釣り、ペット、短編小説、雑記、紙誌掲載原稿
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シャーの介護10日目。昨夜未明から呼吸音にゼェゼェと雑音が混じり、口を開いて息をし始めた。部屋を暗くして一晩中付き添っていたが、シャーは苦しい息を続けながらも、懸命に生きている。朝9時、動物病院に運び込み診察を受けると、「肺に水が溜まっている。これを抜く治療が必要だけど、その治療薬に耐える力があるかどうか……」と言われてしまった。放っておいても呼吸不全に陥るだろうし、どちらにせよこの呼吸では心臓への負担も大きい。ならばもう一度博打を打つしかない。「この治療に(シャーの)心臓が持ってくれるかどうか、非常に厳しいよ。いいね」と念を押された。ほんのわずかでも可能性があるなら賭けてみよう。「シャーの生命力次第ですよね。お願いします」。治療薬2本、栄養剤1本の合計3本を注射。「これで肺の水が抜け、夕方までに呼吸が戻るれば持ち直す見込みはある。夕方にもう一度連れてらっしゃい。だけど、キツイ治療なので夕方まで持つかどうか……。この子(シャー)次第だね。しかも、野良猫で7〜8歳はかなりの高齢だし」。シャーが7〜8歳? 5歳位だと思っていた。先生に確認すると「歯のすり減り具合や、歯茎の後退具合でおおよその年齢はわかるよ。この子は7歳か8歳。5年生きれば御の字の野良にしては長命だ」。
10時に帰宅。時折、シャーの全身にビクッと痙攣が走る。心臓が負担に耐えかねているようだ。水を与えてやる。一口だけ飲み込んだ。10時30分、シャーが起き上がった。ベッドから抜け出し、部屋の中をヨロヨロと歩き回る。振り下ろされてくる鎌から身を避けているようだ。へたり込んでオシッコを漏らしてしまった。シャーをベッドに戻し床掃除。部屋全体にペットシートを敷き詰める。11時30分、またベッドから抜け出し、ヨロヨロと水入れに向かい、自力で一口飲んだ。そのまま床に力無く横たわり、肩で息をしながら苦しげに喘いでいる。スポーツ用の携帯酸素を吸わせ、「シャー、頑張れ!」と呼び掛けると、苦しい息の下で「ゥァ……」と応えてくれた。そっと抱き上げてベッドに戻す。
11時40分頃、自分がトイレから戻ると、シャーがベッドを抜け出して床に倒れていた。心肺停止、瞳孔拡大。急いで人工呼吸。猫は雑菌だらけと言うが、かまってなどいられない。仰向けに抱きかかえて気道を確保、鼻と口を自分の口で覆って、2回息を吹き込んでやる。続いて1分間に60回のペースで心臓マッサージ。人工呼吸、心臓マッサージと猫用の心肺蘇生を5セット繰り返したが、午前11時45分、シャーは旅立った。自力で歩いて飲みに行った一口の水。あれは末期の水を飲みに行ったのか。弛緩したシャーの身体を抱き上げ、「よく頑張った。立派な最期だったよ、シャー」と呼び掛けると、「旦那さん。水臭ぇ真似をしちまいやしたが、あっしは元々、天涯孤独の野良猫でござんす。逝く時も独りで逝くと決めてたんでさぁ。ずいぶんとお世話ンなりやした。礼を言わしてもらいやす。ありがとうござんした」と、シャーが大きく開いた瞳で自分を見つめ返していた。苦悶の表情はない。瞬膜も出ていない。しっかりと目を見開き、現世の様を瞳の奥に焼き付けているようだ。まさにこれから勇躍と旅立っていく者の顔だ。涙が止まらない。シャーが旅立った悲しみだけではない。シャーのあまりに見事な病との闘いっぷりと、立派な最期に感動して、身体の震えと嗚咽が止められない。嗚咽はやがて慟哭に変わった。
13時30分、シャーの旅立ちを惜しんで家内と一緒にひとしきり泣きじゃくり、気持ちが少し落ち着いた。エンジェルケアをしてやろう。野良猫のシャーはおそらく、生涯一度もお風呂に入った事が無いはず。旅の道中や、向こうへ行ってから「おまえさん、臭いよ」なんて仲間はずれにされたのでは可哀想だ。バスルームに運び、シャンプーで念入りに洗ってやる。おや? シャーよ、おまえはずいぶんと綺麗なキジトラ白だったんだね。ありゃ、こんな所にもケンカ傷のハゲがある。おいおい、ずいぶんとヤンチャしてたんだな。なぁ、シャー。向こうでペル、ライダー、チー、チャミ達(我が家で飼っていた猫達)に会ったら、俺と家内は元気でやってるって伝えてくれよ。よし、全身キレイになった。どうだ、サッパリしただろう。今、乾かしてやるからな。バスタオルで丁寧に水気を拭き取り、ブラシを掛けながらドライヤーで念入りに乾かしてやる。病み疲れしていたシャーの毛並みが、元気な頃のようにフワフワになっていく。うんうん、おまえ、グッと男前が上がったぞ。ふと気付くとシャーが目を閉じている。そっか、気持ち良かったか。シャーのエンジェルケアが終わると、トコトコとアビがやってきた。シャーの顔をのぞき込んでいる。あぁ、アビ、おまえもシャーを見送ってやるのか。シャーよ、我が家の太夫猫もお見送りに来たぞ。なんとも粋な旅立ちじゃないか。
