釣り、ペット、短編小説、雑記、紙誌掲載原稿
×
[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。
とある地方都市の、人ッ気の少ない国道の交差点。前に停まった白いセルシオから、どう見ても堅気じゃない、いかつい兄さんが降りてきて、ウィンドウをコンコンッ! こりゃもう、尋常じゃない状況ですよ。ただ、車をブッつけたわけでもないし、煽ったわけでもない。ただ普通に後続してただけなんだが、まぁ、この手の連中にまともな話が通じるはずもない。とりあえずドアはロックしたまま、ウィンドウを細めに開けて 「何ですか?」 と、背中と腋の下に変な汗をかきながら質問するのが精一杯になっちゃうね。
したっけ、意外と穏やかな声で 「いきなりでスマンけど、ちょっと買ってもらいてーモンがあるんだけど」 ってな事を言うわけですよ。でも、いくら穏やかな声でも、こりゃ押し売りですがな。丁重にお断りしたいところだが、逃げるに逃げられない。逃げてケータイで通報? 無理無理ッ。前方は塞がれてるし、運転席ドアにピタッと身を寄せて立たれている状況だもの。第一、まだ何もされていない。いくらかブン盗られても仕方がない、と覚悟を決める場面ですな。
「いらないんだけど……」
「まぁ、返事はモノを見てからにしてよ。ほら、コレ。コレだよ」
(小脇に抱えたセカンドバッグから、ゴソゴソとDVDのパッケージを取り出す)
「な、コレを買ってくれんかなぁ?」
「なんスか、それ?」
「おっ、興味持ったね。DVDだよ、DVD。今はカーナビでも再生できっしょ?」
「海賊版DVDはマズイでしょ。いらないです……」
「海賊版じゃねーし。俺ンとこで撮ったオリジナルだよ」
もう、ここまできたらDVDの内容の想像が付きますわな。ただし、必ずしも違法なDVDとは限りません。つか、何も収録されていない空DVDかもしれない。
「なぁ、頼むよ。どうしても買って欲しいんだ」
「え~、そんな事言われても困りますぅ」
「ガス欠寸前でさ、財布忘れて来ちゃったんだよ」
「……」
「なぁ、助けると思って買ってよ。5枚セット5千円でいいから」
「そんなにお金持ってないです」
「えー、いい旦那が5千円も持ってないの?」
「持ってない。だから勘弁して」
「いやいやいや、じゃ、いくらなら持ってンの?」
「全然持ってない……」
「マジで?(怒)」
「あ……、小銭入れに3千円くらい……ある……かな?」
「じゃ、それでいいから買って」
こうなったらもう、根負けしますな。騙されたと思って買うしかない。まぁ、買うっていうより、カツアゲされたようなモンだけど。
「お金はあげるけど、DVDはいらない」
「そうはいかない。受け取ってもらわねーとカツアゲになっちゃう」
「いや、訴えたりしないから」
「いいから、いいから。じゃ、もうちょっとだけ窓開けて」
「ヤダ」
「違う、違う。お金とコレの受け渡しだって」
「あ……、うん」 (ウィ~ン)
「じゃ、これ5枚セットな。お金ちょうだい」
「はい……」 (小銭入れから千円札一枚と五百円玉3枚、百円玉5枚)
「はい、たしかに3千円。ありがとざした」
あら、こんなヤツでも変な日本語ながらも御礼は言うんだ。なんて妙な所に感心して、押し売りに負けた悔しさが少し薄らいじゃったりしても、結局は3千円盗られちゃってんだけどね。で、さっきまで 「いらない」 と言っていたDVDも、一応は中身を確認しておこうって気持ちになるわけだ。コンビニの駐車場に車を停めて、カーナビに突っ込んでみると、「どうせロクでもないシロモノだろう」 と思っていたら、本物のアレで、しかも超レアなDVDだったもんだから、ビックリしちゃいます。ネットで拾ったサンプル動画の詰め合わせとかじゃなくて、「あ~、いかつい兄さん、ありがとう!」 って、カーナビの8インチワイド画面に向かって合掌しちゃうくらい、有名な女優さんの流出モノだったわけですよ。これがたったの3千円で手に入ったんだから、安い買い物ですわ。神様、禍福はあざなえる縄の如しって、この事だったんですね。
