釣り、ペット、短編小説、雑記、紙誌掲載原稿
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"心から神仏に祈る" という機会は、現代人にとって滅多にある事では無いと思う。葬儀を除けば、お正月の初詣、あるいは受験の合格祈願くらいだろう。まして自分や一族の成功、栄達、供養の為ではない祈りなど、生涯に何度あるだろうか。しかし、その "祈る機会" が来てしまった。先週2月23日の事だ。
我が家に餌を食べに来ていた外猫(=野良猫・♂・推定5歳)のシャーが2〜3日姿を見せないなぁ、と思っていたのだが、犬の散歩の途中で道端でうずくまっているのを発見した。抱き上げてみると、抱きつく力も無く、眼は半開きで瞬膜が出たまま。呼び掛けにも反応しない意識朦朧の状態。垂れ流しの排泄物で悪臭がひどい。時折、苦し気に喘ぐように咳き込んでいる。自力で歩く事も、餌や水を口にする事も出来ない。2週間前に5.7kgあった体重が4.2kgに削痩していた。動物病院に連れて行ったが、「極度の衰弱状態に陥っている。外猫は喧嘩でウィルス性の感染症に罹りやすい。おそらく風邪が元で一気に発症したんだな。せめて自力で立てるとか、餌や水を摂取できる状態じゃないと治療は無理。体力が尽きている状態だと、検査をするにしても、薬を投与するにしても、かえって危険だ」と、先生は首を横に振りながら言う。診立てた病名も、治療法も、回復の見通しも教えてくれない。手遅れ……。先生の眉間に寄った深い縦皺が、言外に『安楽死させてやるのも思いやりだよ』という雰囲気を伝えている。「楽にしてやってくださ……」と、言葉が唇の内側まで出た。その瞬間、診療台に横たわるシャーが「ウァ…ゥ……」と小さく鳴いた。眼球だけ動かしてこちらを見ている。うめき声のような鳴き声に力は無いが、
『自分の生死は自分で決める。他人の意思で決められたくないよ』
と訴えているようだ。苦しくても最期の時まで生きようと、病と闘っているシャー。生に向け、病に懸命に立ち向かっているシャー。胸の奥に重く澱んでいた何かが弾けた。自分の心は決まった。
『シャー。おまえを助けてやる事は出来ないかもしれない。
だけど最期の時まで、俺に出来る精一杯の事はしてやる。
俺もおまえと一緒に病気と闘ってやるよ。約束する。
だ か ら 、 今 は 生 き ろ ! 』
猫用流動食と、流動食や水を口の中に流し込んでやるための注射器ポンプを動物病院で出してもらい、シャーとの共闘(介護)が始まった。尿は濃いオレンジ色。おそらく血尿だろう。腎機能がやられているかもしれない。便がやや黄色っぽい白色なのは胆汁が出ていないのだろう。所々に赤いまだら模様がある。腸内のどこかで出血しているのだろうか。幸い下痢は起こしていないので、2〜3時間おきに20〜30ccほどの水を注射器のポンプで飲ませてやれば、脱水症状に陥る心配はないはず。餌は3〜4時間おきに流動食や卵黄などを与えてやる。しかし、横たわったままでの排尿や排便が辛そうだ。排泄物の痕跡を隠す、猫の本能である砂かきができず、人間に下の世話をしてもらうなんて、シャーの猫としてのプライドはズタズタだろう。それでも、痩せ衰えた小さな身体で、生に向けて闘いを挑み続けている。おまえは勇者だよ、シャー。
シャーの世話だけなら、なんと言う事はない。しかし、我が家には老猫のアビ(18歳)、老犬のロン(13歳)がいる。ウィルス性の感染症だろうから、アビとロンまで罹患してしまう可能性もある。アビやロンと接触しないように、シャーは自分の仕事場に入れて完全隔離状態にした。シャー用の餌容器、水容器などは使用の度に煮沸消毒。自分もシャーの世話をしたら薬用石けんで手洗いして、さらにアルコールスプレーで消毒。アビとロンの世話は家内に任せ、自分はできるだけ接触しないように注意をしている。
今日で介護5日目。シャーの病状は一進一退。3日目の昼頃には自力で起き上がり、排尿や排便が出来るようになったのだが、4日目から再びぐったりと横になったまま。口内やまぶたの内側が少し白っぽい。貧血状態のようだ。精肉店で牛肉と鳥レバーを購入。おかゆ状の軟らかいビーフ&レバーペーストを作って注射器のポンプで与える。美味しかったらしく、横になったままだが口を動かし、小さく唸っておかわりを求める。よし、しっかり喰え。健康な頃のおまえは、小柄だが近所の野良猫の中で一番マッチョでクールな猫だった。もう一度、ボスの座に返り咲け。
食事の世話も、身の回りの世話も、下の世話も、物理的に可能な事はすべて手を尽くしている。俺はおまえに、精一杯の事はしてやると約束した。だから、神仏にもおまえの加護を祈るよ。精一杯、心からおまえの快復を祈ってやる。今、シャーのベッドには、正面と天蓋に薬師瑠璃光如来の尊像が貼り付けてある。延命地蔵尊の御札も部屋に祀ってある。餌の時、水を飲ませる時、下の世話をする時、おまえに触れる時、常に真言を唱えて快復を祈ってる。シャー、あとはおまえ次第だぞ。
