釣り、ペット、短編小説、雑記、紙誌掲載原稿
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え〜っと、先ほど「損害保険会社の者」を名乗る男の人から電話があって、オイラが追突事故を起こしたそうです。被害車両のチャイルドシートには幼い女の子が乗っていて、顔に何針か縫うケガを負ってしまったそうです。幸い、被害側も示談には応じてくれるらしいけど、"誠意" を示しておいた方が示談交渉がスムーズに行くそうで、被害者の指定する口座に "誠意を形で示す額のお金" を振り込んでおいてはいかがでしょうかと……。電話の向こうではオイラが非常に取り乱して泣いています。
いや〜、文字通り "他人事じゃない" もんなぁ。他ならぬオイラ本人が事故を起こしちゃったのかぁ。そりゃ大変な事だ、一大事だ。早速、銀行に行ってATMの前で警察官と銀行員の立ち会いの上で、被害者の携帯電話に電話を掛けて振込指定口座番号を聞きました。ところが残念な事に、被害者の方の口座はその場で凍結されて、"誠意を形で示す額のお金" の振り込みが出来なくなっちゃったんですよォ。困ったなぁ。電話の向こうには事故を起こして、今もすすり泣いているオイラが居るのになぁ。いや〜、困った、困った。いったい、どうすればいいんでしょ?
>振り込め詐欺犯ご一同様
※この話はフィクションかもしれないです。 (・∀・)ニヤニヤ
いや〜、文字通り "他人事じゃない" もんなぁ。他ならぬオイラ本人が事故を起こしちゃったのかぁ。そりゃ大変な事だ、一大事だ。早速、銀行に行ってATMの前で警察官と銀行員の立ち会いの上で、被害者の携帯電話に電話を掛けて振込指定口座番号を聞きました。ところが残念な事に、被害者の方の口座はその場で凍結されて、"誠意を形で示す額のお金" の振り込みが出来なくなっちゃったんですよォ。困ったなぁ。電話の向こうには事故を起こして、今もすすり泣いているオイラが居るのになぁ。いや〜、困った、困った。いったい、どうすればいいんでしょ?
>振り込め詐欺犯ご一同様
※この話はフィクションかもしれないです。 (・∀・)ニヤニヤ
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毎年、冬から春にかけて新製品の出る頃になると猛烈に物欲が湧き上がり、PC・ハイテク家電・喫煙用具・居合刀・釣具などを衝動買いをしてしまう。欲しいとなると後先考えずに購入してしまうのだが、今年は釣具で痛い目に遭ってしまった。店頭在庫のない投竿とリールを取り寄せてもらったのだが、届いた商品を見て愕然とした。
まず、投竿。税抜き定価3万2千5百円の品で、高級品とは言えないまでも、仕上げのまずさや疵に目をつぶれる価格ではない。3本継ぎの竿で、竿の各部に施された滑り止めスエード調の特殊塗装がウリの竿なのだが、この特殊塗装の全てに妙なシミが浮き上がっており、しかも元竿の中程にはかなり目立つ擦り疵まで付いている。中古品やアウトレット商品なら仕方なかろうが、メーカー取り寄せの新品がコレでは納得がいかない。当然、お店の段階で返品して良品に入れ替えさせるように話を付けてきた。
その翌日、別の釣具店に発注しておいたリールが届いた。このリールも税抜き定価2万2千8百円と、製品の質や仕上げに妥協したくない金額の品だ。箱を見て「あれ? 取り寄せ品なのにずいぶんと箱が傷んでるな……」と思った。なんとなく嫌〜な予感を覚えつつ、本体を取り出してみる。あ〜ッ、やっぱり! スプールもボディも指紋(手脂)がベタベタと付いている。コレは明らかに『展示中古品』だ。付属品をチェックしてみると、スプールワッシャーと取り付けガタ防止用のゴムシートも入っていない。あ〜ぁ、またかよ……。これまた釣具店にクレーム連絡。チャンとした新品に交換と言う事になったが、なにしろメーカー欠品中の商品だから再入荷はいつになるかわからない。
2つのメーカー、2軒の釣具店で連続してクレーム。自分の運の悪さにもウンザリするが、原因はすべてメーカーと釣具店の検品漏れ。悪く言えば "手抜き" が原因だ。メーカーは製品完成時と出荷段階で、釣具店は着荷段階と顧客に引き渡す段階で商品をチェックするのは当たり前。自分も商社と小売業という流通業界に身を置いた経験があるが、顧客の信頼を得るために検品は絶対に欠かせない作業。釣具業界は今、メーカーも釣具店も業績の低迷で汲々としている。経営効率化、経費削減は結構な事だが、肝心の製品の質や顧客の信頼まで切り捨ててしまう様では、まさに『窮すれば濫す』の言葉通りだ。業界の低迷が長引いているのもむべなるかな……。
まず、投竿。税抜き定価3万2千5百円の品で、高級品とは言えないまでも、仕上げのまずさや疵に目をつぶれる価格ではない。3本継ぎの竿で、竿の各部に施された滑り止めスエード調の特殊塗装がウリの竿なのだが、この特殊塗装の全てに妙なシミが浮き上がっており、しかも元竿の中程にはかなり目立つ擦り疵まで付いている。中古品やアウトレット商品なら仕方なかろうが、メーカー取り寄せの新品がコレでは納得がいかない。当然、お店の段階で返品して良品に入れ替えさせるように話を付けてきた。
その翌日、別の釣具店に発注しておいたリールが届いた。このリールも税抜き定価2万2千8百円と、製品の質や仕上げに妥協したくない金額の品だ。箱を見て「あれ? 取り寄せ品なのにずいぶんと箱が傷んでるな……」と思った。なんとなく嫌〜な予感を覚えつつ、本体を取り出してみる。あ〜ッ、やっぱり! スプールもボディも指紋(手脂)がベタベタと付いている。コレは明らかに『展示中古品』だ。付属品をチェックしてみると、スプールワッシャーと取り付けガタ防止用のゴムシートも入っていない。あ〜ぁ、またかよ……。これまた釣具店にクレーム連絡。チャンとした新品に交換と言う事になったが、なにしろメーカー欠品中の商品だから再入荷はいつになるかわからない。
2つのメーカー、2軒の釣具店で連続してクレーム。自分の運の悪さにもウンザリするが、原因はすべてメーカーと釣具店の検品漏れ。悪く言えば "手抜き" が原因だ。メーカーは製品完成時と出荷段階で、釣具店は着荷段階と顧客に引き渡す段階で商品をチェックするのは当たり前。自分も商社と小売業という流通業界に身を置いた経験があるが、顧客の信頼を得るために検品は絶対に欠かせない作業。釣具業界は今、メーカーも釣具店も業績の低迷で汲々としている。経営効率化、経費削減は結構な事だが、肝心の製品の質や顧客の信頼まで切り捨ててしまう様では、まさに『窮すれば濫す』の言葉通りだ。業界の低迷が長引いているのもむべなるかな……。
