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釣り、ペット、短編小説、雑記、紙誌掲載原稿
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 抗ガン剤治療第三クールの休薬期間に入り、昨夜から抜針(ばっしん)と言って静脈に刺してあった留置針を抜いてもらった。抗ガン剤による肉体的疲労、それと静脈を休ませる期間ね。強いお薬を流し込まれていた静脈は、炎症を起こしてカチカチになってしまうのだよ。

 で、この休薬期間になると、血液検査による白血球数や貧血状態など、各種チェック項目で問題が無ければ、お風呂に入ったり、外出・外泊許可を受けて出掛ける事が可能になる。まぁ、点滴刺し、点滴台引っ張りながら外出、ってのはあり得ないワケです(当然だわな……笑)。

 そんな入浴可能になったから、ってワケはあるまいが、先ほどの深夜2時30分。首筋から背中にかけて、凍り付くような寒さと冷たさ感じて飛び起きた。名古屋の最低気温は0度……って違う! むくんでバッツンバッツンに膨れ上がった首筋を冷やすために当てていた、氷枕がパンクしたのだッ! 枕もシーツもベッドパッドもマットもズブ濡れ……。大慌てでナースコールを押し、看護師さんを呼ぶ。看護師さんが状況を言わずともスッ飛んできた。昨日、抗ガン剤ブレオの追加投与を受けてるから、体調不良が起きた、と思ったンだろうなぁ。

  「どうしましたッ!!」(血相を変えた看護師さん)

  「えっと……、あの……、氷枕がパンクした……」(上半身びしょ濡れの眠釣)

  「えっ?」

  「突然、氷枕がパンクしたらしく、氷水でビショビショになっちゃった……」

  「身体は大丈夫? 気分は? 自分で着替え出来ます?」
 
  「うん」
 
  「早く着替えて。タオルと着替えはありますか?」

  「うん。大丈夫」

  「じゃ、シーツ、枕、ベッドを直しますから」

  「は~い」

 応援の看護師さんも駆け付け、二人でテキパキとベッドを直してくださった。やれやれ……。よもや病院、それも病床で寒中水泳する羽目に遭うなんてねェ……。やっぱり眠釣ってなぁ、あり得ない事を次々と引き起こす鬼籍……じゃない、奇跡の男だと思うよ、ってお話でした。

 いや~、マジで心臓に 「ギクンッ!」 ときたし、本当に鬼籍に入っちゃいそうだったわ……(笑)。

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 食材にはそれぞれ 「旬」 ってモンがあって、冬には冬に旬を迎えるモノを食うのが一番なのは言うまでもないんだが、栽培技術、品種改良、海外輸入ルート、輸送技術、保存技術の進んだ現代では、真冬でもトマトだろうが、スイカだろうが、買い求めようと思えば何だって手に入れられる。

 自分は肉類や魚類も好きだが、40代末から野菜類の美味さに目覚め、とりわけ根菜類を好んで食うようになった。今の時期、一番好みの料理は、ダイコンをシンプルに出汁で炊き、粉山椒を振って、炊きたての飯と共にフゥフゥと食う。他におかずなどいらない。あぁ、言い過ぎた。ダイコンの葉の塩もみ、程度の香の物は欲しいな。残念ながら入院中の身の上では、この至福の一品を味わう事が出来ない。

 病室の天井を見つめながら、「ダイコン炊いて、食いてェなぁ……」 と独りごちていたら、不意に牛肉のタタキが思い浮かんだ。なんだ、この思考の飛躍は? ともあれ、思い浮かんだら最後、食べたくて食べたくて、どうにもならなくなってきた。しかし、今日は抗ガン剤治療第三クールで、ブレオマイシンの追加投与日。ブレオマイシンは自分にとって、微熱、吐き気、耳鳴り、血圧低下などの直接的な副作用が最も出やすいお薬。投与されたら、牛肉のタタキなど食べたくなくなってしまうに違いない……。そうだ、そうだ、気分が悪くなってしまうかもしれないから、やめた方がイイ。うん、諦めよう……。

  「あ~、もしもし。あのさ、今日のお昼なんだけど、牛肉タタキってお願いしてイイ?」

 お~いッ、眠釣! オマエは何を頼んでいるんだ? 吐き出しちゃうかもしれないぞ!

