけでも辛そうだ。獣医さんには「今夜持ちこたえられるかどうか……」と言われている。寝ずに付き添ってやり、明日は朝一(9:00)に動物病院に連れて行く。シャー、明日の朝9時に診療予約してあるからな。頑張って今夜を乗り切ろうな。

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 シャーの介護8日目。まだ自力歩行は出来ないが、今日は起き上がれるようになった。しゃがんで排泄行為を行っている。これならシャーの身体も汚れなくて済む。ただ、まだ熱があるせいか便が硬くて、排便すると「ウンチしたら疲れちゃった……」といった感じでヘタッと横たわってしまう。ツライ思いをしているシャーには申し訳ないが、見ていて笑ってしまった。

 今朝は餌の流動食20cc、流動レバーペースト10g、離乳食ペースト10gを全量摂取。高カロリー、高タンパクの栄養食を1〜2時間おきに与え続けているが、水を自分で飲もうとしない。不安になって獣医さんに電話を入れた。ここ数日間の経過と介護手順を伝え、間違った事をしていないかも確認してみる。
「はあ〜、ずいぶんと回復したね。熱心に介護してるんだ。介護方法はそのままでいいよ。
 あ、お水はね、猫は砂漠の生き物が祖先だから、水分の多い餌を与えている場合はそんなに飲まないの。
 流動食やペーストを一日200gくらい摂っているなら、水は100〜150ccも飲ませてあげれば充分。
 黄疸と血尿ね……、状態を診てみるから、週明けくらいに連れてらっしゃい。それにしてもよく頑張ったね」
頑張ったのはシャーだ。今だって頑張っている。ベッドに横たわり、スヤスヤと寝息を立てているが、体内では怖ろしいウィルスと絶え間なく闘い続けているのだから。

 しかし、動物の介護もお金がかかるなぁ。毎日の費用は……と。流動食(デビフ社製「カロリーエース」)が1缶180円、自家製流動レバーペーストの牛肉と鶏レバーが150円(一日分)、離乳食ペースト(デビフ社製「子猫の離乳食」)1缶200円、猫用ミルク(日本ペットフード社製「Mimy子猫のミルク」)が100cc当たり85円。さらにペットシート5〜8枚、清拭剤(花王ペットケア「清潔スプレー」)、ペット用清拭シート(花王ペットケア「ブラッシングシート」)5枚、拭き上げ用クロス10〜20枚、起毛シーツやフリース地ブランケットなど自作品の材料費などを加えると結構な金額になる。これに医療費が上乗せされると……、うわぁッ! 我が家が財政破綻してしまう。精一杯の事をしてやるって約束は絶対に守るけれど、シャーよ、早く良くなっておくれ〜!

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 シャーの介護7日目。昨日、首を持ち上げて頭を起こすようになったと思ったら、今朝は箱座りしていた。横たわっているだけだったのが、腹這いになっている。おまけに、ささやくように小さな声だが、「ンァ〜ゥ……」と空腹を訴えている。大急ぎで流動食とゆるゆるのレバーペーストを用意。注射器のポンプに充填して、シャーの口の脇からゆっくりと注入。「ピチャピチャ、ミシャミシャ……」。ミシャミシャ? おおおッ、咀嚼音じゃないか! 昨日は舐めて飲み込むだけだったけれど、今日は明らかに噛む動きをしてる。確認のためゆるゆるのレバーペーストを注入。目をパッチリ見開いた! これならいけそうだ。固形率の高い離乳食ペーストを与えてみる。食べてる、食べてる。ゆっくり、少しずつ舐め取るように口に入れ、噛んでいる。腹這いになったままだけど、しっかりと食べてる。まだ胃が縮んでいて、ムシャムシャと食べる事は出来ないけれど、"食べる" という行動が出来たのは大きい。体力が回復しつつある兆候だ。