お彼岸を目前に控え、名古屋はすっかりと春めいた日が続いている。5日(啓蟄)以来、空を見上げる事が多くなったのだが、空の色、空気の匂い、陽差し、すべてが春めいてきている。花粉症の方々には誠にツライ時期とも言えるワケだが……。これだけ暖かくなってくると、釣りの虫もモゾモゾと蠢き出してくる。狙いはノッコミのクロダイ。さすがに孕みの魚をバカスカ釣ろうなどとは思っていないが、年無し(ねんなし)と呼ばれる50cmオーバーの年齢不詳な大物に出会える確率が高い時期。まぁ、心配しなくても自分にはバカスカとクロダイが釣れるなんて事はないのだけれど。そしてスズキが稚鮎やバチ抜けのイソメを食いに回遊してくる時期。コチラも40〜60cmくらいの釣って楽しく、食べて美味しいセイゴからフッコサイズが揃う。
ともあれ、陸上はすっかり春の陽気に心浮かれる時期だが、実は海の中は今が冬真っ盛り。GW開けくらいまでは水温が低く、年間を通して一番魚が釣れない時期に当たる。この厳しい時期に盛期を迎えるのが、クロダイとスズキなのだ。で、この二大ターゲットを同時に狙ってしまおうという、よく言えば効率的で合理的、悪く言えば欲張りな釣法が『誘いぶっ込み釣り』。ボケジャコ、カメジャコ、フクロイソメ、イワイソメなどを餌に、磯竿2号4.5〜5.3m、小型スピニングリール、道糸3号、ゴム管付き中通しオモリ3号、ハリス1.5号(夜は2号)1m、チヌ針3号という非常にシンプルな道具立て。2〜3本の竿を置き竿にして狙う人も多いが、自分は「誘って喰わせ、アタリを取ってアワセて釣る」のが釣りに対する信条なので、男度胸の一本竿、手持ちで誘う。だから "誘いぶっ込み" と称している。
この釣りの面白い所は、運の要素が非常に高い事。なにしろ、餌を付けて投げ込んだ後は、腹を空かせた魚が通りかかってくれる、あるいは目に付くように誘ってやるだけ。ポイント選び、エサ付けや誘いのコツもあるが、こんな事は一度教えてもらえば、誰だって理解出来る。それが証拠に、釣友のK江氏やT辺氏は "初体験" でフッコやマゴチを仕留めている。遠投の必要もなく、ビギナーもベテランもチャンスは平等。冬場は夕マヅメ(日没の頃)から午後9時くらいまでの半夜釣りが有利だが、春になると日中でも喰ってくる。春の大潮・中潮はお昼頃に干潮となるので、午前の下げ潮と午後の上げ潮と、潮の動きのあるチャンスタイムが2回ある。さぁて、今年も一発狙いに竿を担いで出掛けてみるか。ちなみに自分の道具立ては、
【ロッド】宇崎日新 スーパースクエア RX ISO 2号遠投 4.5m(ガイドをSiCに交換)
宇崎日新 ナチュラルアート Super 究極 ISO 2号 5.3m
ダイワ スーパーIL ブレイゾンマルチDRY 1.5号 4.5-5.2m
【リール】シマノ アルテグラ2000(ベアリング増設)
シマノ アルテグラ2500(ベアリング増設)
シマノ ツインパワー2500
リョービ ザウバー1500Zi
【ライン】ゴーセン フルキャスター3号
ヨツアミ パワーキャスト投PE1.5号
【オモリ】ゴム管付きナツメ型中通し3号
【ハリス】クレハ シーガーエース 1.5号、1.7号、2号
【ハ リ】カワセミ針 チモト革命チヌ3号(特注黒針)
ガマカツ チヌ3号(銀)
カツイチ ボケ専用チヌ3号(黒)
【エ サ】カメジャコ(小指〜人差指サイズ:2時間分で15匹)
※誘いぶっ込み釣りのノウハウは http://fishingcraze.fc2web.com/sasoibukkomi.html を参照してください。
ともあれ、陸上はすっかり春の陽気に心浮かれる時期だが、実は海の中は今が冬真っ盛り。GW開けくらいまでは水温が低く、年間を通して一番魚が釣れない時期に当たる。この厳しい時期に盛期を迎えるのが、クロダイとスズキなのだ。で、この二大ターゲットを同時に狙ってしまおうという、よく言えば効率的で合理的、悪く言えば欲張りな釣法が『誘いぶっ込み釣り』。ボケジャコ、カメジャコ、フクロイソメ、イワイソメなどを餌に、磯竿2号4.5〜5.3m、小型スピニングリール、道糸3号、ゴム管付き中通しオモリ3号、ハリス1.5号(夜は2号)1m、チヌ針3号という非常にシンプルな道具立て。2〜3本の竿を置き竿にして狙う人も多いが、自分は「誘って喰わせ、アタリを取ってアワセて釣る」のが釣りに対する信条なので、男度胸の一本竿、手持ちで誘う。だから "誘いぶっ込み" と称している。
この釣りの面白い所は、運の要素が非常に高い事。なにしろ、餌を付けて投げ込んだ後は、腹を空かせた魚が通りかかってくれる、あるいは目に付くように誘ってやるだけ。ポイント選び、エサ付けや誘いのコツもあるが、こんな事は一度教えてもらえば、誰だって理解出来る。それが証拠に、釣友のK江氏やT辺氏は "初体験" でフッコやマゴチを仕留めている。遠投の必要もなく、ビギナーもベテランもチャンスは平等。冬場は夕マヅメ(日没の頃)から午後9時くらいまでの半夜釣りが有利だが、春になると日中でも喰ってくる。春の大潮・中潮はお昼頃に干潮となるので、午前の下げ潮と午後の上げ潮と、潮の動きのあるチャンスタイムが2回ある。さぁて、今年も一発狙いに竿を担いで出掛けてみるか。ちなみに自分の道具立ては、
【ロッド】宇崎日新 スーパースクエア RX ISO 2号遠投 4.5m(ガイドをSiCに交換)
宇崎日新 ナチュラルアート Super 究極 ISO 2号 5.3m
ダイワ スーパーIL ブレイゾンマルチDRY 1.5号 4.5-5.2m
【リール】シマノ アルテグラ2000(ベアリング増設)
シマノ アルテグラ2500(ベアリング増設)
シマノ ツインパワー2500
リョービ ザウバー1500Zi
【ライン】ゴーセン フルキャスター3号
ヨツアミ パワーキャスト投PE1.5号
【オモリ】ゴム管付きナツメ型中通し3号
【ハリス】クレハ シーガーエース 1.5号、1.7号、2号
【ハ リ】カワセミ針 チモト革命チヌ3号(特注黒針)
ガマカツ チヌ3号(銀)
カツイチ ボケ専用チヌ3号(黒)
【エ サ】カメジャコ(小指〜人差指サイズ:2時間分で15匹)
※誘いぶっ込み釣りのノウハウは http://fishingcraze.fc2web.com/sasoibukkomi.html を参照してください。