  「お肉食べられるの?」

  「う~ん、ブレオ投与なんだけど、今の気分はどうしても牛肉のタタキなんだ……」

  「生肉ダメじゃない? 白血球の値は?」

  「大丈夫、7千ユニットあるから正常値の上の方」

  「ホントだね?!」

  「ウッソじゃねーって!」

  「ローストビーフじゃダメなん?」

  「グレービーソースじゃなくて、ポン酢味で食べたいんだ」

  「う~ん、じゃぁ、作ってあげるけど、気分悪くなっても知らないよ」

  「大丈夫だと思う。根拠はないけど(笑)」

  「わかった。残したら私が食べるからイイよ(笑)」

 抗ガン剤の追加投与は午前中で終了。それも耳鳴りだけの、ほぼノーダメージ。正午……。家内が昼食を持って登場! ランチジャーを開けると……。

 1.上段保冷パック=牛肉のタタキ&茗荷刻みサラダ
 2.中段保温パック=芝海老とネギの焦がし醤油風味チャーハン
 3.下段熱蔵パック=モヤシとシイタケと生ニラの中華スープ

 やった~ッ! 大好きメニューばっかりじゃーん。ベッド上で小躍りしながら、牛肉のタタキを……、ウッマァ~イ! 時季外れだが茗荷の風味がビンビンに効いていて、ポン酢+ワサビとの相性も最高。このお肉……、高かっただろうなぁ……。サシの入り方、色合い、脂の甘味、どれもこれも申し分無い。目を閉じ、肉の出自を探るような表情で食べていると、家内が一言。

  「飛騨牛A5だよ!」

  「ゲッ! マジで?」

  「お肉食べたいって言うから、”最高のモン食べさしたげよう” と思った」

 ここで ”松阪牛” じゃないトコが家内らしいね(笑)。いやいや、飛騨牛は最高のお肉ですよ。自分も松坂、飛騨、神戸、米沢など、どれも美味しいし、味にどんな差があるなんてわかりません。ともあれ、今日は「口福」 ならぬ、舌の悦び、「舌悦」 を楽しんでしまいましたよ、ってお話です。

 贅沢しすぎだって? うん、自分もそう思います。でもね、それができるように自分は頑張ってきたンだよ。そして我が身の幸せを噛み締めながら、闘病の日々を過ごしてます。

 俺ァ、末期ガンなんだよ。いつ死んじまうかも知れないんだから、自分で稼いだ金で贅沢したってイイじゃん(本音)!

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 全国に波及し、善意の輪の広がりが留まるところを知らない 「タイガーマスク運動」。見返りを期待しない匿名での寄付、寄贈。イイね、素晴らしい、それなら自分も……。って、な流れになって、善意の連鎖が続いているンだが、自分は初めて児童擁護施設に匿名での文具寄贈を申し出た時に、

 「 ま っ た く の 匿 名 で は 頂 戴 で き ま せ ん 」

と、キッパリ断られた事がある。なぜか……。

 「 申 し 訳 あ り ま せ ん が 、 寄 贈 品 が 故 物 ( 盗 品 )
   で は な い 証 と し て 、 お 名 前 を お 願 い し ま す 」

 その施設では寄付や寄贈のお礼として、子供達が手作りした、施設名入りの湯飲み、箸置き、小皿などをくれる。手染めの手拭いやハンカチもあるなぁ。ゆがんでいたり、ガタついたり、柄が滲んでいたりするけれど、それはそれで味わいがあって愛用している。

 今回のタイガーマスク運動、自分は匿名でも、実名でもどっちでも良いと思う。ただ、注意して欲しいのは、一方的善意は時に相手先の迷惑となる場合があるので、気をつけて欲しい。