と、言う夢を見ましたよ、ってお話でした。
したっけ、意外と穏やかな声で 「いきなりでスマンけど、ちょっと買ってもらいてーモンがあるんだけど」 ってな事を言うわけですよ。でも、いくら穏やかな声でも、こりゃ押し売りですがな。丁重にお断りしたいところだが、逃げるに逃げられない。逃げてケータイで通報? 無理無理ッ。前方は塞がれてるし、運転席ドアにピタッと身を寄せて立たれている状況だもの。第一、まだ何もされていない。いくらかブン盗られても仕方がない、と覚悟を決める場面ですな。
「いらないんだけど……」
「まぁ、返事はモノを見てからにしてよ。ほら、コレ。コレだよ」
(小脇に抱えたセカンドバッグから、ゴソゴソとDVDのパッケージを取り出す)
「な、コレを買ってくれんかなぁ?」
「なんスか、それ?」
「おっ、興味持ったね。DVDだよ、DVD。今はカーナビでも再生できっしょ?」
「海賊版DVDはマズイでしょ。いらないです……」
「海賊版じゃねーし。俺ンとこで撮ったオリジナルだよ」
もう、ここまできたらDVDの内容の想像が付きますわな。ただし、必ずしも違法なDVDとは限りません。つか、何も収録されていない空DVDかもしれない。
「なぁ、頼むよ。どうしても買って欲しいんだ」
「え~、そんな事言われても困りますぅ」
「ガス欠寸前でさ、財布忘れて来ちゃったんだよ」
「……」
「なぁ、助けると思って買ってよ。5枚セット5千円でいいから」
「そんなにお金持ってないです」
「えー、いい旦那が5千円も持ってないの?」
「持ってない。だから勘弁して」
「いやいやいや、じゃ、いくらなら持ってンの?」
「全然持ってない……」
「マジで?(怒)」
「あ……、小銭入れに3千円くらい……ある……かな?」
「じゃ、それでいいから買って」
こうなったらもう、根負けしますな。騙されたと思って買うしかない。まぁ、買うっていうより、カツアゲされたようなモンだけど。
「お金はあげるけど、DVDはいらない」
「そうはいかない。受け取ってもらわねーとカツアゲになっちゃう」
「いや、訴えたりしないから」
「いいから、いいから。じゃ、もうちょっとだけ窓開けて」
「ヤダ」
「違う、違う。お金とコレの受け渡しだって」
「あ……、うん」 (ウィ~ン)
「じゃ、これ5枚セットな。お金ちょうだい」
「はい……」 (小銭入れから千円札一枚と五百円玉3枚、百円玉5枚)
「はい、たしかに3千円。ありがとざした」
あら、こんなヤツでも変な日本語ながらも御礼は言うんだ。なんて妙な所に感心して、押し売りに負けた悔しさが少し薄らいじゃったりしても、結局は3千円盗られちゃってんだけどね。で、さっきまで 「いらない」 と言っていたDVDも、一応は中身を確認しておこうって気持ちになるわけだ。コンビニの駐車場に車を停めて、カーナビに突っ込んでみると、「どうせロクでもないシロモノだろう」 と思っていたら、本物のアレで、しかも超レアなDVDだったもんだから、ビックリしちゃいます。ネットで拾ったサンプル動画の詰め合わせとかじゃなくて、「あ~、いかつい兄さん、ありがとう!」 って、カーナビの8インチワイド画面に向かって合掌しちゃうくらい、有名な女優さんの流出モノだったわけですよ。これがたったの3千円で手に入ったんだから、安い買い物ですわ。神様、禍福はあざなえる縄の如しって、この事だったんですね。
と、言う夢を見ましたよ、ってお話でした。
PR