Crazeは釣りサイトなんですが、このブログに記したシャーの話が反響を呼んでいるので、シャーとの今生の別れのシーンを、猫ゆえに股旅物(またたびもの)ドラマシナリオ風に仕立ててみました。
【シーン:今生の別れ】
エンジェルケアを終え、長い長い旅の支度を調えたシャーに、アビが語りかけている。
ア ビ「おや、シャー公。あんた、イイ男振りだねぇ。
ビオラ飾りの旅支度とは、たいした男伊達じゃないか。
道中、言い寄ってくるメス猫達を泣かすんじゃないよ」
シャー「へへ、お褒めいただきありがとうござんす。
旦那さんと女将さんの心尽くしを頂戴いたしやした。
ビオラの花だけじゃござんせんよ。
ほれ、志津三郎兼氏の刀に見立てたマタタビも差してまさぁ」
ア ビ「そりゃ冥加な事だねぇ。野良のあんたにゃもったいないよ」
シャー「姐さんのおっしゃるとおりで。あっしは幸せモンでござんす」
ア ビ「まぁ、ずいぶんと神妙な事をお言いじゃないか。
それなら閻魔さんに突っ返される心配も無かろうね」
シャー「あたた、相変わらず手厳しいこって(笑)。
そんじゃ、ちょっくらお先にいってめぇりやす。
アビ姐さん、いつまでも息災でいらしておくんなさい。
本当にお世話になりやした」
ア ビ「あいよ。あたしにゃ旦那さんと女将さんがついてるから心配いらないよ。
道中、気を付けていっといで」
シャー「へい。お名残惜しゅうござんすが、これも世の定め。
冥途がどんなトコかは知りやせんが、いってめぇりやす。
姐さん、旦那さん、女将さん。ごめんなすって!」
深々とお辞儀をした後、生まれつき稲妻型に折れ曲がって短い尻尾をピンと立てたシャーが、春の薄日が差す大空に向かって駆け出してゆく。手を振り見送るアビ、旦那、女将を一度だけ振り返り、右前足で顔をツルリとなでてニッコリと笑顔を浮かべると、中空で大きく旋回して全身を見せ、再び小さくペコリとお辞儀をして、今度は全速で螺旋を描きながら天に駆け去ってゆく。春霞に覆われ、小さく朧になってゆくシャーの後ろ姿。 その姿を追って「いってらっしゃーい!」の声が響く。(完)
よっこさん、ちこさん、宮尾美遊さん、猫娘さん、にゃさん、ネコッチさん、チーコママさん、ウニヤンさん、小助さん、キャスバル・レム・ダイクンさん、クワトロ大尉さん、ララァさん、その他名無しの猫マニアのみなさん、いずれまた書くかもしれませんが、とりあえずシャーのお話はこれにて完結とさせてください。本当に心のこもった多数のメール、ありがとうございました。シャー共々、心より御礼申し上げます。
【シーン:今生の別れ】
エンジェルケアを終え、長い長い旅の支度を調えたシャーに、アビが語りかけている。
ア ビ「おや、シャー公。あんた、イイ男振りだねぇ。
ビオラ飾りの旅支度とは、たいした男伊達じゃないか。
道中、言い寄ってくるメス猫達を泣かすんじゃないよ」
シャー「へへ、お褒めいただきありがとうござんす。
旦那さんと女将さんの心尽くしを頂戴いたしやした。
ビオラの花だけじゃござんせんよ。
ほれ、志津三郎兼氏の刀に見立てたマタタビも差してまさぁ」
ア ビ「そりゃ冥加な事だねぇ。野良のあんたにゃもったいないよ」
シャー「姐さんのおっしゃるとおりで。あっしは幸せモンでござんす」
ア ビ「まぁ、ずいぶんと神妙な事をお言いじゃないか。
それなら閻魔さんに突っ返される心配も無かろうね」
シャー「あたた、相変わらず手厳しいこって(笑)。
そんじゃ、ちょっくらお先にいってめぇりやす。
アビ姐さん、いつまでも息災でいらしておくんなさい。
本当にお世話になりやした」
ア ビ「あいよ。あたしにゃ旦那さんと女将さんがついてるから心配いらないよ。
道中、気を付けていっといで」
シャー「へい。お名残惜しゅうござんすが、これも世の定め。
冥途がどんなトコかは知りやせんが、いってめぇりやす。
姐さん、旦那さん、女将さん。ごめんなすって!」
深々とお辞儀をした後、生まれつき稲妻型に折れ曲がって短い尻尾をピンと立てたシャーが、春の薄日が差す大空に向かって駆け出してゆく。手を振り見送るアビ、旦那、女将を一度だけ振り返り、右前足で顔をツルリとなでてニッコリと笑顔を浮かべると、中空で大きく旋回して全身を見せ、再び小さくペコリとお辞儀をして、今度は全速で螺旋を描きながら天に駆け去ってゆく。春霞に覆われ、小さく朧になってゆくシャーの後ろ姿。 その姿を追って「いってらっしゃーい!」の声が響く。(完)
よっこさん、ちこさん、宮尾美遊さん、猫娘さん、にゃさん、ネコッチさん、チーコママさん、ウニヤンさん、小助さん、キャスバル・レム・ダイクンさん、クワトロ大尉さん、ララァさん、その他名無しの猫マニアのみなさん、いずれまた書くかもしれませんが、とりあえずシャーのお話はこれにて完結とさせてください。本当に心のこもった多数のメール、ありがとうございました。シャー共々、心より御礼申し上げます。
"ねこぼんのう"な皆様から、シャーの旅立ちを惜しむ多数のメールをいただき、感謝の念に耐えません。しかし、このブログのアクセス数から考えると、どうしてこんなにたくさんのメール(この1週間でお見舞いや励ましメールを含めると50通以上)が届くのか不思議……? ともあれ、シャーとの出会いや、名前の由来、エピソードについて、多数のご質問をいただきましたので紹介いたします。
我が家には東京に住んでいた頃からの愛猫アビ(アメショ・♀・18歳)がいます。'01年に名古屋に引っ越してきましたが、江戸っ子のアビには慣れない土地であり、老齢という事もあって、自由外出はさせていません。リードを付けて、ベランダや裏庭で日向ぼっこをさせる程度なのですが、'04年の9月にキジトラ白の野良猫がやって来ました。アビは癇の強い猫で、自分のエリアに他の猫が近づくと、物凄い勢いで怒ります。しかし、このキジトラ白には「クルルッ、ウルッ」と親愛の情を示す声を出して接近を許しました。珍しい事もあるものだと、キジトラ白に「おまえはどこの子だい?」と近づいて声を掛けると、「シャーッ! 人間は嫌いでェ。俺はアビ姐さんに会いに来ただけだ!」と威嚇されてしまいました。自分や家内が、アビのおやつのカニカマなどを分けてやったり、餌をあげても、半月ほどの間は「シャーッ!」と接近を拒んでいました。その威嚇する鳴き声から『シャー』と命名しました。人気アニメの"赤い彗星"の異名を持つキャラクターとは関係ありません。だから「シャー」と長音で表記します。
