邯鄲

　唐の沈既済の小説「枕中記」なんだが、「邯鄲の夢（かんたんのゆめ）」と言った方が通りが良いかな？　栄辱、貴賤、貧富、死生も、所詮は一炊の夢の如しで、眠狂四郎の言葉を借りれば、
　「悪と善とに拘らず、女の美しさとか、ひとつの商いとか、
　　　一国の繁栄とかは、盛りがすぎれば、ほろぶもののようだ」
ってな事ですな。

　何の話かって？　アイスランドですよ。ひと頃は金融立国として、世界有数の富裕国とも呼ばれた極北の国だが、今般の金融危機で真っ先に奈落の底に堕ち、凍てついてしまった。そしてついに全ての大手金融機関が国有化され、「それ、どこの社会主義国？」ってな案配になってます。
http://www.nikkei.co.jp/news/main/20090309AT2M0902Q09032009.html
まぁねェ、「金が無いのは首が無いのと同じ」って言葉が日本にはあるんだが、要するに、「お金がないのは死んだも同然ですよ」って事ですからなぁ。

　で、他人様の不幸を笑ってばかりもいられないのが現在の世界情勢で、我が国も株は下がる、失業者は増える、政治家の不祥事は露呈する、不法入国者はゴネるでエライこっちゃなんだが、それでも日本人はまだ、オゼゼをしこたま持ってます。自分は持ってないけど……。

　確かに株安、円安、貿易赤字に経常赤字、失業者増で困っているんだが、こんな世界情勢の中で我が国だけが、イソップ童話の 『アリとキリギリス』 のアリみたいに、「わてら、しっかり働いて貯め込んでまっさかい、それでもまだホクホクでんねん」 なんて顔してたら、それこそ世界中のキリギリスにたかりまくられちまう。つか、欧米の肉食獣、亜細亜の爬虫類や超汚染両生類に強請られちゃうんで、ここはやっぱり 「あきまへんわ。わてらの方がダメージが大きゅうて、もう銭なんかあらしまへん」 と、不景気面をしておくのが一番ですな。

　自分なんか不安定なフリーランスの仕事をしているだけに、屋根のあるところで寝起きし、三度三度オマンマが腹一杯喰えて、その上ペットを飼い養い、マイカーを持ち、釣りやゲームで遊び、携帯電話やPCまで使っていられる事が、時にとてつもなく幸せに感じるんですよ、マジで。上を見ればきりがない。下を見てもきりがない。だったら前（=自らの現実と将来）を見て暮らしていくのが一番ですな。夢を見ていたんでは飯は食えません。そりゃ寝ているにすぎませんよ、ってお話です。