 食品類は安全性の問題もあって、破棄される可能性があります。それと古着類も困るそうです。そうそう、寄贈品の置き去りは拾得物として警察に届けねばならなくなるので、スグに活用できません。寄贈目録なりメッセージは必須です。 匿名での寄付でも、事前に施設側に連絡をしておかれる方が、確実に善意が届きますよ、ってお話でした。

 おかしなエセ団体や、政治的意図のある団体が背後に潜んでいそうなトコに寄付するよりも、本人に何ら落ち度がないのに、ツライ境遇にある子供達の支援を、自分は強く支持します。人の情けに縋る分際で、「ナンチャラ闘争」だの「ホンニャラ要求獲得」だの「スットコ運動完徹」だのと、クソ生意気なスローガン掲げやがって、結局は酒喰らって、タバコ吸って、パチンコで遊ぶクズどもになんかに支援など無用ッ! そんな連中には公園の炊き出しだけで充分だよ。

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 抗ガン剤治療第三クール5日目。物見隊の制吐剤部隊、先陣ペプシド隊、本隊シスプラ隊の攻撃は、微熱、耳鳴り程度のダメージで無事終了。吐き気や激しいめまい、頭痛に悩まされずに済み、食欲不振にも陥らなかった。

 今日の昼食は家内の手作りビーフシチュー。と、言うよりも、牛肉200gをデミグラスソースで煮込んだ、と言った方が早いかな? さらにタマネギ1個、ジャガイモ2個、人参半本が煮込まれ、付け合わせに生パセリ4株と、豆姫さん手作りのスモークチーズ4片。それにパネトーネ生地のクロワッサン2個。もう、「どこのホテルだよ?」ってな勢いの豪華メニューでしょ?

 一口シチューを含んだ途端に、思わず声が漏れてしまった。美味い……。本当の事を言うと、このところ旨味(美味い不味い)はわかるが、塩味、辛味、酸味、甘味、苦味、渋味などの味覚が鈍り始めてきている。当然、嗅覚も鈍っているのだが、今日はハッキリと味も香りもわかった。肉の香ばしさ、デミグラスソースの香気が違う。これでも釣魚料理漫画のメニューレシピ原案を提供した事もある眠釣様だ。家内は笑っていたが、何か手を加えているのは明白。もう、涙が留まらなくなってしまった。

 「??? ねぇ、どした? 熱かった?」 

 「違う。美味い……」

 「美味しくて、何で泣くンさ?」

 「わからんけど、うれしい(泣)」

 「変なの(笑)」

 旨い、美味い、ウマイ、うまい、美味しい、オイシイ、おいしいと食べ進めていたのだが、抗ガン剤治療を受けていると、食事だけでもかなりのエネルギーを消費しているのがわかる。やはり身体の芯が、治療のダメージと対抗するために疲れているのだ。途中で休憩しないと食べ続けられない。首筋に汗が浮き、呼吸もフゥフゥとなってくる。真夏に熱々のラーメンを食っているような感じだ。

