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釣り、ペット、短編小説、雑記、紙誌掲載原稿
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 はいはい、栄養科の調理請負S社の地域担当者とやらが、午後2時30分過ぎに 「お詫び」 に来ましたよ。朝、謝りに来た、若い調理担当者も一緒に。もちろん手ぶらでね。しかも、だね、

 名 前 も 名 乗 ら ず 、 名 刺 も 出 さ ず に な !

 オイコラ、女。テメェ、お詫びに来たってウソだろう。とりあえず小うるせークレーマーの顔だけ見て、どんな素性か確かめておこうって魂胆だな。ドブ臭ェンだよ、この腐れ外道が。こうなったら全面戦争しかねェ、と、思ったが、とりあえずは相手の口上だけは聞いておこうか。

  「このたびは誠に申し訳ありませんでした」

  「うん。で、何が申し訳ないと?」

  「いえ、あの、ご不快な思いをお掛けしまして……」

  「あのさ、今何時?」

  「午後2時半過ぎです」

  「ねぇ、これって今朝何時の出来事?」

  「朝食時間です……」

  「で、あなたのところに連絡入ったのは何時?」

  「10時半頃です……」

  「ふ~ん。で、とりあえず調理担当に謝らせて、様子見てたのね」

  「いえ、そんなつもりでは……」

  「で、今、何時だと?」

  「午後2時過ぎてます……」

  「放置してンじゃん」

  「いえ、そんなつもりは……」

  「じゃぁ、なんでこんな時間よ? 他出中で遅くなりますが、○時には
   お伺いします、ってD病院に連絡しておいて当然じゃない?」

  「……(無言)」

  「でさ、貴女は何しに来たの?」

  「?」

  「まだ、貴女の名前も聞いてないし、名刺ももらってないんだけど?」

  「地域担当のHと申し……」

  「社内ポジションは?」

  「地域担当という事で……」

  「役職は管理職? ヒラ? ただのクレーム担当?」

  「いえ、そう言った役職や規定は無くて……」

  「ねぇ、謝る気なんか最初からないでしょう?」

  「いえ……」

  「文句を言うだけ言わせる、ガス抜き役で来た、って、わかるよ」

  「そんな事は……」

  「あのさ、名前は名乗らない、名刺は出さない、役職不明って何?」

  「……(無言)」

  「何しに来たのよ? さらに怒らせ、喧嘩売りに来たン?」

  「そんな事は決して……」

  「貴女じゃ話にならない。上の人と一緒に、もう一回、来なさいよ」

  「はい、上の者とお詫びに伺います」

  「上の者って誰? どんな役職の何者?」

  「あ、はい、名古屋エリアの支店長と一緒に……」

  「あのさ、お詫びはもう、調理担当の彼女にしてもらったから」

  「はい……」

  「今後、どうするのかを約束しに来るンなら、出直して来てよ」

  「?」

  「最初から不手際を謝る気がない、ってのが見え見えなんだよ!」

  「そんなつもりはございません……」

  「じゃぁ、名刺がないならメモで名前と連絡先を渡すくらいしなよ」

  「……」

  「ほら、できないジャン。隠したいんだろ? 証拠を残したくないンだろ?」

  「……」

  「無駄だよ。ここには証人として、D病院の管理役職者も同席してる」

  「……」

  「僕はね、こう見えても鼻が利くんだ。悪意や不正のニオイにね」

  「今日は許すも許さないもない。
   この後、10日まで化学療法だから、ベッド安静になるからね」

  「明日にでも出直して……」

  「ダメ。化学療法が終わってから、ゆっくりと喧嘩しましょう」

  「そんな……」

  「そっちが、たった今、売って来た喧嘩じゃないか。
   言っておくけど、僕は普通のクレーマーじゃないからね。
   末期ガン患者という、先の見えない世界の住人だからさ、
   怖い者知らずだって事を忘れないように」

  「……」

  「運が良ければ、10日までに死んじゃうから、お詫びに来なくて
   済む……かもよ(笑)」

  「い、いえ……」

  「まぁ、とりあえず今日はお引き取りくださいな。気分が悪い」

  「す、すみませんでした……」

  「病院には鬼に近いのも棲んでいる。忘れないようにね……(笑)」

 この後、M看護師長、事務局業務課長、医療安全対策主任と、今後についてのお話をさせていただき、その話も十分に聞かせて、S社の女担当者とやらには帰ってもらった。

 食事が不味くて食べられないのに、「マズイ」 と言えなくて残し続け、持続点滴に切り替えられて、生かされてるだけの患者さんがいる。本当は美味しいモノなら、ガンガン食えるのに。患者の現実と辛さを、初めて生の声で知った……、とM看護師長と安全対策主任は涙を流した。

 話はこの先、病院全体を巻き込んでいく事になる。D病院を敵に回さずに、うまく立ち回る必要も出て来るなぁ、ってお話が1月11日に続きます。

 ほらね、末期ガンで死にかけてるのに、入院先の病院でこんな大事を引き起こしちゃうんだから、眠釣ってなぁ、ホントにロクでもない人間でしょ(笑)?

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YASU ・居眠釣四郎・眠釣
性別:
男性
自己紹介:
釣りと動物と時代劇、時代小説をこよなく愛する、腰は低いが頭が高い、現代版「無頼浪人」にて候。
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