シャーは毎日、アビに会いに来るようになりました。こうなるとご近所には、シャーは我が家の猫だと思われてしまいます。シャーが悪さをすれば我が家の責任。ご近所で悪さを働かないようにするには、餌を与えてお腹一杯にしておいてやるしかありません。ところがシャーは物凄く筋肉質なオス猫で、アビの食べ残しだけでは到底足りません。毎食Lサイズの猫缶を1缶、さらにキャットフードのドライチップを50gほど食べます。猫はチョビチョビと何回にも分けて餌を食べる「猫残し」をするものだと思っていましたが、野良猫の習性なのか、シャーは食べられる時に食べられるだけ食べる、想像以上の大食漢でした。朝・昼・晩と遊びに来ては、裏庭の窓に立ち上がって家の中を覗き込みながら「ヴニャー、ウギャー!」と餌をおねだります。シャー用にLサイズの猫缶と、3kg入りのキャットフードを買っておかねばならなくなりました。
そんなこんなで、1ヶ月ほど経った頃でしょうか。近所のスーパーの駐車場でシャーを見かけました。「おーい、シャー!」と呼び掛けると、「ヴニャ?」と返事をして、警戒しながらも近づいてくるようになりました。しかし、撫でてやろうと手を出すと、やはり「シャーッ!」。シャーがナデナデしても怒らなくなるまで、2ヶ月ほど掛かりました。そして、すっかりなついたシャーは家の中に上がり込もうとするようになりました。しかし、我が家には老猫のアビがいます。野良猫のシャーはどんな病気を持っているかもわかりませんから、屋内に入れてやるわけにはいきません。それに、アビも自分のねぐらである屋内に入る事までは許しませんでした。ある日、家の中に上がり込んで来たシャーに「フゥーッ、ヴシャーッ!」とアビが一喝。ケンカになればアビがシャーに勝てるはずもありませんが、シャーは大人しく耳を伏せ、家の外に自ら退散していきました。裏庭の軒先で、アビを見上げながら「アビ姐さん、分をわきまえねぇ、過ぎたマネをしでかし申し訳ありやせん」と詫びているような姿に、家内と二人で大笑いしたものです。
日向ぼっこの時も、アビが一段高い場所に寝そべり、シャーはその傍らの一段低い場所と、序列はハッキリとしていました。日向ぼっこ中に他の猫が裏庭やベランダ近づくと、シャーがスッ飛んでいって威嚇し、時には取っ組み合いの格闘をして追い払います。アビは寝そべったまま、横目でシャーの用心棒ぶりを眺めているだけ。まるで吉原の太夫と、警護の首代の様でした(笑)。そんなシャーの頼もしい護衛ぶりに、裏庭の窓際なら家の中に入って餌を食べる事をアビは許してやるようになりました。
立場の序列に厳しいアビも、病に倒れて家の中に運び込まれたシャーに怒る事はありませんでした。横たわるシャーの顔を覗き込み、心配そうに鼻を寄せようとしました。ウィルス感染症の疑いのあるシャーに接触させるわけにはいきません。シャーは私の仕事部屋に完全隔離。アビとシャーの接触はおろか、姿を見る事も避けさせていました。次にアビがシャーを見たのは、エンジェルケアを終え、長い長い旅の支度を調えた姿でした。
我が家には東京に住んでいた頃からの愛猫アビ(アメショ・♀・18歳)がいます。'01年に名古屋に引っ越してきましたが、江戸っ子のアビには慣れない土地であり、老齢という事もあって、自由外出はさせていません。リードを付けて、ベランダや裏庭で日向ぼっこをさせる程度なのですが、'04年の9月にキジトラ白の野良猫がやって来ました。アビは癇の強い猫で、自分のエリアに他の猫が近づくと、物凄い勢いで怒ります。しかし、このキジトラ白には「クルルッ、ウルッ」と親愛の情を示す声を出して接近を許しました。珍しい事もあるものだと、キジトラ白に「おまえはどこの子だい?」と近づいて声を掛けると、「シャーッ! 人間は嫌いでェ。俺はアビ姐さんに会いに来ただけだ!」と威嚇されてしまいました。自分や家内が、アビのおやつのカニカマなどを分けてやったり、餌をあげても、半月ほどの間は「シャーッ!」と接近を拒んでいました。その威嚇する鳴き声から『シャー』と命名しました。人気アニメの"赤い彗星"の異名を持つキャラクターとは関係ありません。だから「シャー」と長音で表記します。
シャーは毎日、アビに会いに来るようになりました。こうなるとご近所には、シャーは我が家の猫だと思われてしまいます。シャーが悪さをすれば我が家の責任。ご近所で悪さを働かないようにするには、餌を与えてお腹一杯にしておいてやるしかありません。ところがシャーは物凄く筋肉質なオス猫で、アビの食べ残しだけでは到底足りません。毎食Lサイズの猫缶を1缶、さらにキャットフードのドライチップを50gほど食べます。猫はチョビチョビと何回にも分けて餌を食べる「猫残し」をするものだと思っていましたが、野良猫の習性なのか、シャーは食べられる時に食べられるだけ食べる、想像以上の大食漢でした。朝・昼・晩と遊びに来ては、裏庭の窓に立ち上がって家の中を覗き込みながら「ヴニャー、ウギャー!」と餌をおねだります。シャー用にLサイズの猫缶と、3kg入りのキャットフードを買っておかねばならなくなりました。
そんなこんなで、1ヶ月ほど経った頃でしょうか。近所のスーパーの駐車場でシャーを見かけました。「おーい、シャー!」と呼び掛けると、「ヴニャ?」と返事をして、警戒しながらも近づいてくるようになりました。しかし、撫でてやろうと手を出すと、やはり「シャーッ!」。シャーがナデナデしても怒らなくなるまで、2ヶ月ほど掛かりました。そして、すっかりなついたシャーは家の中に上がり込もうとするようになりました。しかし、我が家には老猫のアビがいます。野良猫のシャーはどんな病気を持っているかもわかりませんから、屋内に入れてやるわけにはいきません。それに、アビも自分のねぐらである屋内に入る事までは許しませんでした。ある日、家の中に上がり込んで来たシャーに「フゥーッ、ヴシャーッ!」とアビが一喝。ケンカになればアビがシャーに勝てるはずもありませんが、シャーは大人しく耳を伏せ、家の外に自ら退散していきました。裏庭の軒先で、アビを見上げながら「アビ姐さん、分をわきまえねぇ、過ぎたマネをしでかし申し訳ありやせん」と詫びているような姿に、家内と二人で大笑いしたものです。