 泣きじゃくりながら、休憩を交えながら、昼食を摂った。食べ終えたところでバイタルチェックに看護師さんがやってきた。

 「うわ~、いい香り。おいしそ~なニオイがしますね♪」

 「わかる?」

 「だってまだ、お昼ゴハン食べてないンです(笑)」

 「あぁ~、患者さんの食事配膳、食事介助、それにルーチンワークだもんね」

 「よく知ってますね~(笑)」

 「もう、何ヶ月ここにいると思ってんの(笑)」

 「眠釣さんは抗ガン剤治療中でもシッカリ食べられてヨカッタ♪」

 「ありがとう。でも、ちょっと疲れた(笑)」

 「?」

 「ゴハン食べるとね、食事疲れするんだ」

 「……ッ! 気分が悪いのに、無理に食べてるとか?」

 「違うよ。夏の熱々ラーメン食いみたいな感じ(笑)」

 「ん~、悪い感じじゃないンですね?」

 「うん。むしろ疲れてでも食える幸せ、口の幸福、『口福』 ってのを感じてる(笑)」

 健常者にはどうやっても伝わらないであろう、噛み合わない会話を聞いていた家内が、ケラケラと笑ってましたよ、ってお話でした。

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  アメーバブログのようなブログサービスや、mixiのようなSNSサービスでは、特定の友人や読者にだけ記事や写真を見せたり、非公開でメッセージを送ったり、時にはネットでプレゼントを贈る事もできる。そのプレゼントは現物に限らず、バーチャルなモノだったりもするワケだ。これはアメーバブログのアメンバー、”マイちゃん♪”さんから頂いた、バーチャルの「癒し温泉」。

 自分はすでに50歳を迎えようというオッサン。バーチャルなキャンデーとか、まんじゅうとか、「なんじゃ、その子供だまし……」っと冷めた目で見ていたのだが、バーチャルお見舞い花束、クリスマスキャンデー、正月餅なんかをいただくようになった。なんだよ、メッチャクチャに嬉しいじゃねーかッ! お気持ちがこもったバーチャルプレゼントに、涙がこぼれてきましたよ、ってお話です。

 仮想世界でも、現実世界でも、心が込められていれば、相手の心にも響くモノなんだなぁ……。

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 剣豪小説の”眠狂四郎”と言えば、必殺剣「円月殺法」なんだが、居眠釣四郎は抗ガン剤治療第三クール4日目、ついに顔がむくみ始め、「円月容貌」になってしまった。今までも膝や脛、くるぶし、足などが赤ちゃんの様にプクプクになったりしたが、今回は顔が真ん丸に。50オヤジのアンパンマンだよ、これ……。ちっともカワイクねェし、笑えねェ~(笑)。

 しかし、今日も先陣のペプシド隊の攻撃時間半刻(1時間)も、本隊のシスプラ隊の攻撃時間一刻(2時間)も、大きな副作用無く乗り切れた。釣友のWASAさん、釣りインストラクター仲間でマイミクの豆姫さんがお見舞いに駆け付けてくださり、心晴れやかに抗ガン剤治療を受けていられたおかげだ。食欲も落ちず、シッカリと食事も摂れた。ん? あぁ、昼食は久々に病院食の昼食を食いましたよ(笑)。シッカリとサラダの野菜は水切りがされ、ビショビショのダラダラではなくなってた。そう、これが「作り手の思いの込められた病院食」ですよ。やればできるじゃんネ。夕飯は家内の差し入れ食の、鶏蒲焼き釜飯、砂肝、ハツ、ハラミ、モモ肉の塩焼き。これがもう、激ウマ! 腹一杯食ってしまった(笑)。

 やっぱりね、眠釣ってのは幸せな男ですよ。末期ガンだろうがなんだろうが、こうして人と会って笑い、事にぶつかって怒り、美味いモノを食って喜ぶ。喜怒哀楽という感情や気分を心から堪能できちゃってんだからね、ってお話でした。

 うらやましい? じゃ、せいぜい不摂生、不養生して末期ガンに罹ってください。きっと眠釣と同じ気持ちになれますよ(鬼笑)。

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 調理請負業者S社との急転直下の和議成立に、心の静穏を取り戻し、いつもの穏やかな眠釣に戻りましたよ(笑)。それと「和議」のエントリーには書いていないが、今日は工房浦安のT常社長が、午前、新年お見舞いにと、再び千葉から駆け付けてくださった。もう、ありがたくて涙が抑えきれなかった。

 今日の午前中から午後一にかけて、それはもう一気にいろいろな事が起き、少々疲れたが、心の静穏はバッチリと取り戻せた。抗ガン剤治療第三クール3日目は、こうして始まった。物見役の制吐剤投与、今日は先陣ペプシド隊半刻(1時間)攻撃開始30分後のバイタル計測の後に、S社との和議会談。会談終了後に本隊シスプラ隊一刻(2時間)の攻撃。耳鳴りは続いているものの、血圧も酸素摂取量も安定。針を刺してある静脈も腫れずバッチリ。

