小康

　何度も三途の川を渡り掛けた愛犬ロン。昨日から食欲が戻ってきたらしく、通常のドッグフード（と、言っても膀胱結石を防ぐ療養食だが）を食べる様になった。自力で食べる事は出来ないが、口を開かせて一粒ずつ押し込んでやれば、ガリガリと噛み砕いて食べる。量も元気な頃の６割くらいは食べている。まぁ、寝たきりなのでそんなに食べる必要はないだろう。元気な頃と同じだけ食べたのでは、カロリー過多で返って身体に良くない。



　元気な頃の姿に戻って欲しいが、それは望むべくもない。加齢による腰椎の変形で起きた右後肢の麻痺は治らない。慢性的な貧血状態も、骨髄の造血機能の衰えによるものだから手の施しようがない。安静にしておく事、必要な栄養と水分を摂らせ、排泄の介助とマッサージをしてやる事くらいしかできない。元気な頃を思えば、非常に切なく、寂しい事だが、生けとし生けるもの全てに訪れる "老い" に抗う術はない。

　ロンと一緒に過ごせる日々が、後どれだけ残されているのかわからないが、年単位ではないだろう。数ヶ月間なのか、数週間なのか、いや、数日間だけなのかも知れない。

　ロンよ、お主は本当によう我が家に仕えてくれた。天に帰るその時が来るまで、できる限り穏やかに過ごせる様にしてやろうぞ。