日向ぼっこの時も、アビが一段高い場所に寝そべり、シャーはその傍らの一段低い場所と、序列はハッキリとしていました。日向ぼっこ中に他の猫が裏庭やベランダ近づくと、シャーがスッ飛んでいって威嚇し、時には取っ組み合いの格闘をして追い払います。アビは寝そべったまま、横目でシャーの用心棒ぶりを眺めているだけ。まるで吉原の太夫と、警護の首代の様でした(笑)。そんなシャーの頼もしい護衛ぶりに、裏庭の窓際なら家の中に入って餌を食べる事をアビは許してやるようになりました。
立場の序列に厳しいアビも、病に倒れて家の中に運び込まれたシャーに怒る事はありませんでした。横たわるシャーの顔を覗き込み、心配そうに鼻を寄せようとしました。ウィルス感染症の疑いのあるシャーに接触させるわけにはいきません。シャーは私の仕事部屋に完全隔離。アビとシャーの接触はおろか、姿を見る事も避けさせていました。次にアビがシャーを見たのは、エンジェルケアを終え、長い長い旅の支度を調えた姿でした。
家内と名古屋市立八事霊園斎場でシャーの壮行会をしてきた。シャーと一緒に行く動物達がたくさんいて、シャーは独り旅ではなく、大人数の団体旅行に加わる事になった。シャーの身体は今夜一晩、一緒に行く仲間達と保冷庫で壮行の宴を張った後、荼毘に付される。寂しいどころか、ニャンニャン、ワンワン、キーキー、ギャーギャーと大騒動の珍道中になりそうだ(笑)。良かったな、シャー。独りで寂しい旅路を歩むのでは、と心配していたが、その心配は無用だった。保冷庫にシャーの棺を納めると、安堵の気持ちでまたしても涙がこぼれてしまった。どうも昨日から涙腺が緩んだままのようだ。
八事霊園斎場は公営なので猫は1100円で送ってもらえる。見送りや拾骨はできないが、大きな慰霊碑(畜魂碑)が霊園の陽当たり良好な一等地にあり、向こうにいる動物達に語りかける事ができる。多くの人が花を手向け、水やお供物を供えて旅立っていったペット達に語りかけていた。名古屋は犬や猫といったペットを飼っている人が多い。帰りの道すがら、家内が「さすがペット大国の名古屋だね」と感心していた。そうだよなぁ。東京に比べたら半額にして、さらに一桁違うもんなぁ。いつでも語りかけに行く事ができる立派な慰霊碑まであるんだもの。
帰宅してシャーの祭壇を片付けていると、昨日までと何かが違う。「?」と腰に手をやって考えていると、この数日来、ずっと悩まされていた腰痛が消えている! バカな話だが、シャーが自分の腰痛も持って行ってくれたような気がした。シャーよ、猫は三年の恩を三日で忘れると言われているけど、おまえは義理堅い奴だなぁ。ありがとう、助かったよ。ベランダに目をやると、シャーが日向ぼっこの時にいつも眺めていたビオラの花が、まだ浅い春の薄日の中で揺れていた……。
八事霊園斎場は公営なので猫は1100円で送ってもらえる。見送りや拾骨はできないが、大きな慰霊碑(畜魂碑)が霊園の陽当たり良好な一等地にあり、向こうにいる動物達に語りかける事ができる。多くの人が花を手向け、水やお供物を供えて旅立っていったペット達に語りかけていた。名古屋は犬や猫といったペットを飼っている人が多い。帰りの道すがら、家内が「さすがペット大国の名古屋だね」と感心していた。そうだよなぁ。東京に比べたら半額にして、さらに一桁違うもんなぁ。いつでも語りかけに行く事ができる立派な慰霊碑まであるんだもの。
帰宅してシャーの祭壇を片付けていると、昨日までと何かが違う。「?」と腰に手をやって考えていると、この数日来、ずっと悩まされていた腰痛が消えている! バカな話だが、シャーが自分の腰痛も持って行ってくれたような気がした。シャーよ、猫は三年の恩を三日で忘れると言われているけど、おまえは義理堅い奴だなぁ。ありがとう、助かったよ。ベランダに目をやると、シャーが日向ぼっこの時にいつも眺めていたビオラの花が、まだ浅い春の薄日の中で揺れていた……。
シャーの介護10日目。昨夜未明から呼吸音にゼェゼェと雑音が混じり、口を開いて息をし始めた。部屋を暗くして一晩中付き添っていたが、シャーは苦しい息を続けながらも、懸命に生きている。朝9時、動物病院に運び込み診察を受けると、「肺に水が溜まっている。これを抜く治療が必要だけど、その治療薬に耐える力があるかどうか……」と言われてしまった。放っておいても呼吸不全に陥るだろうし、どちらにせよこの呼吸では心臓への負担も大きい。ならばもう一度博打を打つしかない。「この治療に(シャーの)心臓が持ってくれるかどうか、非常に厳しいよ。いいね」と念を押された。ほんのわずかでも可能性があるなら賭けてみよう。「シャーの生命力次第ですよね。お願いします」。治療薬2本、栄養剤1本の合計3本を注射。「これで肺の水が抜け、夕方までに呼吸が戻るれば持ち直す見込みはある。夕方にもう一度連れてらっしゃい。だけど、キツイ治療なので夕方まで持つかどうか……。この子(シャー)次第だね。しかも、野良猫で7〜8歳はかなりの高齢だし」。シャーが7〜8歳? 5歳位だと思っていた。先生に確認すると「歯のすり減り具合や、歯茎の後退具合でおおよその年齢はわかるよ。この子は7歳か8歳。5年生きれば御の字の野良にしては長命だ」。
10時に帰宅。時折、シャーの全身にビクッと痙攣が走る。心臓が負担に耐えかねているようだ。水を与えてやる。一口だけ飲み込んだ。10時30分、シャーが起き上がった。ベッドから抜け出し、部屋の中をヨロヨロと歩き回る。振り下ろされてくる鎌から身を避けているようだ。へたり込んでオシッコを漏らしてしまった。シャーをベッドに戻し床掃除。部屋全体にペットシートを敷き詰める。11時30分、またベッドから抜け出し、ヨロヨロと水入れに向かい、自力で一口飲んだ。そのまま床に力無く横たわり、肩で息をしながら苦しげに喘いでいる。スポーツ用の携帯酸素を吸わせ、「シャー、頑張れ!」と呼び掛けると、苦しい息の下で「ゥァ……」と応えてくれた。そっと抱き上げてベッドに戻す。
11時40分頃、自分がトイレから戻ると、シャーがベッドを抜け出して床に倒れていた。心肺停止、瞳孔拡大。急いで人工呼吸。猫は雑菌だらけと言うが、かまってなどいられない。仰向けに抱きかかえて気道を確保、鼻と口を自分の口で覆って、2回息を吹き込んでやる。続いて1分間に60回のペースで心臓マッサージ。人工呼吸、心臓マッサージと猫用の心肺蘇生を5セット繰り返したが、午前11時45分、シャーは旅立った。自力で歩いて飲みに行った一口の水。あれは末期の水を飲みに行ったのか。弛緩したシャーの身体を抱き上げ、「よく頑張った。立派な最期だったよ、シャー」と呼び掛けると、「旦那さん。水臭ぇ真似をしちまいやしたが、あっしは元々、天涯孤独の野良猫でござんす。逝く時も独りで逝くと決めてたんでさぁ。ずいぶんとお世話ンなりやした。礼を言わしてもらいやす。ありがとうござんした」と、シャーが大きく開いた瞳で自分を見つめ返していた。苦悶の表情はない。瞬膜も出ていない。しっかりと目を見開き、現世の様を瞳の奥に焼き付けているようだ。まさにこれから勇躍と旅立っていく者の顔だ。涙が止まらない。シャーが旅立った悲しみだけではない。シャーのあまりに見事な病との闘いっぷりと、立派な最期に感動して、身体の震えと嗚咽が止められない。嗚咽はやがて慟哭に変わった。
