消失

　3月4日に 「剥落」 と題して、世界の株式市場から日本円換算で3,400兆円くらいフッ飛んでいるらしい、と書いたんだが、アジア開発銀行の報告書によると、株式、債券、為替、不動産などを含めた金融資産がなんと、50兆ドル（約4,900兆円）も消失していたらしい。
　http://www.nikkei.co.jp/news/main/20090309AT2M0902E09032009.html

　資産ってヤツは、物理で言う "質量保存の法則" が当てはまらない。わかりやすくいうと、紙は燃やせば煙と灰になり、粉々になって消えてしまうが、実際には紙が元々備えていた元素が、灰や煙や二酸化炭素などに姿を変えただけで、元素レベルでの種類も質量も変わらない、ってのが質量保存の法則です。

　ところが資産ってヤツは、所有者が使おうが使うまいが、"景気という名の気分や雰囲気" で、その価値が増えもすれば減りもするわけだ。減った分はドコに行ったかというと、ドコにも行かない。文字通りの消失、消え失せて無くなっちゃう。300万円で買った1kgの金塊も、金価格が1g2000円に下がれば200万円の価値になってしまう。金塊の重量は変わっていないのだから、差損額の100万円は純粋に消えちゃっているわけです。不動産の土地も同様ですな。

　で、この消えちゃった価値を埋め合わせるにはどーすりゃいいの？って事で、世界中のお利口さん達が知恵を絞っているんだが、答はすでに出ているワケで、一所懸命働いて、モノを作って売りましょうって一事に尽きる。野菜でも芋でも米でもイイし、船でも自動車でも釣り竿でもイイんだが、困った事に買ってくれるお客がいない。せっかく作っても売り先（＝買い手）がいないんじゃ、どーしようもない。こりゃ困ったね、っと、先進国の偉い人がオツムを寄せ合って投げ首思案を重ねているワケです。

　実はこういう情勢になると、日本は俄然有利で、高品質で高精度、おまけに耐久力まで抜群という高付加価値製品を、それこそチョチョイのチョイで作っちまう技術を持ってます。それも、その気になれば激安価格で売るくらい朝飯前です。

　ウソだろって？　本当ですよ。ほれ、みなさんもご存知のシチズン時計なんですがね、完成品の時計ブランドとしては、セイコーやカシオの陰に隠れちゃってますが、時計の心臓部であるムーブメント（時計の針を動かす機構）の世界トップシェアを握っています。シチズンブランドではなくても、世界のそこいら中にシチズンの時計が出回っているワケ。ね、スゴイでしょ？　ありがたがって数万円～数十万円も出して買った、欧米のデザイナーズブランドの時計が、実は中身はシチズン時計だった、って皮肉な現実もあるんだけどね（笑）。ホンダのカブだって、世界で一番売れている単車です。なにしろ、ロクな整備もせずに20年乗っても壊れないんだから。

　さて、消失した金融資産に加えて、深読みと謀略論大好きなお友達が言うところの、「純ちゃん平ちゃんがブッ壊して、元三井の大旦那だった善っちゃんがCDS参考値2,050.00って会社の大旦那の義っちゃんに切り売りし、米国資本にも貢いでしまった分」 も取り戻さにゃならんので、日本は手枷足枷に苦しみながらも、必要なリストラを進めながら安くて良いモノを作って、武力を用いずに世界制覇しちゃう準備をしているのかもしれないね、って野良オヤジの妄想でした。