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釣り、ペット、短編小説、雑記、紙誌掲載原稿
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 シャーが永久(とわ)の旅に出ておよそ1ヶ月。アビは毎日、裏庭に面した窓を覗いている。シャーがいつも通ってきていた門扉の角の隙間をしばらくジッと見つめ、来ないのを知ると自分のねぐらに戻る。それが今日は、いつまで経っても窓際から動こうとしない。「どうしたの、アビ? シャーはもう来ないんだよ」と声を掛け、アビの見つめる方向に目をやると……。シャーそっくりのキジトラ白の猫がいた! 若い。おそらく1歳くらいだろう。そういえば昨年、シャーによく似たキジトラ白の子猫を見かけた事がある。急いで冷蔵庫からカニカマを取り出し、チチチッと舌を鳴らしてキジトラ白を呼び寄せてみる。耳をピンッと立て、こちらを値踏みするように見ている。ふむ、警戒心が強いな。猫と視線が合わないようにしながら、床に腹這いになって低く手を伸ばしてカニカマを見せてやる。左右に目をやり、周りを警戒しながら入ってきた。キジトラ白の全身が見えた。尻尾が稲妻形に曲がり少し短い! 間違いない。この猫はシャーの子供だ。そもそも、野良猫の世界ではボス猫のエリア内にオスの成猫は存在できない。我が家の裏庭を含むエリアの野良猫の子猫は、全てシャーの子供という事になる。

 ソォ〜っと手を伸ばしてカニカマを目の前にかざしてやる。1mほどのところで「ウ〜、ナーッ!」と鳴いた。カニカマに興味はあるのだが、人間の姿があるものだから、興味と警戒心のジレンマに陥っているようだ。ここで無理をしてはいけない。シャーの使っていたメラミンのお皿にカニカマを置き、一旦窓から離れる。キジトラ白がサッと走った。素早くカニカマをくわえると、窓際から2mほど離れた場所に移動。突然攻撃されても逃げられる安全距離を取った。さすがだ。シャーの血を受け継ぐ猫なら、こうでなくっちゃ。周囲を警戒しながらカニカマを平らげ、ピンと尻尾を立てて立ち去る後ろ姿で性別確認。メス猫だ。仲良くなってナデナデやダッコさせてくれるようになったら、ワクチンの接種と不妊手術を受けさせねば。

 しかし、シャーの忘れ形見がやって来るとは思わなかった。アビも怒る様子はなく、裏庭への立ち入りを許している。シャーよ、任しとけ。オマエの娘もちゃんと面倒見てやるからな。

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YASU ・居眠釣四郎・眠釣
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釣りと動物と時代劇、時代小説をこよなく愛する、腰は低いが頭が高い、現代版「無頼浪人」にて候。
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