13時30分、シャーの旅立ちを惜しんで家内と一緒にひとしきり泣きじゃくり、気持ちが少し落ち着いた。エンジェルケアをしてやろう。野良猫のシャーはおそらく、生涯一度もお風呂に入った事が無いはず。旅の道中や、向こうへ行ってから「おまえさん、臭いよ」なんて仲間はずれにされたのでは可哀想だ。バスルームに運び、シャンプーで念入りに洗ってやる。おや? シャーよ、おまえはずいぶんと綺麗なキジトラ白だったんだね。ありゃ、こんな所にもケンカ傷のハゲがある。おいおい、ずいぶんとヤンチャしてたんだな。なぁ、シャー。向こうでペル、ライダー、チー、チャミ達(我が家で飼っていた猫達)に会ったら、俺と家内は元気でやってるって伝えてくれよ。よし、全身キレイになった。どうだ、サッパリしただろう。今、乾かしてやるからな。バスタオルで丁寧に水気を拭き取り、ブラシを掛けながらドライヤーで念入りに乾かしてやる。病み疲れしていたシャーの毛並みが、元気な頃のようにフワフワになっていく。うんうん、おまえ、グッと男前が上がったぞ。ふと気付くとシャーが目を閉じている。そっか、気持ち良かったか。シャーのエンジェルケアが終わると、トコトコとアビがやってきた。シャーの顔をのぞき込んでいる。あぁ、アビ、おまえもシャーを見送ってやるのか。シャーよ、我が家の太夫猫もお見送りに来たぞ。なんとも粋な旅立ちじゃないか。
ダンボールで作った棺に厚手の白いバスタオルで包んだシャーを納め、マタタビを抱かせ、日向ぼっこの時にシャーが眺めていたビオラの花を入れてやった。ダンボールで作った祭壇に安置してやる。まるで眠っているようなシャーの安らかな顔。もう、苦しげな息はしていない。安らかなシャーの永遠の寝顔に涙がこぼれた。シャーの好きだった猫缶、水を祭壇に供え、お香を焚いてやる。いってらっしゃい、シャー。またどこかで会ったら、また友達になろう。半年間、楽しかったよ。ありがとう、シャー。
10時に帰宅。時折、シャーの全身にビクッと痙攣が走る。心臓が負担に耐えかねているようだ。水を与えてやる。一口だけ飲み込んだ。10時30分、シャーが起き上がった。ベッドから抜け出し、部屋の中をヨロヨロと歩き回る。振り下ろされてくる鎌から身を避けているようだ。へたり込んでオシッコを漏らしてしまった。シャーをベッドに戻し床掃除。部屋全体にペットシートを敷き詰める。11時30分、またベッドから抜け出し、ヨロヨロと水入れに向かい、自力で一口飲んだ。そのまま床に力無く横たわり、肩で息をしながら苦しげに喘いでいる。スポーツ用の携帯酸素を吸わせ、「シャー、頑張れ!」と呼び掛けると、苦しい息の下で「ゥァ……」と応えてくれた。そっと抱き上げてベッドに戻す。
11時40分頃、自分がトイレから戻ると、シャーがベッドを抜け出して床に倒れていた。心肺停止、瞳孔拡大。急いで人工呼吸。猫は雑菌だらけと言うが、かまってなどいられない。仰向けに抱きかかえて気道を確保、鼻と口を自分の口で覆って、2回息を吹き込んでやる。続いて1分間に60回のペースで心臓マッサージ。人工呼吸、心臓マッサージと猫用の心肺蘇生を5セット繰り返したが、午前11時45分、シャーは旅立った。自力で歩いて飲みに行った一口の水。あれは末期の水を飲みに行ったのか。弛緩したシャーの身体を抱き上げ、「よく頑張った。立派な最期だったよ、シャー」と呼び掛けると、「旦那さん。水臭ぇ真似をしちまいやしたが、あっしは元々、天涯孤独の野良猫でござんす。逝く時も独りで逝くと決めてたんでさぁ。ずいぶんとお世話ンなりやした。礼を言わしてもらいやす。ありがとうござんした」と、シャーが大きく開いた瞳で自分を見つめ返していた。苦悶の表情はない。瞬膜も出ていない。しっかりと目を見開き、現世の様を瞳の奥に焼き付けているようだ。まさにこれから勇躍と旅立っていく者の顔だ。涙が止まらない。シャーが旅立った悲しみだけではない。シャーのあまりに見事な病との闘いっぷりと、立派な最期に感動して、身体の震えと嗚咽が止められない。嗚咽はやがて慟哭に変わった。
13時30分、シャーの旅立ちを惜しんで家内と一緒にひとしきり泣きじゃくり、気持ちが少し落ち着いた。エンジェルケアをしてやろう。野良猫のシャーはおそらく、生涯一度もお風呂に入った事が無いはず。旅の道中や、向こうへ行ってから「おまえさん、臭いよ」なんて仲間はずれにされたのでは可哀想だ。バスルームに運び、シャンプーで念入りに洗ってやる。おや? シャーよ、おまえはずいぶんと綺麗なキジトラ白だったんだね。ありゃ、こんな所にもケンカ傷のハゲがある。おいおい、ずいぶんとヤンチャしてたんだな。なぁ、シャー。向こうでペル、ライダー、チー、チャミ達(我が家で飼っていた猫達)に会ったら、俺と家内は元気でやってるって伝えてくれよ。よし、全身キレイになった。どうだ、サッパリしただろう。今、乾かしてやるからな。バスタオルで丁寧に水気を拭き取り、ブラシを掛けながらドライヤーで念入りに乾かしてやる。病み疲れしていたシャーの毛並みが、元気な頃のようにフワフワになっていく。うんうん、おまえ、グッと男前が上がったぞ。ふと気付くとシャーが目を閉じている。そっか、気持ち良かったか。シャーのエンジェルケアが終わると、トコトコとアビがやってきた。シャーの顔をのぞき込んでいる。あぁ、アビ、おまえもシャーを見送ってやるのか。シャーよ、我が家の太夫猫もお見送りに来たぞ。なんとも粋な旅立ちじゃないか。
ダンボールで作った棺に厚手の白いバスタオルで包んだシャーを納め、マタタビを抱かせ、日向ぼっこの時にシャーが眺めていたビオラの花を入れてやった。ダンボールで作った祭壇に安置してやる。まるで眠っているようなシャーの安らかな顔。もう、苦しげな息はしていない。安らかなシャーの永遠の寝顔に涙がこぼれた。シャーの好きだった猫缶、水を祭壇に供え、お香を焚いてやる。いってらっしゃい、シャー。またどこかで会ったら、また友達になろう。半年間、楽しかったよ。ありがとう、シャー。
