釣り、ペット、短編小説、雑記、紙誌掲載原稿
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生後二ヶ月くらいの迷い仔猫ブッチが天に帰って一年が経った。保護して我が家の一員に加えるはずだったのだが、過酷な野良猫の運命に翻弄され、わずか14時間ほどしか一緒に暮らせなかった。が、ブッチはまぎれもなく我が家のペットとして、短い生涯を終えた。ブッチの想い出を当時のブログ記事を採録しつつ、振り返ってみる。
母猫にはぐれ、「ミャーァ、ミャーァ、ミャアー」と鳴き続けていて、なんとか保護してやろうと探してみたのだが、どこかの縁の下にでも潜んでいるのか、なかなか見つけられなかった。夜も更けて暗くなってから、隣家の玄関先、植木鉢の陰で生後2ヶ月くらいの白黒ブチの仔猫を発見! 大急ぎで猫缶を用意して手から食べさせてみる。目を合わせないように注意しながら、手に載せた猫缶を鼻先へ近付けて待つ。最初は警戒して寄ってこなかったが、空腹には耐えられなかったのか、恐る恐る近付いてきてムシャムシャ。もうひとかたまりを手に載せて差し出すと、再びムシャムシャ。よし、これなら大丈夫。そっと手をあごの下に差し入れてコチョコチョ。気持ち良さそうに目を閉じている。ふっふっふ、チャ~ンス。胸の下に手を差し入れ、捕獲成功。手の平に載せて状態を観察……って、クサッ! オスなのでオシッコ(臭腺)の臭いが染みついているし、全身が埃まみれで白い部分がグレーになっている。やはりどこかの家の縁の下に潜んでいたな。
とりあえず家に連れ帰り、風呂場でシャンプー。嫌がって興奮状態になるかと思ったが、使い古した洗い桶に張ったぬるま湯に浸けると、気持ち良さそうにしている。小動物用の薬用シャンプーで全身を洗い、ついでにノミやダニを退治してやる。マダニが2匹、ノミが6匹いた。肛門を刺激して排便を促してみたが、すでに用は足していたらしく反応無し。ドライヤーで乾かしながら、全身状態をチェック。う~ん、素人判断でなんとも言えないが、痩せすぎているし、栄養状態はあまりよくない感じ。ただ、まぶたの裏側や歯茎の色からして貧血状態ではなさそうだ。目、鼻、耳の状態は良好。目ヤニは出ていないし、鼻水は垂れておらず、耳も外耳炎や中耳炎特有の悪臭はしなかった。耳ダニも付いていないようでキレイだったが、念のため綿棒とイヤークリーナーで耳掃除。耳掃除を嫌がるかと思ったが、気持ち良さそうに目を閉じていた。それと左目の上に傷。ケンカで咬まれた傷ではなく、どこからか落っこちて擦りむいた傷だな。とりあえず消毒薬のムーゲを綿球に染み込ませて、チョンチョンと消毒しておく。ほう、コイツ、何をされてもおとなしくしているイイ猫だ。
しかし、家の中を自由に歩き回らせるわけにはいかない。感染症に罹患している可能性があるからだ。なにしろ我が家にはフェレットのチャオがいる。感染症の有無が確認できるまでは、直接・間接を問わず接触させてはマズイ。同じ部屋に置くことも避けておくべきだ。仔猫に触ったら殺菌石鹸で良く手を洗っている。仔猫をどうしたモノかと思案していたら、'07年夏に天に帰ったロンの自動車用折り畳みケージがあったのを思い出した。収納庫からケージを引っ張り出し、フェルトのパンチを切り出してケージの床面に張り、さらにペットシートを敷いて保護ケージの完成。フタの破れたタッパーに、アビの使い残した猫用ウッドリターを入れてトイレもOK。エサ入れと水入れも使い古しのタッパーで間に合わせた。
さて……、いくら猫が好き、動物が好きと言っても、無条件で飼うわけにはいかない。とりあえず動物病院で健康診断を受けさせ、先天性疾患の有無や血液検査で感染症に罹患していないかを確認してからでないと、我が家の一員にするわけにはいかない。先住ペットのチャオがいるし、まだこの年の春、天に帰った愛猫アビへの想いを引きずっていて、新たな猫を迎え入れる気持ちにはなりきれないのが正直なところだった。それでも、健康なら予防接種を済ませてから里親を捜し、感染症に罹っていても治る病気なら治療を済ませてから里親を捜し、治らない病気だったり、里親が見つからなければ我が家で引き取るつもりだった。