 餌と水を与え終わり、ペットシートの交換(本当はコチラが先なのだが、今日はシャーが空腹を訴えたので餌を先に与えた)。相変わらず尿はオレンジ色だが、少し色が薄くなってきたような気がする。身体を拭ってやりながら、目、耳、鼻、歯茎、口内、肛門、泌尿器をチェック。各所に黄疸が出ている。肝機能にもダメージがある証拠だ。病と闘うために、腎臓も肝臓もフル回転して焼き付いてしまったんだろう。全身衰弱で実質的には獣医さんにも見放された状態なんだから、生きているだけでもシャーの頑張りがわかる。もう少し体力が回復して自分で身体を起こし、餌入れの場所まで行って食べられるようになれば、動物病院で治療が受けられる。お薬師さん、お地蔵さんに快復を祈りながら、シャーを見つめていたら妙に胸が熱くなってきた。シャーよ。頑張ってるよなぁ、おまえ。

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 シャーとの共闘(介護)6日目。相変わらず横たわったままだが、頭を持ち上げる事が出来るようになった。意識もハッキリしている様子で、呼び掛けると耳を向けたり、尻尾をピクピク動かす。食欲も多少ながら出てきたようだ。流動食だけではなく、仔猫用の離乳食ペーストのティースプーン1杯分を舐めるように食べるようになった。日中は食事を1時間おきに与えてやる。呼吸もゆったりと深くなった。午後1時から3時まで、ベランダで陽に当ててやった。時折、陽光の心地よさを味わう様に首をもたげている。まだ予断は許されないが、今日の所は重篤状態から脱したようだ。

 シャーのベッドの下に敷いたペットシート。相変わらず濃いオレンジ色の尿が出ている。便に混じっていた血は、比較的少なくなってきた。できるだけ清潔に保ってやらないと、抵抗力が落ちているので皮膚病に罹ってしまう。ペットシートを取り替え、温かい濡れタオルで身体を拭いてやり、肛門や泌尿器周りは包み込むように拭ってやる。ゴロゴロと喉を鳴らす力はまだ無いが、気持ちよさそうに目を閉じている。清拭剤を使って仕上げ。清拭が終わると、濡れた身体で体温が奪われないように何枚もタオルを交換して湿り気を取り、遠目にヒーターの温風を当てながら乾燥。もう一度新品のペットシートに取り替え、清潔な起毛シーツを敷き、フリースで作ったブランケットも交換して掛けてやれば完了。これで寝たきりのシャーから異臭が漂うような事は無い。

 シャーが元の身体に戻る事を祈ってはいるが、獣医の先生には、言外に安楽死を勧められた。そして治療よりもQOL(クオリティ オブ ライフ)を、と言われている。つまり、残された時間をできるだけ快適に過ごさせてやれと……。しかし、自力で立ち上がり、餌や水を自分で摂取出来るようになれば、治療も受けられる。病名は教えてもらえなかった(衰弱がひどく、検査も受けられなかった)が、症状を総合して調べてみると『猫白血病ウイルス感染症』のようだ。この衰弱状態を乗り切って治療(インターフェロンの投与など)を受けられれば、かなりの確率で治るらしい。一筋の光明が見えたような気がする。

 年度末の月末月初で仕事はてんこ盛り、そこへ持ってきて腰痛の再発で立つも座るもままならず、脂汗を流しながら仕事をこなしつつ、シャーの介護。この数日間、朝目覚めるたびにシャーの生存を確認してはホッとする日々。しかし、シャーの介護をしながらの方が、仕事がはかどるのはなぜだろう? 自分のポテンシャルにも光明が見えたような……。

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 "心から神仏に祈る" という機会は、現代人にとって滅多にある事では無いと思う。葬儀を除けば、お正月の初詣、あるいは受験の合格祈願くらいだろう。まして自分や一族の成功、栄達、供養の為ではない祈りなど、生涯に何度あるだろうか。しかし、その "祈る機会" が来てしまった。先週2月23日の事だ。