 思わぬ流れでトンデモナイ騒ぎを引き起こしてしまったが、自分だって好んで揉め事を起こしたいワケじゃない。心穏やかに治療を続け、末期ガンからの克服生還を図りたいに決まっている。その静穏の阻害要因となるような事態が起きたから、鬼にでも蛇にでもなって怒り狂わねばならなかったのだよ、ってお話です。

 今回の一件、自分はきっと良い方向に進んでいくと信じている。今回の決着方法は、誰も傷つかず、誰も損をしない。個人的な責任を負う人もいない。お金も掛からない、手間も増えない。ただ、少しの気遣いだけがあればイイ。いわゆる ”大人の決着” でもない。ベストの決着方法だったと確信しているけど、独りよがりすぎるか……な?

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 栄養科の調理請負S社とのマジ喧嘩の一件。本日、急転直下で和議が成立しました。

 午前10時頃、D病院の調理室で業務を担当している指導者さん達が、改めてお詫びに来てくれた。お詫びはすでに昨日、調理担当者から詫びてもらっている。なぜこのような事態が起きたのか、原因がどこにあるのかを自ら考え、答えてもらった。答えは一つ。慣れによる気の緩み。すなわち怠慢。

 「我々入院患者は調理を担当してくださる調理員の方々の力添えがなければ、
  食事という生命をつなぐ治療が出来ないのだよ」

と言って聞かせると、女性指導者は涙を流して猛省していた。もう、二度と怠慢は犯さないと約束させ、11日に支店長が来られる時には、口約束ではなく、書面で改善履行を確約して欲しい旨を伝えてもらう。するとS社の支店長が、11日を待たずに訪ねて来られた。会えなくてもイイから眠釣に名刺を渡して、来た事だけでも伝えて欲しいとの事で足を運んでくださったそうだ。

 日本人の喧嘩(=戦:いくさ)というのは、喧嘩中であっても義には義で、礼には礼で、誠には誠で応えねばならぬ。それが日本人の喧嘩の作法だ。抗ガン剤治療中で横になっていなければならない非礼を詫びた上で会う事にした。支店長と共に、昨日と同じくM看護師長、事務局業務課長、医療安全対策主任が同席。

 支店長にはまず、昨日の無礼な女担当者とやらの対応について、厳しく問責させてもらった。指導の至らなさを詫びておられたが、「三つ子の魂百まで」って言葉がある通り、人間の性根はそう簡単に変わるモンじゃない。あれだけ自分に言い募られても、メモ書きすら出さなかった強情さは、どんな指導も教育も無駄だろうなぁ。

 それはともかく、今回の一件は請負業者として現場の実情、実態の把握がまったく出来ていない、管理指導が形だけで実際には機能していない、調理担当員の労働モラルの欠如、管理者のルーチン業務慣れによる無意識の怠慢、これらが原因である事を徹底認識してもらった。そして眠釣個人への謝罪ではなく、何をもって決着とすべきかについて話させてもらった。

 支店長から、D病院Y理事長・O院長に対して、「業務改善誓約書」を提出し、調理行程の改善徹底、手抜き再発防止、療養食の調理手順の向上等を ”誓う” ように提案。計画書や予定表ではなく、「誓約書」ですから、守らなかったら大変ですよ。事務局業務課長、NST管理室主任、M看護師長の承認の上で、書面での提出を約束させましたから、これで確実に改善は実現履行されるでしょう。ついでに眠釣個人への謝罪も、この誓約書提出で充分、と言う事で和議成立。

 今回の一件、偶然に偶然が重なって、生意気にも350病床の入院患者を代表して、言う事を言わせてもらった。別にクレーム意見書を出した仕返しで朝食を出さなかったワケじゃないなんて事は承知してたさ。でも、タイミングと相手が悪すぎたね(笑)。自分のように世の中の裏側を取材し、人の裏面を見ている人間は、不正や悪意、腐敗、堕落、怠慢に敏感なのですよ。それとね、末期ガン患者は健常者よりも ”鬼” に近い生き物です。生への執着、執念深さは健常者なんざ目じゃないヨ。なにしろ ”鬼籍” に入る寸前の世界に棲んでンだからネ、ってお話でした。