一夜明けて朝7時。ちゃんとトイレを使って排便していた。しかし臭気がひどい上に、便の中に猫回虫がいる! まぁ野良猫なので寄生虫くらいはいるだろうが、その後で少しエサを食べたと思ったら嘔吐。吐瀉物の中にも猫回虫がウヨウヨ。これはマズイ。幼猫が大量に寄生されると命に関わる。吐瀉物の臭気もひどい。下痢はしていないが、この症状……。猫回虫だけによるものならまだしも、ウィルスに感染しているかもしれない。昨夜保護した時点から感染症の危険性を予測していたので、ブチ猫はケージで完全隔離しておいたのは正解だった。便と吐瀉物を割り箸でジッパーバッグに収め、病院に持参することにする。
実はこの日、フェレットのチャオもレントゲンとエコーの検査の予約をしてあった。前週の7月4日に受診した健康診断の血液検査で、肝機能の数値に若干の異常が見られたからだ。ブチ猫はアビの遺品のキャリーに入れて車のカーゴスペース。チャオはフェレット用キャリーに入れて助手席。フェレットはパルボウィルスには感染しないが、亜種のアリューシャンウィルスにはやられる。念には念を入れて、絶対に接触しないように注意を払っておいた。
動物病院に着き、ブチ猫のカルテを作ってもらうため、暫定名として「ブッチ」と名付けた。ブッチの便と吐瀉物を入れたジッパーバッグを受付で渡しておく。診察室に呼ばれ、チャオは検査のため半日入院。ブッチの診察開始。生後2ヶ月ほどだが、体重が500gしかない。体温は平熱だが、脱水症状も見られる。呼吸音は問題ないが、心音にやや雑音が混じっているらしい。寄生虫はやはり猫回虫。右目には充血も見られる。うん? 昨夜はそんな充血はなかったはず……。診察台の上でウンチをしてしまったが、何を食べていたのか真っ黄色な固形便。獣医師の先生も「何だろう、コレは?」と首を傾げてしまう不思議なウンチ。結局、ブッチも血液検査と衰弱状態の治療のため半日入院となり、午後4時半の夕方診療開始時刻にお迎えに行くことに。
家内と行きつけのウドン屋で昼食を済ませ、帰宅すると動物病院から留守番電話が入っていた。嫌な予感が走る。急いでコールバックしてみると、血液検査の結果、白血球が「6」でほとんど無い状態(猫の正常値は55~195)。便からはパルボウィルスが検出された……。治療薬インターフェロンの点滴中に急変し、意識が薄れているらしい。時間外だが「今すぐ行きます。よろしいでしょうか?」と問うと、OKをいただけた。この時点で覚悟を決めた。大量の猫回虫寄生、それに加えてパルボウィルス感染。これはもう、絶対に助からないだろう。家内と涙目で動物病院へ。受付に行くと動物看護士のKさんに、「今さっき、ブッチくん……、亡くなりました。今、先生が処置をしていますのでお待ちください」と告げられた。やはりダメだった。診療時間外なので待合室には誰もいない。昨夜、自分に甘えて見せたのは、わずか2ヶ月の生涯最後の安らぎを求めていたのだ。残された命火を精一杯燃やした甘えだったのだ。あまりにも切なく、あまりにも憐れな野良仔猫ブッチの運命。家内と二人で大泣きに泣いてしまった。
先生から説明を受ける。治療中に突然の嘔吐と激しい下痢を起こして意識を失い、14:30、そのまま天に帰ってしまったそうだ。感染源はおそらく母胎感染。そして猫回虫症とパルボウィルス感染症が合わさって劇症化したのが原因。苦しみは一瞬だっただろう。助けてやりたかったが、これも運命。できることは全てしてやった。野良猫の過酷な運命はシャーでも見ていたが、ブッチとはわずかに14時間の付き合いだった。先生は野良猫を保護したと知っているので、「ブッチ君のご遺体はどうしますか?」と尋ねてくれた。引き取って我が家の一員として弔ってやりたい。ブッチよ、時間の長短じゃないよ。オマエは我が家の一員だ。だからシャーもロンもアビも送ってもらった八事霊園に連れて行ってやるからな。
