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釣り、ペット、短編小説、雑記、紙誌掲載原稿
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 愛犬ロンが寝たきり状態に陥った。右後肢は昨日から機能を失ってブランブラン状態。老化による腰椎の障害が顕在化してしまったのだ。自力では立ち上がる事も、水を飲む事さえも出来ない。エサは流動食(カロリーメイトのようなペット用流動食)をスポイトで口に流し込み、排泄はモゾモゾをむずかったら抱きかかえて外へ連れて行って、植え込みや電柱の際で身体を支えてやりながら済ませる。ロンは室内のペットトイレでは絶対に用足しをしないので、グラグラの身体を抱えてでも外へ連れて行かざるを得ないのだ。



 午後1時。父が日課にしているロンの散歩に来てくれたが、雨の中を抱きかかえて連れて行くのは無理。玄関先に運び、外の空気を吸わせてやるだけにした。「これは……。もう、ロンとはお別れになりそうだな……」と、父もロンの旅立ちを覚悟した様だ。父の腕に頭を預け、ボンヤリと外を眺めるロンの目には、すでに力が宿っていない。

 午後5時過ぎ。ロンは呼びかけにも反応しない危篤状態に陥った。我が家に引き取る前、12年間ロンを可愛がってきた母を呼んだ。「ロンが息を引き取りそうだ。会いに来てやって」。心臓の鼓動は不整脈気味で、時折ビクッと痙攣を起こす。呼吸は浅く早い。シャーを看取った時と同じ、末期の状態だ。母が到着するまで、なんとか保ってくれと祈る様な気持ちで、スポーツ用酸素缶で10秒間の酸素吸入。少し呼吸が落ち着いた。母が駆けつけ、「ロン、よく頑張ったね。もう、頑張らなくていいよ。苦しくなる前に逝ってもいいからね」と語りかける。涙はない。今日まで頑張ったロンを労ってやっている。

 虚ろな目をしていたロンが、急に「ブフォッ」と鼻を鳴らして首を起こした。目に力が宿っている。ロンが母に、「おおおッ、危のうござった。手前、今まさに三途の川を渡り掛けて居り申した。かように横になったままで申し訳ござらぬ。母者殿、お先に参る事になりそうなれど、まだ痛みや苦しみは感じてはおりませぬ故、ご案じ召さるな」と語っている様だ。驚いた顔でロンを見詰めていると、「YASUの殿。貴家に仕官して以来、一身を以て殿と奥方様にお仕え致して参りましたが、病に次ぐ病、いかいご迷惑をお掛け致しておりまする。この先、某(それがし)がお見苦しい様を呈す様なれば、介錯の儀、願い奉ります」とでも言う様に、自分に目を向けてくれた。相判った。もしもお主が苦しみ喘ぐ様な事になったら、すぐに動物病院に連れて行ってやる。お主の尊厳は守ってやるから安心せい。何もかも、覚悟しておるぞ。

 日付が変わって、現在午前1時15分。ロンはまだ生きている。呼吸も落ち着き、静かに眠っている。あぁ、このまま静かに逝かせてやりたい……。

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プロフィール
HN:
YASU ・居眠釣四郎・眠釣
性別:
男性
自己紹介:
釣りと動物と時代劇、時代小説をこよなく愛する、腰は低いが頭が高い、現代版「無頼浪人」にて候。
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