 あ~、良い決着方法で和議が成立してヨカッタ! と、独り悦に入る眠釣。コイツ、やっぱり迷惑千万なお祭り野郎で、当分の間は世に憚りそうだゾ(笑)。

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 抗ガン剤治療第三クール2日目。今日は栄養科の調理請負業者S社との、マジ喧嘩勃発で開始が1時間半ほど遅れてしまった。怒りに燃える自分の血圧が、30近く跳ね上がって160-120なんて数値になっちゃったモンだから、抗ガン剤の投与が出来ない(笑)。

 まぁ、なんとか気を落ち着け、血圧が上130台まで下がった午後4時に、先陣ペプシド隊の攻撃開始。しかし、腹の中ではまだカッカしているので、どうも耳鳴りがヒドイ。それと手足、顔までむくみ始めた。1時間の攻撃時間が終わり、少し間をおいて午後5時30分第二陣のシスプラ隊の攻撃開始。だいぶん気持ちは落ち着いてきたし、血圧も130台前半で安定。よしよし。でも、耳鳴りと一緒に、少し頭痛がする……。氷枕を交換してもらい、少し目を閉じてみるが、眠れない。抗ガン剤治療中は、開始から5分、10分、15分、30分、60分ごとに血圧と酸素摂取量、針を刺した静脈の状態チェックが入るからね。寝てても起こされちゃう(笑)。

 2時間経過後、キツイ副作用は出ずに、後詰めのブレオ隊が出陣。このブレオマイシンと言うお薬が、自分にとって一番キツイ。血圧が100飛び台まで急速低下し、そのくせ37度台の微熱と冷や汗が流れ出したりする。ツライって程ではないが、気分が良くなくなってしまう。あ、いや、やっぱり、少々ツライな……。

 ところが、今日は怒りで血圧が高めなので、30分間のブレオ隊攻撃意中も、帰陣後も血圧は120後半~130台をキープ! 怒りが結果的に副作用を防いでくれた(笑)。ふむ、怒りも生存活動には必要な感情だもんな、ってハッキリとわかった。

 11日はS社の中ボス相手の喧嘩が待っている。キッチリとケジメを取らせにゃならんので、抗ガン剤の副作用なんかで衰弱するワケにゃいかん。心の喧嘩支度が副作用を凌駕しちゃいましたよ、ってお話でした。

 ジャデデジャス。ババサズ、ジャデデジャス!
 バレンジャゲベ! ゴセパキョクギンサギササ、ン・ミンチョ・ゼダザ。

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 はいはい、栄養科の調理請負S社の地域担当者とやらが、午後2時30分過ぎに 「お詫び」 に来ましたよ。朝、謝りに来た、若い調理担当者も一緒に。もちろん手ぶらでね。しかも、だね、

 名 前 も 名 乗 ら ず 、 名 刺 も 出 さ ず に な !

 オイコラ、女。テメェ、お詫びに来たってウソだろう。とりあえず小うるせークレーマーの顔だけ見て、どんな素性か確かめておこうって魂胆だな。ドブ臭ェンだよ、この腐れ外道が。こうなったら全面戦争しかねェ、と、思ったが、とりあえずは相手の口上だけは聞いておこうか。