続いて事後処置として、ブッチの使ったケージ、トイレ、食器、パッドなどは全て廃棄処分し、室内でブッチの触れた箇所は消毒薬を散布するように指示された。渡された消毒薬は「ビルコンS」(輸入元バイエル社)で、500ccの水に溶かして使用するオレンジ色の粉末5g。水に溶かすと綺麗なピンクに変わる。これがパルボウィルスはもちろん、ジステンパーから鳥インフルエンザ、SARSや炭疽菌まで、感染症を引き起こすほとんどのウィルスや細菌に効く。環境負荷もなく、人間やペットにはほぼ無害って優れた消毒薬だ。
ブッチが白布に覆われ、小さな小さな箱に入れられて帰ってきた。穏やかで静かな寝顔。しかし、たった数時間で病み疲れて毛艶はすっかり失せ、昨日撮った写真とは別の猫のようになっていた。そっか、そんなに疲れたか。幼い身体でよく頑張ったな。偉かったぞ、ブッチ。さぁ、シャー、ロン、アビの待つ八事霊園に行こう。目が覚めたらきっと、オマエの先輩達が待っているよ。先生に深くお礼を述べ、検査と治療費の9千円を支払って八事霊園へ直行。曇っていた空が青く、明るくなっていた。
八事霊園でブッチの弔いを済ませ、16:45、動物病院にトンボ返り。チャオのお迎えだ。検査結果が気に掛かる。今、ブッチを送ってきたばかりなので、家内も自分も目が真っ赤。待つこと30分。チャオが帰ってきた。キャリーの中でバタバタ大暴れ。よほどイヤだったのだろう。さらに待つこと30分。診察室に呼ばれた。まずはレントゲンの所見。肝臓、腎臓、脾臓共に異常なし。続いてエコーの結果も異常なし。肝硬変、肝臓腫瘍、肝炎による変形や異常な所見なし。ただ、ALT数値が352(フェレットの正常値82~289)と高いので、肝臓の薬を3週間投与することに。とりあえずは命に関わる悪性の疾患所見が出なかったことに安心した。あぁ、よかった。もしかしたらブッチがチャオの病気を持っていってくれたのかもしれない。ブッチめ、チビ助のくせに義理堅いヤツだった。ありがとうな、ブッチ。
チャオは今日も部屋中を駆け回り、物陰に隠れ、イタズラをしまくっている。そして自分と家内も健康な日々を過ごしている。幼くして天に帰っていったブッチを思えば、自分はなんて幸せなのだろう。
梅雨空の厚い雲に覆われた天を見上げ、しんみりとした気分になりましたよ、ってお話でした。
母猫にはぐれ、「ミャーァ、ミャーァ、ミャアー」と鳴き続けていて、なんとか保護してやろうと探してみたのだが、どこかの縁の下にでも潜んでいるのか、なかなか見つけられなかった。夜も更けて暗くなってから、隣家の玄関先、植木鉢の陰で生後2ヶ月くらいの白黒ブチの仔猫を発見! 大急ぎで猫缶を用意して手から食べさせてみる。目を合わせないように注意しながら、手に載せた猫缶を鼻先へ近付けて待つ。最初は警戒して寄ってこなかったが、空腹には耐えられなかったのか、恐る恐る近付いてきてムシャムシャ。もうひとかたまりを手に載せて差し出すと、再びムシャムシャ。よし、これなら大丈夫。そっと手をあごの下に差し入れてコチョコチョ。気持ち良さそうに目を閉じている。ふっふっふ、チャ~ンス。胸の下に手を差し入れ、捕獲成功。手の平に載せて状態を観察……って、クサッ! オスなのでオシッコ(臭腺)の臭いが染みついているし、全身が埃まみれで白い部分がグレーになっている。やはりどこかの家の縁の下に潜んでいたな。
とりあえず家に連れ帰り、風呂場でシャンプー。嫌がって興奮状態になるかと思ったが、使い古した洗い桶に張ったぬるま湯に浸けると、気持ち良さそうにしている。小動物用の薬用シャンプーで全身を洗い、ついでにノミやダニを退治してやる。マダニが2匹、ノミが6匹いた。肛門を刺激して排便を促してみたが、すでに用は足していたらしく反応無し。ドライヤーで乾かしながら、全身状態をチェック。う~ん、素人判断でなんとも言えないが、痩せすぎているし、栄養状態はあまりよくない感じ。ただ、まぶたの裏側や歯茎の色からして貧血状態ではなさそうだ。目、鼻、耳の状態は良好。目ヤニは出ていないし、鼻水は垂れておらず、耳も外耳炎や中耳炎特有の悪臭はしなかった。耳ダニも付いていないようでキレイだったが、念のため綿棒とイヤークリーナーで耳掃除。耳掃除を嫌がるかと思ったが、気持ち良さそうに目を閉じていた。それと左目の上に傷。ケンカで咬まれた傷ではなく、どこからか落っこちて擦りむいた傷だな。とりあえず消毒薬のムーゲを綿球に染み込ませて、チョンチョンと消毒しておく。ほう、コイツ、何をされてもおとなしくしているイイ猫だ。