ダンボールで作った棺に厚手の白いバスタオルで包んだシャーを納め、マタタビを抱かせ、日向ぼっこの時にシャーが眺めていたビオラの花を入れてやった。ダンボールで作った祭壇に安置してやる。まるで眠っているようなシャーの安らかな顔。もう、苦しげな息はしていない。安らかなシャーの永遠の寝顔に涙がこぼれた。シャーの好きだった猫缶、水を祭壇に供え、お香を焚いてやる。いってらっしゃい、シャー。またどこかで会ったら、また友達になろう。半年間、楽しかったよ。ありがとう、シャー。
10時に帰宅。時折、シャーの全身にビクッと痙攣が走る。心臓が負担に耐えかねているようだ。水を与えてやる。一口だけ飲み込んだ。10時30分、シャーが起き上がった。ベッドから抜け出し、部屋の中をヨロヨロと歩き回る。振り下ろされてくる鎌から身を避けているようだ。へたり込んでオシッコを漏らしてしまった。シャーをベッドに戻し床掃除。部屋全体にペットシートを敷き詰める。11時30分、またベッドから抜け出し、ヨロヨロと水入れに向かい、自力で一口飲んだ。そのまま床に力無く横たわり、肩で息をしながら苦しげに喘いでいる。スポーツ用の携帯酸素を吸わせ、「シャー、頑張れ!」と呼び掛けると、苦しい息の下で「ゥァ……」と応えてくれた。そっと抱き上げてベッドに戻す。
11時40分頃、自分がトイレから戻ると、シャーがベッドを抜け出して床に倒れていた。心肺停止、瞳孔拡大。急いで人工呼吸。猫は雑菌だらけと言うが、かまってなどいられない。仰向けに抱きかかえて気道を確保、鼻と口を自分の口で覆って、2回息を吹き込んでやる。続いて1分間に60回のペースで心臓マッサージ。人工呼吸、心臓マッサージと猫用の心肺蘇生を5セット繰り返したが、午前11時45分、シャーは旅立った。自力で歩いて飲みに行った一口の水。あれは末期の水を飲みに行ったのか。弛緩したシャーの身体を抱き上げ、「よく頑張った。立派な最期だったよ、シャー」と呼び掛けると、「旦那さん。水臭ぇ真似をしちまいやしたが、あっしは元々、天涯孤独の野良猫でござんす。逝く時も独りで逝くと決めてたんでさぁ。ずいぶんとお世話ンなりやした。礼を言わしてもらいやす。ありがとうござんした」と、シャーが大きく開いた瞳で自分を見つめ返していた。苦悶の表情はない。瞬膜も出ていない。しっかりと目を見開き、現世の様を瞳の奥に焼き付けているようだ。まさにこれから勇躍と旅立っていく者の顔だ。涙が止まらない。シャーが旅立った悲しみだけではない。シャーのあまりに見事な病との闘いっぷりと、立派な最期に感動して、身体の震えと嗚咽が止められない。嗚咽はやがて慟哭に変わった。
13時30分、シャーの旅立ちを惜しんで家内と一緒にひとしきり泣きじゃくり、気持ちが少し落ち着いた。エンジェルケアをしてやろう。野良猫のシャーはおそらく、生涯一度もお風呂に入った事が無いはず。旅の道中や、向こうへ行ってから「おまえさん、臭いよ」なんて仲間はずれにされたのでは可哀想だ。バスルームに運び、シャンプーで念入りに洗ってやる。おや? シャーよ、おまえはずいぶんと綺麗なキジトラ白だったんだね。ありゃ、こんな所にもケンカ傷のハゲがある。おいおい、ずいぶんとヤンチャしてたんだな。なぁ、シャー。向こうでペル、ライダー、チー、チャミ達(我が家で飼っていた猫達)に会ったら、俺と家内は元気でやってるって伝えてくれよ。よし、全身キレイになった。どうだ、サッパリしただろう。今、乾かしてやるからな。バスタオルで丁寧に水気を拭き取り、ブラシを掛けながらドライヤーで念入りに乾かしてやる。病み疲れしていたシャーの毛並みが、元気な頃のようにフワフワになっていく。うんうん、おまえ、グッと男前が上がったぞ。ふと気付くとシャーが目を閉じている。そっか、気持ち良かったか。シャーのエンジェルケアが終わると、トコトコとアビがやってきた。シャーの顔をのぞき込んでいる。あぁ、アビ、おまえもシャーを見送ってやるのか。シャーよ、我が家の太夫猫もお見送りに来たぞ。なんとも粋な旅立ちじゃないか。
ダンボールで作った棺に厚手の白いバスタオルで包んだシャーを納め、マタタビを抱かせ、日向ぼっこの時にシャーが眺めていたビオラの花を入れてやった。ダンボールで作った祭壇に安置してやる。まるで眠っているようなシャーの安らかな顔。もう、苦しげな息はしていない。安らかなシャーの永遠の寝顔に涙がこぼれた。シャーの好きだった猫缶、水を祭壇に供え、お香を焚いてやる。いってらっしゃい、シャー。またどこかで会ったら、また友達になろう。半年間、楽しかったよ。ありがとう、シャー。
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