花見

　隣町の桜の名所で花見をしてきた。桜吹雪の舞う中で酒を酌み交わし、弁当や団子を食べるってぇのはいいね。自分は酒が飲めない体質なので、もっぱら食う方専門なんだが、ちょこっとだけ舐めた日本酒で上機嫌に（笑）。

　しかしあれだ、不景気のご時世だけあって、多段のお重に一斗樽持参なんてぇお大尽は見かけなくなったなぁ。兎樽なんかを提げてきて、紙コップじゃなくで木の升で飲ってたりした、粋を気取る親父さんもいなくなった。一昔前の隅田川や上野山や飛鳥山にゃぁ、結構いたモンなんだがね。

　それでも桜ってのは、なんとも風情があっていいね。一年の内の十日ばかしだけ咲き誇り、艶やかさを見せ飽くや、さっさと散り去っちまう儚さと潔さ。秘やかに咲き、薫りで開花を知らせる梅の花。梅花のように薫り高くはないが、一気に花開いて艶を競う桜花もまた、日本人の心映えを表していて、いとをかしってなお話でした。