しかし、家の中を自由に歩き回らせるわけにはいかない。感染症に罹患している可能性があるからだ。なにしろ我が家にはフェレットのチャオがいる。感染症の有無が確認できるまでは、直接・間接を問わず接触させてはマズイ。同じ部屋に置くことも避けておくべきだ。仔猫に触ったら殺菌石鹸で良く手を洗っている。仔猫をどうしたモノかと思案していたら、'07年夏に天に帰ったロンの自動車用折り畳みケージがあったのを思い出した。収納庫からケージを引っ張り出し、フェルトのパンチを切り出してケージの床面に張り、さらにペットシートを敷いて保護ケージの完成。フタの破れたタッパーに、アビの使い残した猫用ウッドリターを入れてトイレもOK。エサ入れと水入れも使い古しのタッパーで間に合わせた。
さて……、いくら猫が好き、動物が好きと言っても、無条件で飼うわけにはいかない。とりあえず動物病院で健康診断を受けさせ、先天性疾患の有無や血液検査で感染症に罹患していないかを確認してからでないと、我が家の一員にするわけにはいかない。先住ペットのチャオがいるし、まだこの年の春、天に帰った愛猫アビへの想いを引きずっていて、新たな猫を迎え入れる気持ちにはなりきれないのが正直なところだった。それでも、健康なら予防接種を済ませてから里親を捜し、感染症に罹っていても治る病気なら治療を済ませてから里親を捜し、治らない病気だったり、里親が見つからなければ我が家で引き取るつもりだった。
一夜明けて朝7時。ちゃんとトイレを使って排便していた。しかし臭気がひどい上に、便の中に猫回虫がいる! まぁ野良猫なので寄生虫くらいはいるだろうが、その後で少しエサを食べたと思ったら嘔吐。吐瀉物の中にも猫回虫がウヨウヨ。これはマズイ。幼猫が大量に寄生されると命に関わる。吐瀉物の臭気もひどい。下痢はしていないが、この症状……。猫回虫だけによるものならまだしも、ウィルスに感染しているかもしれない。昨夜保護した時点から感染症の危険性を予測していたので、ブチ猫はケージで完全隔離しておいたのは正解だった。便と吐瀉物を割り箸でジッパーバッグに収め、病院に持参することにする。
実はこの日、フェレットのチャオもレントゲンとエコーの検査の予約をしてあった。前週の7月4日に受診した健康診断の血液検査で、肝機能の数値に若干の異常が見られたからだ。ブチ猫はアビの遺品のキャリーに入れて車のカーゴスペース。チャオはフェレット用キャリーに入れて助手席。フェレットはパルボウィルスには感染しないが、亜種のアリューシャンウィルスにはやられる。念には念を入れて、絶対に接触しないように注意を払っておいた。
動物病院に着き、ブチ猫のカルテを作ってもらうため、暫定名として「ブッチ」と名付けた。ブッチの便と吐瀉物を入れたジッパーバッグを受付で渡しておく。診察室に呼ばれ、チャオは検査のため半日入院。ブッチの診察開始。生後2ヶ月ほどだが、体重が500gしかない。体温は平熱だが、脱水症状も見られる。呼吸音は問題ないが、心音にやや雑音が混じっているらしい。寄生虫はやはり猫回虫。右目には充血も見られる。うん? 昨夜はそんな充血はなかったはず……。診察台の上でウンチをしてしまったが、何を食べていたのか真っ黄色な固形便。獣医師の先生も「何だろう、コレは?」と首を傾げてしまう不思議なウンチ。結局、ブッチも血液検査と衰弱状態の治療のため半日入院となり、午後4時半の夕方診療開始時刻にお迎えに行くことに。
