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釣り、ペット、短編小説、雑記、紙誌掲載原稿
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 釣りをはじめとして、マリンレジャーは自然が相手。現地に着いたら雨、風、波で海には出られずじまい、ということもある。そんな時のサブプランとして、歴史散策をおすすめしたい。ロマンチックなラブストーリーあり、サスペンスドラマありと、歴史に興味が無くとも楽しめる。尾張国野間内海荘(現在の愛知県知多郡美浜町)に伝わる物語を紹介しよう。



【悲恋の物語-恋の水神社-】
 名前からしてロマンチックな神社である。艶やかな水色に塗られた鳥居が構えられ、願い事は霊水を汲む紙コップに書いて奉納する。ただし、伝えられている物語はバッドエンドストーリーである。
 桜町中納言藤原成範の娘、桜姫(小督局の姉妹)が恋人の病を癒すべく、万病に効く美都波能売神(ミヅハノメノカミ)の霊水を求めて、京からはるばる旅してきた。「美都波能売神の霊水まで、あとどれくらいか」と地元の民に尋ねたところ、実際はあと二丁(約二百メートル)ほどだが、地元の民は冗談のつもりで「今までの旅程と同じくらい東の方だ」と答えた。すでに疲労困憊していた桜姫は絶望のあまり、その場で息絶えてしまった。この逸話から「恋の水の神社」と呼ばれるようになり、現代では恋愛成就、縁結びの神社となっている。
 先日訪れた際、派手なメイクの十代とおぼしき女性数人が「なんか薄暗くてヤバクね? 超~コワイんですけど」と、はしゃぎながら参道を下ってきた。そんな今時ギャル達も、紙コップに願い事を書き込むや態度一変。真剣な眼差しで霊水を汲み、手を合わせて一心に祈っているではないか。その姿は純真無垢。恋する乙女の可愛らしさが溢れていた。おそらく、この神社に伝わる物語の詳細は知るまい。だが、良いではないか。無垢な思いで祈る心が大切なのだから。

【武将の無念を鎮める-野間大坊-】
 恋の水神社から国道247号を南へ下ると野間大坊がある。源頼朝・義経の父、源義朝最期の地である。源氏の統領、源義朝は平治の乱で平清盛に敗れ、東国へと落ち延びる途中、家臣の鎌田政清の舅、長田忠致を頼った。しかし、長田忠致は平家の恩賞目当てに義朝、政清を裏切る。義朝は湯殿で丸腰のところを襲われ、「せめて木太刀の一振りなりともあれば」と、無念の叫びを上げて討たれた。この故事から、源義朝の墓所には木太刀を模した祈願札を奉納する。
 織田信長の三男、織田信孝も野間大坊で生涯を閉じている。信孝は九人の兄弟の中で、最も聡明にして勇猛な武将であった。ゆえに天下を狙う秀吉に警戒され、主筋でありながら、野間大坊に逼塞させられ自害に追い込まれた。信孝は逆臣に討たれた源義朝の故事を引いて、「昔より 主を内海の 野間なれば 報いを待てや 羽柴筑前」との辞世を遺したと伝えられている。
 天下の覇権を目前にしながら斃れた源義朝、織田信孝の無念を鎮める野間大坊。今は若い女性も笑顔で訪れる観光スポットとなっている。

 歴史の大舞台から離れた海辺の漁村にも、壮大華麗な物語が残されている。海辺に出掛けたついでに、ぶらりと神社仏閣を訪ねてみてはいかがだろう。きっと心躍る物語に巡り会えるはずだ。

-「波となぎさ」'07年12月27日発刊 173号 掲載稿-

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YASU ・居眠釣四郎・眠釣
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釣りと動物と時代劇、時代小説をこよなく愛する、腰は低いが頭が高い、現代版「無頼浪人」にて候。
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