 我が家に餌を食べに来ていた外猫(=野良猫・♂・推定5歳)のシャーが2〜3日姿を見せないなぁ、と思っていたのだが、犬の散歩の途中で道端でうずくまっているのを発見した。抱き上げてみると、抱きつく力も無く、眼は半開きで瞬膜が出たまま。呼び掛けにも反応しない意識朦朧の状態。垂れ流しの排泄物で悪臭がひどい。時折、苦し気に喘ぐように咳き込んでいる。自力で歩く事も、餌や水を口にする事も出来ない。2週間前に5.7kgあった体重が4.2kgに削痩していた。動物病院に連れて行ったが、「極度の衰弱状態に陥っている。外猫は喧嘩でウィルス性の感染症に罹りやすい。おそらく風邪が元で一気に発症したんだな。せめて自力で立てるとか、餌や水を摂取できる状態じゃないと治療は無理。体力が尽きている状態だと、検査をするにしても、薬を投与するにしても、かえって危険だ」と、先生は首を横に振りながら言う。診立てた病名も、治療法も、回復の見通しも教えてくれない。手遅れ……。先生の眉間に寄った深い縦皺が、言外に『安楽死させてやるのも思いやりだよ』という雰囲気を伝えている。「楽にしてやってくださ……」と、言葉が唇の内側まで出た。その瞬間、診療台に横たわるシャーが「ウァ…ゥ……」と小さく鳴いた。眼球だけ動かしてこちらを見ている。うめき声のような鳴き声に力は無いが、
 『自分の生死は自分で決める。他人の意思で決められたくないよ』
と訴えているようだ。苦しくても最期の時まで生きようと、病と闘っているシャー。生に向け、病に懸命に立ち向かっているシャー。胸の奥に重く澱んでいた何かが弾けた。自分の心は決まった。

 『シャー。おまえを助けてやる事は出来ないかもしれない。
  だけど最期の時まで、俺に出来る精一杯の事はしてやる。
  俺もおまえと一緒に病気と闘ってやるよ。約束する。
  だ か ら 、 今 は 生 き ろ ! 』

 猫用流動食と、流動食や水を口の中に流し込んでやるための注射器ポンプを動物病院で出してもらい、シャーとの共闘(介護)が始まった。尿は濃いオレンジ色。おそらく血尿だろう。腎機能がやられているかもしれない。便がやや黄色っぽい白色なのは胆汁が出ていないのだろう。所々に赤いまだら模様がある。腸内のどこかで出血しているのだろうか。幸い下痢は起こしていないので、2〜3時間おきに20〜30ccほどの水を注射器のポンプで飲ませてやれば、脱水症状に陥る心配はないはず。餌は3〜4時間おきに流動食や卵黄などを与えてやる。しかし、横たわったままでの排尿や排便が辛そうだ。排泄物の痕跡を隠す、猫の本能である砂かきができず、人間に下の世話をしてもらうなんて、シャーの猫としてのプライドはズタズタだろう。それでも、痩せ衰えた小さな身体で、生に向けて闘いを挑み続けている。おまえは勇者だよ、シャー。

 シャーの世話だけなら、なんと言う事はない。しかし、我が家には老猫のアビ(18歳)、老犬のロン(13歳)がいる。ウィルス性の感染症だろうから、アビとロンまで罹患してしまう可能性もある。アビやロンと接触しないように、シャーは自分の仕事場に入れて完全隔離状態にした。シャー用の餌容器、水容器などは使用の度に煮沸消毒。自分もシャーの世話をしたら薬用石けんで手洗いして、さらにアルコールスプレーで消毒。アビとロンの世話は家内に任せ、自分はできるだけ接触しないように注意をしている。

