改易

　かつて禄を食んだ事のある小藩の主家が改易となった。主家の負債はおよそ六万七千両（一両≒30万円）。自分は分家小藩の侍大将の一人として主家への出入りを許され、大殿にもお目見えを許されていたし、家老衆や奉行衆などの大役に就くお歴々、侍大将や目付衆とも浅からぬお付き合いがあった。自分が仕官していた頃は大層な羽振りだったのだが、時の流れは無常なものだ。



　大殿や家老衆といった御重役方はともかく、主家御家中の旗本衆や腰元、女中ら約600名が、年の瀬を控えて路頭に迷うのはなんとも不憫でならぬ。主家改易で分家の小藩各家の内、共に取り潰しとなった御家もある。残りの分家小藩も、ただならぬ艱難辛苦に立ち向かわねばなるまい。

　年越しの賞与もあてにできず、月々の禄もどうなることやら。半知借り上げの可能性もあろうし、召し放ちとなる者も少なくかなろう。分家各藩もすべて取り潰しとなれば、主家と合わせて少なくとも800名、出入りの中元衆まで入れれば1000名以上の浪人が出てしまおう。

　今や武家よりも公家奉公の方がもてはやされる時代。その公家に対して、にわかに浪人に落とされた衆の不満が溜まれば、いずれは維新へと向かうのであろうか？