シャーの介護9日目。
【朝】
昨夜未明、シャーの容態が急変した。頭を持ち上げる事が出来ず、呼吸も浅く荒い。体温も下がっている。朝になるのを待って、動物病院に運び込んだ。体重は3.7kgにまで落ちていた。ここ数日間の闘病で、ついに最後の体力まで尽き果ててしまったらしい。わずかに残っていた抵抗力も尽きて、肺炎を起こしていると先生が告げた。体温が下がったのは、発熱してウィルスや病原菌と闘う抵抗力が落ちてしまったからだ。極めて厳しい局面。それでも最善を尽くしたいと申し出ると、「(シャーの)命の保証は出来ないけどいいか?」と言われた。元々、野良猫のシャーだ。自分が発見していなければ、すでに無かったはずの命。ここで肺炎治療のための博打を打って、シャーに恨まれるなら恨まれてもいい。抗生剤などの治療薬2本、栄養剤1本の合計3本の注射。注射の針を刺されても、「ヴギャ……」と声を上げるだけ。暴れる体力も無い。連れ帰ったら乾燥した暖かい部屋に置く事と、水分をまめに補給してやる事を指示された。敢えて "乾燥した部屋" に置くのは、猫が喉の渇きを感じて水分を摂るようにするためだそうだ。しまった、わざわざ加湿器で乾燥を防いでいたよ……。
【昼】
動物病院から戻り、午後になってもシャーはぐったりしたまま。完全に寝たきり状態に戻ってしまった。流動食も受け付けない。薄い砂糖水、猫用ミルクを注射器のポンプで1〜2時間おきに与える。口の中に流し込んでも、半分はタラタラとこぼしてしまう。飲み込むのも辛そうだ。根気よく、ひたすらシャーの快復を祈りながら介護を続けるしかない。
猫は野生の本能で、具合が悪くても本当の限界が来るまで動き回ったり、無理をしてでも餌を口する。弱っている姿を外敵に見られたら、獲物にされてしまうからだ。一見、元気そうに見えても、実は青息吐息の状態と言う事もよくあるらしい。そのため、異常に気付いた時には既に手遅れという例がとても多いそうだ。この2〜3日、回復傾向にあると思っていたが、実際は攻め寄る病に対し、シャーは総力を結集して突撃を敢行していたのか……。そこへ『肺炎』という新手の敵が現れ、シャーは深手を負ってしまった。頑張れ、シャー。大丈夫、俺が助勢してやる。すでに2回も重篤状態の介護は経験している。今度もちゃんと面倒見てやるから。それに獣医さんも加勢してくれる。陣は整ったぞ。もう一合戦ブチかましたろうぜ、シャー。
【夜】
頭を持ち上げるようになった。ペーストは無理だが、流動食を15ccほど口にした。水も10ccほど飲んだ。ゴソゴソと動くので座らせてやったらオシッコをした。やっぱり寝たままでするのはイヤなんだな。そういえば今日は便が出ていない。食べていないんだから、出るはずもないか……。あるいは排便する力が出ないのかもしれない。
依然として呼吸は荒く、息をしているだけでも辛そうだ。獣医さんには「今夜持ちこたえられるかどうか……」と言われている。寝ずに付き添ってやり、明日は朝一(9:00)に動物病院に連れて行く。シャー、明日の朝9時に診療予約してあるからな。頑張って今夜を乗り切ろうな。
【朝】
昨夜未明、シャーの容態が急変した。頭を持ち上げる事が出来ず、呼吸も浅く荒い。体温も下がっている。朝になるのを待って、動物病院に運び込んだ。体重は3.7kgにまで落ちていた。ここ数日間の闘病で、ついに最後の体力まで尽き果ててしまったらしい。わずかに残っていた抵抗力も尽きて、肺炎を起こしていると先生が告げた。体温が下がったのは、発熱してウィルスや病原菌と闘う抵抗力が落ちてしまったからだ。極めて厳しい局面。それでも最善を尽くしたいと申し出ると、「(シャーの)命の保証は出来ないけどいいか?」と言われた。元々、野良猫のシャーだ。自分が発見していなければ、すでに無かったはずの命。ここで肺炎治療のための博打を打って、シャーに恨まれるなら恨まれてもいい。抗生剤などの治療薬2本、栄養剤1本の合計3本の注射。注射の針を刺されても、「ヴギャ……」と声を上げるだけ。暴れる体力も無い。連れ帰ったら乾燥した暖かい部屋に置く事と、水分をまめに補給してやる事を指示された。敢えて "乾燥した部屋" に置くのは、猫が喉の渇きを感じて水分を摂るようにするためだそうだ。しまった、わざわざ加湿器で乾燥を防いでいたよ……。
【昼】
動物病院から戻り、午後になってもシャーはぐったりしたまま。完全に寝たきり状態に戻ってしまった。流動食も受け付けない。薄い砂糖水、猫用ミルクを注射器のポンプで1〜2時間おきに与える。口の中に流し込んでも、半分はタラタラとこぼしてしまう。飲み込むのも辛そうだ。根気よく、ひたすらシャーの快復を祈りながら介護を続けるしかない。
猫は野生の本能で、具合が悪くても本当の限界が来るまで動き回ったり、無理をしてでも餌を口する。弱っている姿を外敵に見られたら、獲物にされてしまうからだ。一見、元気そうに見えても、実は青息吐息の状態と言う事もよくあるらしい。そのため、異常に気付いた時には既に手遅れという例がとても多いそうだ。この2〜3日、回復傾向にあると思っていたが、実際は攻め寄る病に対し、シャーは総力を結集して突撃を敢行していたのか……。そこへ『肺炎』という新手の敵が現れ、シャーは深手を負ってしまった。頑張れ、シャー。大丈夫、俺が助勢してやる。すでに2回も重篤状態の介護は経験している。今度もちゃんと面倒見てやるから。それに獣医さんも加勢してくれる。陣は整ったぞ。もう一合戦ブチかましたろうぜ、シャー。
【夜】
頭を持ち上げるようになった。ペーストは無理だが、流動食を15ccほど口にした。水も10ccほど飲んだ。ゴソゴソと動くので座らせてやったらオシッコをした。やっぱり寝たままでするのはイヤなんだな。そういえば今日は便が出ていない。食べていないんだから、出るはずもないか……。あるいは排便する力が出ないのかもしれない。
依然として呼吸は荒く、息をしているだけでも辛そうだ。獣医さんには「今夜持ちこたえられるかどうか……」と言われている。寝ずに付き添ってやり、明日は朝一(9:00)に動物病院に連れて行く。シャー、明日の朝9時に診療予約してあるからな。頑張って今夜を乗り切ろうな。
シャーの介護8日目。まだ自力歩行は出来ないが、今日は起き上がれるようになった。しゃがんで排泄行為を行っている。これならシャーの身体も汚れなくて済む。ただ、まだ熱があるせいか便が硬くて、排便すると「ウンチしたら疲れちゃった……」といった感じでヘタッと横たわってしまう。ツライ思いをしているシャーには申し訳ないが、見ていて笑ってしまった。