 今日で介護5日目。シャーの病状は一進一退。3日目の昼頃には自力で起き上がり、排尿や排便が出来るようになったのだが、4日目から再びぐったりと横になったまま。口内やまぶたの内側が少し白っぽい。貧血状態のようだ。精肉店で牛肉と鳥レバーを購入。おかゆ状の軟らかいビーフ&レバーペーストを作って注射器のポンプで与える。美味しかったらしく、横になったままだが口を動かし、小さく唸っておかわりを求める。よし、しっかり喰え。健康な頃のおまえは、小柄だが近所の野良猫の中で一番マッチョでクールな猫だった。もう一度、ボスの座に返り咲け。

 食事の世話も、身の回りの世話も、下の世話も、物理的に可能な事はすべて手を尽くしている。俺はおまえに、精一杯の事はしてやると約束した。だから、神仏にもおまえの加護を祈るよ。精一杯、心からおまえの快復を祈ってやる。今、シャーのベッドには、正面と天蓋に薬師瑠璃光如来の尊像が貼り付けてある。延命地蔵尊の御札も部屋に祀ってある。餌の時、水を飲ませる時、下の世話をする時、おまえに触れる時、常に真言を唱えて快復を祈ってる。シャー、あとはおまえ次第だぞ。

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 我が家にはアメリカンショートヘヤーマッカレルタビーの"アビ(17歳♀)"がいる。猫の17歳はかなり高齢で、人間に換算すると85歳くらいになる。3年前に東京から転居した際、相当のストレスになったと思うが、病気をする事もなく、安穏と日々を過ごしてくれている。ところが、先月からミニチュアシュナウザーの"ロン(12歳♂)"が我が家にやってきた。元々は自分の両親が飼っていたのだが、老後の暮らしを考えてマンションを購入したため、犬を飼う事が出来なくなったので我が家で引き取った。
 こうなるとただでさえ仲の悪い犬猫の仲。さぞや大騒ぎになるかと心配したのだが、犬のロンは幼犬の頃、子猫と一緒に遊んでいたという経歴の持ち主。アビを見ても吠えるどころか、尻尾を振って「遊ぼう、遊ぼう!」とばかりにキュンキュンと鼻を鳴らす。しかし、先住者であり、年長の猫のアビは「ここはアタシのねぐらだよ。なんでアンタがいるのさ。ウシャーッ!」と威嚇する。こりゃいかん。高齢猫はストレスが高まるとたちまち病気になったり、元気がなくなると言われているので心配になった。ロンは玄関脇に小屋を置き、室内は玄関の上がり框までしか入れないようにして棲み分けを図った。

 そしてこの1ヶ月、アビの元気が無くなるのではとハラハラしていたのだが、なんと、ライバルの登場で食欲旺盛、むしろ以前よりも元気になってしまった。ついでに近所の野良猫"シャー(暫定名・推定5歳♂)"が9月頃からアビを慕って毎日やってきている。こうなると内猫のアビ、外猫のシャー、犬のロンの3匹をペットとして飼っているようなもの。ペットの飼育費用が毎月2万円以上かかるようになってしまった。一番大きいのはロン。シュナウザーはグルーミング(シャンプー・カット・耳毛抜き)に毎月7千円、エサ代やら諸々が8千円かかり、さらに猫2匹分のエサ代が1万円くらい。これに毎年ワクチンの注射やらなんやらの費用もかかる。はぁ〜、こりゃ釣行回数も減るはずだわ。我が家の可処分所得はペットによって年間30万円は減るんだから。

 でも、ペットに囲まれて暮らすのはいい。なにしろ心が和むし、ご近所との会話も増える。犬を連れて散歩に出れば近所の子供達とも話が出来て、当世の子供気質まで知る事が出来ちゃうってんだから、我が商売には非常にありがたい。ペットを飼える一戸建ての家を買ったよかったとつくづく思う(飼い主は極貧生活に喘いでるんだけどね……)。

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HN:
YASU ・居眠釣四郎・眠釣
性別:
男性
自己紹介:
釣りと動物と時代劇、時代小説をこよなく愛する、腰は低いが頭が高い、現代版「無頼浪人」にて候。
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