  「このたびは誠に申し訳ありませんでした」

  「うん。で、何が申し訳ないと?」

  「いえ、あの、ご不快な思いをお掛けしまして……」

  「あのさ、今何時?」

  「午後2時半過ぎです」

  「ねぇ、これって今朝何時の出来事?」

  「朝食時間です……」

  「で、あなたのところに連絡入ったのは何時?」

  「10時半頃です……」

  「ふ~ん。で、とりあえず調理担当に謝らせて、様子見てたのね」

  「いえ、そんなつもりでは……」

  「で、今、何時だと?」

  「午後2時過ぎてます……」

  「放置してンじゃん」

  「いえ、そんなつもりは……」

  「じゃぁ、なんでこんな時間よ? 他出中で遅くなりますが、○時には
   お伺いします、ってD病院に連絡しておいて当然じゃない?」

  「……(無言)」

  「でさ、貴女は何しに来たの?」

  「?」

  「まだ、貴女の名前も聞いてないし、名刺ももらってないんだけど?」

  「地域担当のHと申し……」

  「社内ポジションは?」

  「地域担当という事で……」

  「役職は管理職? ヒラ? ただのクレーム担当?」

  「いえ、そう言った役職や規定は無くて……」

  「ねぇ、謝る気なんか最初からないでしょう?」

  「いえ……」

  「文句を言うだけ言わせる、ガス抜き役で来た、って、わかるよ」

  「そんな事は……」

  「あのさ、名前は名乗らない、名刺は出さない、役職不明って何?」

  「……(無言)」

  「何しに来たのよ? さらに怒らせ、喧嘩売りに来たン?」

  「そんな事は決して……」

  「貴女じゃ話にならない。上の人と一緒に、もう一回、来なさいよ」

  「はい、上の者とお詫びに伺います」

  「上の者って誰? どんな役職の何者?」

  「あ、はい、名古屋エリアの支店長と一緒に……」

  「あのさ、お詫びはもう、調理担当の彼女にしてもらったから」

  「はい……」

  「今後、どうするのかを約束しに来るンなら、出直して来てよ」

  「?」

  「最初から不手際を謝る気がない、ってのが見え見えなんだよ!」

  「そんなつもりはございません……」

  「じゃぁ、名刺がないならメモで名前と連絡先を渡すくらいしなよ」

  「……」

  「ほら、できないジャン。隠したいんだろ? 証拠を残したくないンだろ?」

  「……」

  「無駄だよ。ここには証人として、D病院の管理役職者も同席してる」

  「……」

  「僕はね、こう見えても鼻が利くんだ。悪意や不正のニオイにね」

  「今日は許すも許さないもない。
   この後、10日まで化学療法だから、ベッド安静になるからね」

  「明日にでも出直して……」

  「ダメ。化学療法が終わってから、ゆっくりと喧嘩しましょう」

  「そんな……」

  「そっちが、たった今、売って来た喧嘩じゃないか。
   言っておくけど、僕は普通のクレーマーじゃないからね。
   末期ガン患者という、先の見えない世界の住人だからさ、
   怖い者知らずだって事を忘れないように」

  「……」

  「運が良ければ、10日までに死んじゃうから、お詫びに来なくて
   済む……かもよ(笑)」

  「い、いえ……」

  「まぁ、とりあえず今日はお引き取りくださいな。気分が悪い」

  「す、すみませんでした……」

  「病院には鬼に近いのも棲んでいる。忘れないようにね……(笑)」

 この後、M看護師長、事務局業務課長、医療安全対策主任と、今後についてのお話をさせていただき、その話も十分に聞かせて、S社の女担当者とやらには帰ってもらった。

 食事が不味くて食べられないのに、「マズイ」 と言えなくて残し続け、持続点滴に切り替えられて、生かされてるだけの患者さんがいる。本当は美味しいモノなら、ガンガン食えるのに。患者の現実と辛さを、初めて生の声で知った……、とM看護師長と安全対策主任は涙を流した。

 話はこの先、病院全体を巻き込んでいく事になる。D病院を敵に回さずに、うまく立ち回る必要も出て来るなぁ、ってお話が1月11日に続きます。

 ほらね、末期ガンで死にかけてるのに、入院先の病院でこんな大事を引き起こしちゃうんだから、眠釣ってなぁ、ホントにロクでもない人間でしょ(笑)?

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プロフィール
HN:
YASU ・居眠釣四郎・眠釣
性別:
男性
自己紹介:
釣りと動物と時代劇、時代小説をこよなく愛する、腰は低いが頭が高い、現代版「無頼浪人」にて候。
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