我が家に餌を食べに来ていた外猫(=野良猫・♂・推定5歳)のシャーが2〜3日姿を見せないなぁ、と思っていたのだが、犬の散歩の途中で道端でうずくまっているのを発見した。抱き上げてみると、抱きつく力も無く、眼は半開きで瞬膜が出たまま。呼び掛けにも反応しない意識朦朧の状態。垂れ流しの排泄物で悪臭がひどい。時折、苦し気に喘ぐように咳き込んでいる。自力で歩く事も、餌や水を口にする事も出来ない。2週間前に5.7kgあった体重が4.2kgに削痩していた。動物病院に連れて行ったが、「極度の衰弱状態に陥っている。外猫は喧嘩でウィルス性の感染症に罹りやすい。おそらく風邪が元で一気に発症したんだな。せめて自力で立てるとか、餌や水を摂取できる状態じゃないと治療は無理。体力が尽きている状態だと、検査をするにしても、薬を投与するにしても、かえって危険だ」と、先生は首を横に振りながら言う。診立てた病名も、治療法も、回復の見通しも教えてくれない。手遅れ……。先生の眉間に寄った深い縦皺が、言外に『安楽死させてやるのも思いやりだよ』という雰囲気を伝えている。「楽にしてやってくださ……」と、言葉が唇の内側まで出た。その瞬間、診療台に横たわるシャーが「ウァ…ゥ……」と小さく鳴いた。眼球だけ動かしてこちらを見ている。うめき声のような鳴き声に力は無いが、
『自分の生死は自分で決める。他人の意思で決められたくないよ』
と訴えているようだ。苦しくても最期の時まで生きようと、病と闘っているシャー。生に向け、病に懸命に立ち向かっているシャー。胸の奥に重く澱んでいた何かが弾けた。自分の心は決まった。
『シャー。おまえを助けてやる事は出来ないかもしれない。
だけど最期の時まで、俺に出来る精一杯の事はしてやる。
俺もおまえと一緒に病気と闘ってやるよ。約束する。
だ か ら 、 今 は 生 き ろ ! 』
猫用流動食と、流動食や水を口の中に流し込んでやるための注射器ポンプを動物病院で出してもらい、シャーとの共闘(介護)が始まった。尿は濃いオレンジ色。おそらく血尿だろう。腎機能がやられているかもしれない。便がやや黄色っぽい白色なのは胆汁が出ていないのだろう。所々に赤いまだら模様がある。腸内のどこかで出血しているのだろうか。幸い下痢は起こしていないので、2〜3時間おきに20〜30ccほどの水を注射器のポンプで飲ませてやれば、脱水症状に陥る心配はないはず。餌は3〜4時間おきに流動食や卵黄などを与えてやる。しかし、横たわったままでの排尿や排便が辛そうだ。排泄物の痕跡を隠す、猫の本能である砂かきができず、人間に下の世話をしてもらうなんて、シャーの猫としてのプライドはズタズタだろう。それでも、痩せ衰えた小さな身体で、生に向けて闘いを挑み続けている。おまえは勇者だよ、シャー。
シャーの世話だけなら、なんと言う事はない。しかし、我が家には老猫のアビ(18歳)、老犬のロン(13歳)がいる。ウィルス性の感染症だろうから、アビとロンまで罹患してしまう可能性もある。アビやロンと接触しないように、シャーは自分の仕事場に入れて完全隔離状態にした。シャー用の餌容器、水容器などは使用の度に煮沸消毒。自分もシャーの世話をしたら薬用石けんで手洗いして、さらにアルコールスプレーで消毒。アビとロンの世話は家内に任せ、自分はできるだけ接触しないように注意をしている。
今日で介護5日目。シャーの病状は一進一退。3日目の昼頃には自力で起き上がり、排尿や排便が出来るようになったのだが、4日目から再びぐったりと横になったまま。口内やまぶたの内側が少し白っぽい。貧血状態のようだ。精肉店で牛肉と鳥レバーを購入。おかゆ状の軟らかいビーフ&レバーペーストを作って注射器のポンプで与える。美味しかったらしく、横になったままだが口を動かし、小さく唸っておかわりを求める。よし、しっかり喰え。健康な頃のおまえは、小柄だが近所の野良猫の中で一番マッチョでクールな猫だった。もう一度、ボスの座に返り咲け。
食事の世話も、身の回りの世話も、下の世話も、物理的に可能な事はすべて手を尽くしている。俺はおまえに、精一杯の事はしてやると約束した。だから、神仏にもおまえの加護を祈るよ。精一杯、心からおまえの快復を祈ってやる。今、シャーのベッドには、正面と天蓋に薬師瑠璃光如来の尊像が貼り付けてある。延命地蔵尊の御札も部屋に祀ってある。餌の時、水を飲ませる時、下の世話をする時、おまえに触れる時、常に真言を唱えて快復を祈ってる。シャー、あとはおまえ次第だぞ。
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