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釣り、ペット、短編小説、雑記、紙誌掲載原稿
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 天に帰ってしまった愛鼬チャオの身体を、仕事に出掛ける前に家内を連れて霊園で弔ってきた。霊園の事務棟にある受付で小型動物火葬料金1,100円を支払い、霊園の裏手にある動物火葬場へ。通常は火葬炉の右横にある保冷庫に納めるのだが、今日は係員の方がいて、炉の前の祭壇へと案内していた。炉に火が入る日だったようだ。

 この動物火葬場の前が最後の別れの場となる。自分たちの前に一組の家族がいたが、高校生くらいの娘さんが大声で泣きじゃくり、ペットの亡骸を納めた箱を閉じさせない。この霊園では動物火葬のルールとして、亡骸を納めた箱をひもで十字に縛り、万が一箱が倒れても亡骸が飛び出さないようにしっかりと閉じる必要がある。彼女はペットの亡骸を箱に閉じこめるのが嫌で、泣きじゃくっていた。痛いほど彼女の気持ちがわかる。正直、自分だって大声で泣き叫びたいくらいの気持ちでいたのだから。

 エエカッコしいのナルシストオヤジは、こんな場面で大いに損をする。大の大人が、しかもいい歳こいたオッサンが、人前で慟哭などできない。奥歯をグッと噛みしめて、ジンワリと涙を浮かべるくらいしか許されまい。世間は許しても、男としての矜恃が邪魔をする。しかし、祭壇の前にチャオの亡骸を置き、手を合わせた瞬間に家内のすすり泣きの声が聞こえてきた。もうダメだ。ボロボロと涙がこぼれてしまった。それだけではなく、不覚にも 「くぅ……」 と声まで出してしまった。もう矜恃もへったくれもない。さすがに大声で泣きじゃくりはしなかったが、嗚咽を漏らし大粒の涙を流して、今生の別れを惜しんだ。泣くという行為は最高のカタルシスかもしれない。かなり気持ちが落ち着いた。

 畜魂碑(動物慰霊塔)の前に移動し、ここで弔ったシャー、ロン、アビ、ブッチに花と線香を手向け、「今日、チャオをそっちに送ったよ。仲良くしてやっとくれ」 と語りかけ、空を見上げると、チャオの姿によく似た雲が西へと向かって流れていた。なるほど、西方浄土へと駆け出していったか。

 「明日からお天気が崩れるので、東風が吹いていただけだよ」 などと、無粋なことを言うヤツは地獄に堕ちてください。チャオは先輩ペット達に導かれて、正しく西方浄土へと旅立っていったと信じているのだから。異論も反論も認めない。

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YASU ・居眠釣四郎・眠釣
性別:
男性
自己紹介:
釣りと動物と時代劇、時代小説をこよなく愛する、腰は低いが頭が高い、現代版「無頼浪人」にて候。
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