均霑

　自然が相手の釣りって遊びは、「運七腕三」って言われるくらい、運の要素が強い。名人と呼ばれる人だって一匹も釣れない日もあるし、初心者がいきなり大物を釣り上げたり、入れ食いの大爆釣をしてのけたりもする。まぁ、ビギナーズラックは釣りに限らず、運の要素が絡むゲームやスポーツではよく言われるんだけどね。

　ただ、釣り名人と言われる人達は、釣れても釣れなくても、しっかりとその日の要因を理解し、説明できる人達なワケですよ。潮回り、潮色、時間帯、水温、気象、海象、もろもろのデータに裏打ちされた道理と理屈。「釣理」 とでも呼びましょうか。「釣りは理屈じゃねぇッ！」って高言する人もいるけど、残念ながら釣りは理系の理詰めの世界です。釣りに限らず、キャリアは長くても経験の積み重ねだけで、自分の技術を理論的に説明できない、現場で実践実証できない人は 「万年初心者」 と呼ばれます。名人の "勘" ってヤツぁ、状況を瞬時に過去の経験と情報に照らし合わせ、導き出された答ですね。そこには "理" の裏付けがあるから、瞬時の判断が可能なワケ。初心者や万年初心者の当てずっぽうなヤマ勘とは違います。

　ともあれ、釣りは魚という自然の恵みを、誰もがあまねく享受できる遊び。自分も海から川から色んなお魚を頂戴いたしておるワケで、「あぁ、イイ趣味を持ったな」 なぁんて思ったり、「たかがアジを釣るのに竿とリールで７万円、道糸が５０００円、ウキに２５００円、仕掛けが５００円、エサ代１０００円って、魚屋で買えば何匹買えるんだよ！」ってな疑問を感じたり（笑）。道楽なんだから費用対効果だの、コストパフォーマンスだの言い出すのは無粋です。腕に見合わなくても、釣果に見合わなくっても、良い釣り道具を使うって喜びは、釣りの楽しみのひとつなんだし。もちろん、チープなタックルで大物を仕留める、高級魚を仕留める、ってのも釣りの楽しみです。

　釣りの楽しみは色々あるけど、その頂点に位置するのは釣趣でしょうな。海水と淡水、対象魚も釣法も地域性も全てが違っていても、ハリに掛かった魚を釣り上げる面白さだけは共通。釣りの面白さは老若男女を問わず、ビギナーからベテランまで同じですよ、ってお話です。

均霑（きんてん）＝平等に恩恵や利益を受けること。