今朝は餌の流動食20cc、流動レバーペースト10g、離乳食ペースト10gを全量摂取。高カロリー、高タンパクの栄養食を1〜2時間おきに与え続けているが、水を自分で飲もうとしない。不安になって獣医さんに電話を入れた。ここ数日間の経過と介護手順を伝え、間違った事をしていないかも確認してみる。
「はあ〜、ずいぶんと回復したね。熱心に介護してるんだ。介護方法はそのままでいいよ。
あ、お水はね、猫は砂漠の生き物が祖先だから、水分の多い餌を与えている場合はそんなに飲まないの。
流動食やペーストを一日200gくらい摂っているなら、水は100〜150ccも飲ませてあげれば充分。
黄疸と血尿ね……、状態を診てみるから、週明けくらいに連れてらっしゃい。それにしてもよく頑張ったね」
頑張ったのはシャーだ。今だって頑張っている。ベッドに横たわり、スヤスヤと寝息を立てているが、体内では怖ろしいウィルスと絶え間なく闘い続けているのだから。
しかし、動物の介護もお金がかかるなぁ。毎日の費用は……と。流動食(デビフ社製「カロリーエース」)が1缶180円、自家製流動レバーペーストの牛肉と鶏レバーが150円(一日分)、離乳食ペースト(デビフ社製「子猫の離乳食」)1缶200円、猫用ミルク(日本ペットフード社製「Mimy子猫のミルク」)が100cc当たり85円。さらにペットシート5〜8枚、清拭剤(花王ペットケア「清潔スプレー」)、ペット用清拭シート(花王ペットケア「ブラッシングシート」)5枚、拭き上げ用クロス10〜20枚、起毛シーツやフリース地ブランケットなど自作品の材料費などを加えると結構な金額になる。これに医療費が上乗せされると……、うわぁッ! 我が家が財政破綻してしまう。精一杯の事をしてやるって約束は絶対に守るけれど、シャーよ、早く良くなっておくれ〜!
今朝は餌の流動食20cc、流動レバーペースト10g、離乳食ペースト10gを全量摂取。高カロリー、高タンパクの栄養食を1〜2時間おきに与え続けているが、水を自分で飲もうとしない。不安になって獣医さんに電話を入れた。ここ数日間の経過と介護手順を伝え、間違った事をしていないかも確認してみる。
「はあ〜、ずいぶんと回復したね。熱心に介護してるんだ。介護方法はそのままでいいよ。
あ、お水はね、猫は砂漠の生き物が祖先だから、水分の多い餌を与えている場合はそんなに飲まないの。
流動食やペーストを一日200gくらい摂っているなら、水は100〜150ccも飲ませてあげれば充分。
黄疸と血尿ね……、状態を診てみるから、週明けくらいに連れてらっしゃい。それにしてもよく頑張ったね」
頑張ったのはシャーだ。今だって頑張っている。ベッドに横たわり、スヤスヤと寝息を立てているが、体内では怖ろしいウィルスと絶え間なく闘い続けているのだから。
しかし、動物の介護もお金がかかるなぁ。毎日の費用は……と。流動食(デビフ社製「カロリーエース」)が1缶180円、自家製流動レバーペーストの牛肉と鶏レバーが150円(一日分)、離乳食ペースト(デビフ社製「子猫の離乳食」)1缶200円、猫用ミルク(日本ペットフード社製「Mimy子猫のミルク」)が100cc当たり85円。さらにペットシート5〜8枚、清拭剤(花王ペットケア「清潔スプレー」)、ペット用清拭シート(花王ペットケア「ブラッシングシート」)5枚、拭き上げ用クロス10〜20枚、起毛シーツやフリース地ブランケットなど自作品の材料費などを加えると結構な金額になる。これに医療費が上乗せされると……、うわぁッ! 我が家が財政破綻してしまう。精一杯の事をしてやるって約束は絶対に守るけれど、シャーよ、早く良くなっておくれ〜!
シャーの介護7日目。昨日、首を持ち上げて頭を起こすようになったと思ったら、今朝は箱座りしていた。横たわっているだけだったのが、腹這いになっている。おまけに、ささやくように小さな声だが、「ンァ〜ゥ……」と空腹を訴えている。大急ぎで流動食とゆるゆるのレバーペーストを用意。注射器のポンプに充填して、シャーの口の脇からゆっくりと注入。「ピチャピチャ、ミシャミシャ……」。ミシャミシャ? おおおッ、咀嚼音じゃないか! 昨日は舐めて飲み込むだけだったけれど、今日は明らかに噛む動きをしてる。確認のためゆるゆるのレバーペーストを注入。目をパッチリ見開いた! これならいけそうだ。固形率の高い離乳食ペーストを与えてみる。食べてる、食べてる。ゆっくり、少しずつ舐め取るように口に入れ、噛んでいる。腹這いになったままだけど、しっかりと食べてる。まだ胃が縮んでいて、ムシャムシャと食べる事は出来ないけれど、"食べる" という行動が出来たのは大きい。体力が回復しつつある兆候だ。
餌と水を与え終わり、ペットシートの交換(本当はコチラが先なのだが、今日はシャーが空腹を訴えたので餌を先に与えた)。相変わらず尿はオレンジ色だが、少し色が薄くなってきたような気がする。身体を拭ってやりながら、目、耳、鼻、歯茎、口内、肛門、泌尿器をチェック。各所に黄疸が出ている。肝機能にもダメージがある証拠だ。病と闘うために、腎臓も肝臓もフル回転して焼き付いてしまったんだろう。全身衰弱で実質的には獣医さんにも見放された状態なんだから、生きているだけでもシャーの頑張りがわかる。もう少し体力が回復して自分で身体を起こし、餌入れの場所まで行って食べられるようになれば、動物病院で治療が受けられる。お薬師さん、お地蔵さんに快復を祈りながら、シャーを見つめていたら妙に胸が熱くなってきた。シャーよ。頑張ってるよなぁ、おまえ。
餌と水を与え終わり、ペットシートの交換(本当はコチラが先なのだが、今日はシャーが空腹を訴えたので餌を先に与えた)。相変わらず尿はオレンジ色だが、少し色が薄くなってきたような気がする。身体を拭ってやりながら、目、耳、鼻、歯茎、口内、肛門、泌尿器をチェック。各所に黄疸が出ている。肝機能にもダメージがある証拠だ。病と闘うために、腎臓も肝臓もフル回転して焼き付いてしまったんだろう。全身衰弱で実質的には獣医さんにも見放された状態なんだから、生きているだけでもシャーの頑張りがわかる。もう少し体力が回復して自分で身体を起こし、餌入れの場所まで行って食べられるようになれば、動物病院で治療が受けられる。お薬師さん、お地蔵さんに快復を祈りながら、シャーを見つめていたら妙に胸が熱くなってきた。シャーよ。頑張ってるよなぁ、おまえ。