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釣り、ペット、短編小説、雑記、紙誌掲載原稿
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 手術当日の14日。病院の起床時刻はドコも同じく、午前6時と早い。看護師さんが各室の照明を点灯し、トイレ介助が必要な人には声を掛けて回る。自分は今朝は絶飲食なので、水分の摂取も薬を飲む最小限以外は禁止。自分は服用薬はないから、歯磨きと洗面だけ。午前8時30分、ガンマ線専門の看護師さんが来た。

 「眠釣様の着用してらっしゃる下着は、吸湿発熱のヒートテックとかですか?」

 「はい、東レのヒートファクトです」

 「ガンマ線には発熱繊維はダメなんです。普通のコットン製はありますか?」

 「ありますよ。それに着替えておきます」

 「では、術着はこちらのガンマ着をお召しください。9時15分手術開始になります」

 開頭手術に比べたら、ガンマナイフによる放射線手術は、患者の肉体的な負担はゼロに等しい。自分は右脳前頭葉の1カ所なんだが、午前9時7分に廊下でストレッチャーに乗せられ、予備麻酔の精神安定剤の点滴と、痛み止めの筋肉注射3cc(コレが痛ッてェ注射なんだ、また)を打ってから、放射線外科手術室へ。D病院では自分で歩いて手術室まで行くのだが、脳外科の場合は転倒の心配があるため、ストレッチャーで運ばれるワケだ。術後処理の頭部固定フレームを外して病室に戻るまで3時間ちょうど。手術は午前9時15分スタートで、病室に戻ったのが午後12時7分だった。自分としてはガンマナイフ手術の様子を、シッカリと記憶しておいて闘病リポートにまとめようと思っていたんだが、ガンマ線照射中に動かないように、睡眠薬で眠らされてしまい、気付いた時には手術は終了していた。なんとももったいない……が、ガンマ線照射中は身動き一つしてはいけない。眠らせてしまうのが一番なのだ。全身麻酔とは違い、睡眠薬で眠らせるだけなんだけどね。患者側にしてみればどっちも同じだけどさ。

 頭部固定フレームを外す順番を待っている間に、オシッコがしたくなってきた。看護師さんにその旨を伝えると、フレーム付けたままトイレに行っても良いと言う。看護師さんに付き添われて、頭蓋骨にガッチリと食い込んだフレームを付けたままトイレへ。その姿を見た周りの人が一瞬ギクリとなる(笑)。そりゃそうだろう、まるで中世ヨーロッパの拷問受けてるみたいなんだモン。まだ麻酔が効いているのと、睡眠薬の点滴が効いているのとで、ぼんやりとした意識の中、トイレを済ませて手術準備室へと戻る。

 ところで、患者の肉体的負担はゼロに等しいと書いたが、それはあくまでも ”開頭手術に比べたら” の話であって、フレーム取り付け時は局所麻酔の注射とフレーム固定ネジが頭蓋骨に食い込むまで締め上げられるし、もっと痛いのが手術後のフレームを外す時だ。もう、麻酔が切れ始めているから、痛いの何のって、頭が割れそうに痛い。これが運良く痛点を避けた位置に当たっていた人は、さほど痛くないらしいが、自分は大当たりの痛点直撃だった……。

 鎮痛剤のロキソニンを一錠飲んだが、こんなもんで効くはずもなく、ナースコールで看護師さんを呼んで、ボルタレン坐薬を入れてもらう。が、看護師さんが持ってきたのは25mm。「ダメだよ~、赤いパッケージの50mmにしてェ~」 の懇願も空しく、25mmを突っ込まれてしまった。が、25mmでもさすがにボルタレン坐薬。効いてきましたよ。まだ体内に残っていた睡眠薬点滴の効果と相まって、眠くなってきた。ウトウトとまどろんでいたら、担当の看護師さんが起こしに来てくれた。ベッド上安静の1時間が経過していた。

 「眠釣さ~ん、お手洗い、大丈夫ですか?」

 「はい、一人で行けると思います」

 「念のため、トイレの前まで一緒に行きますね」

 歩いていてもよろけないし、トイレも一人でちゃんとできた。看護師さんも術後容態を確認して安心したようだ。部屋に戻ると、電子レンジで温め直した昼食が用意されていた。朝から絶飲食だったので、蒸した魚でも美味しかった。そして何よりも、無事に手術が終わった喜びがこみ上げてきた。だってさ、脳腫瘍だよ、脳腫瘍。脳みそに妙なデキモノがで出来ちゃって、意識障害になったり、言語障害になったり、身体が麻痺しちゃったりするんだぜ。それがチョイとばかし痛いとは言え、わずか3時間、安静時間を入れても4時間で治せるンだよ。

 日は明けて15日。午前9時に副主治医のT川先生がお見えになり、昨日のガンマ線照射による手術の内容と、再発の可能性、効果不発の可能性などのリスク説明と、効果発現時期、脳腫瘍の縮小・消滅時期を説明してくださった。自分の脳腫瘍は2cmを超えていたので再発の可能性は2倍。っつーても、5%が10%って事だから、90%はセーフじゃん。

 午前10時。入院していた3階の看護師さん全員のお見送りを受けて退院。会計で手術費用(全額自費だったら60万円だが、高額療養費負担限度額+食事代+テレビ代)を支払い、家内の運転で一旦自宅へ。無事に手術を終え、一人で歩いて車に乗り込むのを見た家内が微笑んでいる。特段の言葉を交わす気になれない。
 「 無 事 に 終 わ っ た ね  、 ヨ カ ッ タ ♪ 」
思いが伝わってきたし、こちらからも同じ思いが伝わっただろう。

 帰路、肉屋さんに立ち寄って、少し贅沢なお肉を買い求める。脳腫瘍のガンマナイフ手術成功を祝って、お昼はすき焼きだ。二人分500gもあれば充分。家内の作るすき焼きをガッツリ食べて、近所の家電量販店へ。モバイルノートPC用の外付けコンパクトハードディスク(500GB)と電動歯ブラシを購入。明日から抗ガン剤治療の第2クールだ。入浴を済ませてD病院へ。14時15分、D病院に到着。個室が空いていれば……、空いていた! やった、これでまた消灯時間関係無しにお仕事が出来る!

 M看護師長さんがお迎えに来てくださり、前とは別の個室へ。ふふ、少し南向きになってるから、冬場は暖かくて良いぞ。しかし、放射線照射による施術とは言え、脳腫瘍の手術を受けてきたばかりで、すき焼きを食い、家電店で買い物をし、風呂にも入って、再び前の病院に戻ってくるとは……。なんだか夢の中の3日間だったような気がしますよ、ってお話でした。

 あぁ、実はこの年末年始も、自分は病院で過ごさなければならない。抗ガン剤治療の第2クールで、もっとも白血球が減少してしまうであろう時期が、お正月と重なってしまうのだよ。白血球がスカスカ状態でシャバに出るのは危険すぎるモンね。

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YASU ・居眠釣四郎・眠釣
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男性
自己紹介:
釣りと動物と時代劇、時代小説をこよなく愛する、腰は低いが頭が高い、現代版「無頼浪人」にて候。
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