釣り、ペット、短編小説、雑記、紙誌掲載原稿
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月曜日の放課後、少年は担任の教師にテコの原理を教
えて欲しいと頼んだ。
黒板に投げ竿を描き、どうすれば遠くに飛ばせるのか
を質問した。
教師はしばらく考え込んだ。
物理学の説明は小学5年生には少し難しいと思った。
難しくても勉強するからと少年は食い下がった。
教師は少年の熱意に負けた。
毎日30分ほどの課外授業となった。
廊下の窓から覗いていた子供達も加わっていた。
力点、支点、作用点、放出角、放物線、空気抵抗など
高校レベルの話になった。
竿のしなり、反発力を活かせば力を込めて投げなくて
も良いことがわかった。
少年は頭で理解した事を実行に移していった。
遠く投げればより広く探れる。
釣果への近道だと思った。
「バチッ!」
ある朝、少年の釣り糸が大きな音を立てて切れた。
リールのスプールに巻かれた75mの道糸がすべて出尽く
していた。
父の竿を借りた。長く、重たかった。
大人になった気分だった。
ビュッ! 仕掛けは対岸の手前まで飛んだ。
リールのスプールには道糸の4色目が少し残っていた。
目標の100mは目前だった。
父は少年にタックルを譲った。
自らの努力で大人並の実力を身につけた我が子が愛お
しかった。
初めての投げ釣りから1ヶ月。
父子は格段の上達を遂げた。
少年の愛読誌は漫画誌から、父が買ってくる釣り雑誌
に変わっていた。
その月の小遣いのほとんどを釣りにつぎ込んだ。
4.25m、25号負荷の投げ竿、大型スプールの投げ専用
リール、道糸も2号の専用ラインを巻き、3−12号の
テーパーライン力糸を結んだ。
より飛距離が出るという最新のL型天秤も買った。
仕掛けも自分で針を結んで作れるようになっていた。
少年は父から譲り受けた竿を大きく振りかぶり、空に
浮かぶ雲をめがけて投げた。
「――ッ!」
今までに感じたことのない感触が腕に伝わり、爽快感
が少年の胸に拡がった。
糸フケを取る。それでもリールのスプールには5色目
のラインが覗いていた。
間違いなく飛んだ。少年は無言でリールのスプールを
見つめ続けた。
一方、父は息子と同時に投げた自分の仕掛けの着水点
を凝視していた。
着水音が今までよりも小さく聞こえた。
糸フケを巻き取った。
4色目と5色目の境は竿先にあった。
父もまた、目標を超えた。感無量だった。
自分のリールを見つめている少年に、竿を手にしたま
ま父は近づいた。
「100m、越えたぞ!」「僕も!」
竿掛けに竿を預け、保温水筒のお茶で父子は乾杯した。
竿先を見つめ、母親が作ってくれた朝食用のおにぎり
をほおばった。
塩ジャケと焼きタラコの塩味が口中一杯に拡がった。
挑戦の日々を振り返り、父子は互いに讃えあった。
不意に少年が言った。
「魚も釣らなきゃね」
初心者父子の挑戦は今、新たなステージへ。
えて欲しいと頼んだ。
黒板に投げ竿を描き、どうすれば遠くに飛ばせるのか
を質問した。
教師はしばらく考え込んだ。
物理学の説明は小学5年生には少し難しいと思った。
難しくても勉強するからと少年は食い下がった。
教師は少年の熱意に負けた。
毎日30分ほどの課外授業となった。
廊下の窓から覗いていた子供達も加わっていた。
力点、支点、作用点、放出角、放物線、空気抵抗など
高校レベルの話になった。
竿のしなり、反発力を活かせば力を込めて投げなくて
も良いことがわかった。
少年は頭で理解した事を実行に移していった。
遠く投げればより広く探れる。
釣果への近道だと思った。
「バチッ!」
ある朝、少年の釣り糸が大きな音を立てて切れた。
リールのスプールに巻かれた75mの道糸がすべて出尽く
していた。
父の竿を借りた。長く、重たかった。
大人になった気分だった。
ビュッ! 仕掛けは対岸の手前まで飛んだ。
リールのスプールには道糸の4色目が少し残っていた。
目標の100mは目前だった。
父は少年にタックルを譲った。
自らの努力で大人並の実力を身につけた我が子が愛お
しかった。
初めての投げ釣りから1ヶ月。
父子は格段の上達を遂げた。
少年の愛読誌は漫画誌から、父が買ってくる釣り雑誌
に変わっていた。
その月の小遣いのほとんどを釣りにつぎ込んだ。
4.25m、25号負荷の投げ竿、大型スプールの投げ専用
リール、道糸も2号の専用ラインを巻き、3−12号の
テーパーライン力糸を結んだ。
より飛距離が出るという最新のL型天秤も買った。
仕掛けも自分で針を結んで作れるようになっていた。
少年は父から譲り受けた竿を大きく振りかぶり、空に
浮かぶ雲をめがけて投げた。
「――ッ!」
今までに感じたことのない感触が腕に伝わり、爽快感
が少年の胸に拡がった。
糸フケを取る。それでもリールのスプールには5色目
のラインが覗いていた。
間違いなく飛んだ。少年は無言でリールのスプールを
見つめ続けた。
一方、父は息子と同時に投げた自分の仕掛けの着水点
を凝視していた。
着水音が今までよりも小さく聞こえた。
糸フケを巻き取った。
4色目と5色目の境は竿先にあった。
父もまた、目標を超えた。感無量だった。
自分のリールを見つめている少年に、竿を手にしたま
ま父は近づいた。
「100m、越えたぞ!」「僕も!」
竿掛けに竿を預け、保温水筒のお茶で父子は乾杯した。
竿先を見つめ、母親が作ってくれた朝食用のおにぎり
をほおばった。
塩ジャケと焼きタラコの塩味が口中一杯に拡がった。
挑戦の日々を振り返り、父子は互いに讃えあった。
不意に少年が言った。
「魚も釣らなきゃね」
初心者父子の挑戦は今、新たなステージへ。
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