家内と行きつけのウドン屋で昼食を済ませ、帰宅すると動物病院から留守番電話が入っていた。嫌な予感が走る。急いでコールバックしてみると、血液検査の結果、白血球が「6」でほとんど無い状態(猫の正常値は55~195)。便からはパルボウィルスが検出された……。治療薬インターフェロンの点滴中に急変し、意識が薄れているらしい。時間外だが「今すぐ行きます。よろしいでしょうか?」と問うと、OKをいただけた。この時点で覚悟を決めた。大量の猫回虫寄生、それに加えてパルボウィルス感染。これはもう、絶対に助からないだろう。家内と涙目で動物病院へ。受付に行くと動物看護士のKさんに、「今さっき、ブッチくん……、亡くなりました。今、先生が処置をしていますのでお待ちください」と告げられた。やはりダメだった。診療時間外なので待合室には誰もいない。昨夜、自分に甘えて見せたのは、わずか2ヶ月の生涯最後の安らぎを求めていたのだ。残された命火を精一杯燃やした甘えだったのだ。あまりにも切なく、あまりにも憐れな野良仔猫ブッチの運命。家内と二人で大泣きに泣いてしまった。
先生から説明を受ける。治療中に突然の嘔吐と激しい下痢を起こして意識を失い、14:30、そのまま天に帰ってしまったそうだ。感染源はおそらく母胎感染。そして猫回虫症とパルボウィルス感染症が合わさって劇症化したのが原因。苦しみは一瞬だっただろう。助けてやりたかったが、これも運命。できることは全てしてやった。野良猫の過酷な運命はシャーでも見ていたが、ブッチとはわずかに14時間の付き合いだった。先生は野良猫を保護したと知っているので、「ブッチ君のご遺体はどうしますか?」と尋ねてくれた。引き取って我が家の一員として弔ってやりたい。ブッチよ、時間の長短じゃないよ。オマエは我が家の一員だ。だからシャーもロンもアビも送ってもらった八事霊園に連れて行ってやるからな。
続いて事後処置として、ブッチの使ったケージ、トイレ、食器、パッドなどは全て廃棄処分し、室内でブッチの触れた箇所は消毒薬を散布するように指示された。渡された消毒薬は「ビルコンS」(輸入元バイエル社)で、500ccの水に溶かして使用するオレンジ色の粉末5g。水に溶かすと綺麗なピンクに変わる。これがパルボウィルスはもちろん、ジステンパーから鳥インフルエンザ、SARSや炭疽菌まで、感染症を引き起こすほとんどのウィルスや細菌に効く。環境負荷もなく、人間やペットにはほぼ無害って優れた消毒薬だ。
ブッチが白布に覆われ、小さな小さな箱に入れられて帰ってきた。穏やかで静かな寝顔。しかし、たった数時間で病み疲れて毛艶はすっかり失せ、昨日撮った写真とは別の猫のようになっていた。そっか、そんなに疲れたか。幼い身体でよく頑張ったな。偉かったぞ、ブッチ。さぁ、シャー、ロン、アビの待つ八事霊園に行こう。目が覚めたらきっと、オマエの先輩達が待っているよ。先生に深くお礼を述べ、検査と治療費の9千円を支払って八事霊園へ直行。曇っていた空が青く、明るくなっていた。
八事霊園でブッチの弔いを済ませ、16:45、動物病院にトンボ返り。チャオのお迎えだ。検査結果が気に掛かる。今、ブッチを送ってきたばかりなので、家内も自分も目が真っ赤。待つこと30分。チャオが帰ってきた。キャリーの中でバタバタ大暴れ。よほどイヤだったのだろう。さらに待つこと30分。診察室に呼ばれた。まずはレントゲンの所見。肝臓、腎臓、脾臓共に異常なし。続いてエコーの結果も異常なし。肝硬変、肝臓腫瘍、肝炎による変形や異常な所見なし。ただ、ALT数値が352(フェレットの正常値82~289)と高いので、肝臓の薬を3週間投与することに。とりあえずは命に関わる悪性の疾患所見が出なかったことに安心した。あぁ、よかった。もしかしたらブッチがチャオの病気を持っていってくれたのかもしれない。ブッチめ、チビ助のくせに義理堅いヤツだった。ありがとうな、ブッチ。
チャオは今日も部屋中を駆け回り、物陰に隠れ、イタズラをしまくっている。そして自分と家内も健康な日々を過ごしている。幼くして天に帰っていったブッチを思えば、自分はなんて幸せなのだろう。
梅雨空の厚い雲に覆われた天を見上げ、しんみりとした気分になりましたよ、ってお話でした。
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