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釣り、ペット、短編小説、雑記、紙誌掲載原稿
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 当方は40代の釣りオヤジ。どう考えても、見知らぬ10代や20代前半の若者達と親しく話の出来る存在ではない。こちらも気恥ずかしいし、相手方も突然話しかけられたら訝しむだろう。そこで「釣りは世代を超えて人の心を捉える魅力あるレジャーなのか?」を試す実験をしてみた。きっかけは愛知県常滑市の多屋海岸で、小学生の女の子二人組に「おじさん、釣りって面白い?」と声を掛けられた事。突然の事で戸惑ってしまったが、「楽しいよ」と答えて竿を握らせ、釣れた魚を持たせてあげると、二人が大喜びしたからだ。

 そこで、愛知県美浜町の浜辺で19歳の女子大生二人組に「釣りしてみたい?」と声を掛けてみた。答は声を揃えて「やってみたーい!」。当日は潮が引いてしまって釣りにならなくなっていたため、後日、サヨリ釣り、ハゼ釣りと経験させてあげたが、二人とも釣りの楽しさに夢中になるとともに、身近な伊勢湾の豊かさに驚いていた。

young 次に試みたのは、タトゥー(入れ墨)を入れた強面の雰囲気プンプンの青年2人と、肌の露出も多く、派手目のメイクのお嬢さん3人という、街中だったら目を合わせるのも憚ってしまいそうな、いわゆる"渋谷系"の若者5人組。「やぁ、若い衆。ちょっと釣りをしてみんかね?」と声を掛けてみた。「あ、俺はガキん時にやった事ある」。「あぁ、バス釣りならやった事あるけど、投げ釣りは初めてだな」。「え~、マジで? 釣りなんてやった事ないしィ~」。「アタシやってみたいかも」。「おじさんが餌付けてくれるならやりたい」。結果は……、左の写真の通り。見知らぬ釣りオヤジに声を掛けられ、生まれて初めて釣り竿を持ち、そして自分で魚を釣った彼女たちの輝くような笑顔と歓声。海辺で楽しむという共通目的を持った交流が成立した瞬間だ。別れ際に彼等が笑顔で発した言葉は、「おじさん、ありがとうございました」。そして、丁寧にお辞儀までしてくれた。

 海は人の心に開放感をもたらし、世代や性別を超えて交流を促してくれる。なぜか? 海辺では波の音、潮風でボソボソと話していたのでは会話が成立しづらい。いつもよりも大きな声で、ハッキリと話をしなければならない。いきおい、表情も豊かになり、相手の感情や想いが読み取りやすくなるからだろう。これは都会や市街地の騒音のように、不快な音の中での大声と違って、潮騒や潮風は爽快感を伴っているからこそ。しかし、心を開いただけではシャイな現代人には足りない。会話のきっかけとなるツールが必要なのだ。そのツールとして、年齢、性別、体力の有無を問わず、多額の初期投資の必要もなく、誰もが楽しめる水辺のレジャーとして釣りは最適なのだ。

-「波となぎさ」'05年8月31日発刊 164号 掲載稿より抜粋・加筆-

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YASU ・居眠釣四郎・眠釣
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釣りと動物と時代劇、時代小説をこよなく愛する、腰は低いが頭が高い、現代版「無頼浪人」にて候。
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